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黒の冥王  作者: 紅梅
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守りたいと願う

「グレース殿、こちらは終わったよ」

「あぁ。オレも、コイツを片付けて終わりだ」

 ヴァルトの言葉にオレは、躊躇いもなく目の前にいるやつを斬り殺す。そうじゃなければ、姫さんが危険なだけだからな。

 絶対に姫さんを、危険になんてさせたくねぇー。そのためなら、オレは何だってやる。それが、人殺しだろうがなんだろうが関係無いな。

 それに、レーゲン達が姫さんの配下に下ってから姫さんを狙う奴らが確実に増えた。昼夜問わず、姫さんに仕掛けてくるようになった。

 姫さんは、日を追う事に闇を扱う力が強くなってきてる。オレのように、闇を使っての情報収集もできるようになってるんだ。

 だから、姫さんはこのことに絶対気づいてる。

 だけど、何も言わずオレらに任せてくれてる。それって、オレらの事を信頼してるって事だろ?

 このことが素直に嬉しい。

 可愛いく思うと同時に、愛しくも思う。


 正直オレは、姫さんが来るまで伝説の花嫁がアンバーチェ家の奴と必ず波長が合うって事が信じられなかった。

 ただの偶然だと思ってた。

 伝説の花嫁が召還された時代に、生きてて仲良くなったっていう婆さん方が「同性じゃなかったら、結婚してたのに!! 我が子孫で、召還されし者と異性である場合は結婚しとけよ、馬鹿やろー!」って悔しそうな言葉を残したってのを聞いても、どこか馬鹿にしたような感じだった。

 あー、でもな。

 いるんだわ、これが。同性同士で結婚したっていうの。

 なんか、四代目は両方大丈夫っていう人間だったらしくて婆さんも別に同性同士っていうのは気にしなかったらしい。それで、三人仲良く暮らしたらしいぜ。

 けどな?

 やっぱり、同性同士っていうのは問題があったらしい。公表されてねぇーし。公では、一般庶民とだけ結婚したって事になってるな。

 一応事実は、四代目は婆さんと一般庶民と結婚したってことになる。



 話逸れたな。

 姫さんを、召還するにあたって今のところアンバーチェ家には男のオレしかいないから念のためってことで幽閉された。

 でも、オレは闇属性だからどこでも移動できるし、影を使えば情報収集だって簡単だ。

 いつ自分の属性を知ったか。そして、なぜ闇が嫌われてるのかってことは、まだ姫さんも知らないから秘密な。

 まぁ、言えることはただ一つ。


 人間って馬鹿だな!!


 って事くらいだ。


 おっと、いけねーな。また、逸れちまった。

 盗み聞きと盗み見は、オレの趣味じゃないが姫さんが召還されたのを影から得た情報で知って覗きに行ったんだ。

 いやー、やられちまったよ。

 婆さん方、ごめんな?

 信じなかったことと馬鹿にしたような感じのことは、真面目に謝るぜ。なんなら、土下座でもして良いくらいだな。

 それぐらい、オレにとって衝撃的だった。

 この子こそが、オレの姫だって直感的に思った。そして、自分がアンバーチェ家の人間なんだって初めて実感した。

 何よりも、その存在にオレは心惹かれた。手に取るように、考えてることが分かった。何に、悩んでいるのかも分かった。

 きっと、闇のことで悩んでるんだろうな。女神ユリエルも、

「きっと、あの子はすっごく悩むと思うわ。なにせ、元々世界にはないことだもの。しかも、アオイ自身が闇そのもの。

 だから、アオイは闇に呼ばれてる。でも、今のアオイには恐怖以外のなにものでもない。だから、闇を持つ者よ。あの子を助けてあげて」

 って言ってたからな。

 だから、早く会いたいって思った。勝手に、夢に侵入して連れてきた。

 色々と悩んでる姿は、正直可愛かったな。

 でも、さすがに姫さんの「信じてない」発言には驚いたな。殿下達は、姫さんに一目惚れしたみたいでそれが態度にはっきりと出てるのに気づいてないみたいだからな。

 アレには、涙が出たよ。もちろん、同情心でだよ。

 まぁ、ざまーみやがれ!! って思ったけどな!!

 姫さんは本当に、無自覚で鈍感で困るわ。

 だから、殿下達を信じてないのも納得できる。

 オレの場合は、一発で姫さんの信用を得たけど。



 でも、オレの前に姫さんの信用を得た人間がいるなんてなんか屈辱的だった。

 その相手は、女だった。一安心したオレだったけど、あることを思い出した。

 四代目のことだ。だから、姫さんにそれとなく「姫さんって、両方大丈夫な人間か?」って聞いてみたんだ。

「んー。基本的には異性だけだけど、がんばれば同性もいけるかなぁ」って言ってたから、「がんばらなくて良い」って言っておいたよ。

 それにしても、コニーデは邪魔だ。姫さんにとって、必要な人間でもオレにとっては邪魔な存在だ。オレと姫さんの二人だけの時間が、ほとんどない。

 もっと、姫さんと二人だけでいたいのにいちいち邪魔してくるんだ。まぁ、向こうもオレと同じようなことを思ってるだろうけどな。

 コニーデだけでも、十分邪魔だってのに姫さんは三人も拾って来やがって。しかも、姫さんにべったりと来ると腹が立つ。

 特に、シュネ! あいつは、同性なのを良い事にべたべたと姫さんに触りやがってよぉ!! しかも、「どうよ? 羨ましいでしょ??」とでも言うかのような目でオレらを見るんだ。

 本当に、腹が立つ。はいはい、とても羨ましいよ。異性であるオレでは、姫さんにベタベタ触るのはよろしくないことくらい分かってるっての。



 けどな?

 異性だからできることだってある。異性だからこそ、やっても問題視されないことだってあるんだ。

 姫さんが、オレに身も心も許してくれたら絶対にオレ無しじゃ生きてけないようにしてやる!! って決めた。オレは、それだけの実力はある。



 おっと、回想に浸ってたらどうやら口元がだらしなく緩んでたらしい。ヴァルト達が、怪しい者を見る目つきでオレを見てくる。おいおい、ひでーな。

 こいつらは、大丈夫だな。全くとは言えないが、問題はないと思う。

 姫さんに絶対の忠誠を誓い、自分の人生も差し出した。つまり、完全に姫さんの配下に下るということ。

 だったら、姫さんを女として愛するという危険はねぇ。姫さんの事を愛するだろうけどそれは親愛から来るものであって、オレらのような愛情から来るものではない。

 それに、こいつらは役に立つ。諜報活動に長けていて、姫さんを暗殺をしようとしてる人間の素性を調べてきてくれる。その、情報をオレは団長に一応報告する。こっちで、勝手に報復することもあるが基本的には報告している。オレらよりも団長や殿下方の方が、そいつらを罰することのできる可能性は高いからな。


 オレが、この皇宮周辺に展開してある闇の結界のような物に反応があった。

「また、おいでなさったぜ。次は、五人。オレが、二人もらうぞ」

「了解です。こっちは、残りをもらいますよ」

 あいつらと別れて、姫さんの部屋の前まで行くと二人が堂々と侵入しようとしてるやがる。

 オレは、闇を使い二人を拘束する。


「なっ!!」

「どうなっている!?」

 ハハハ、慌ててやがる。


「どうもこうも、オレの力でお前らを拘束しているだけだ。分かってるよな? この部屋の主に手を出そうとしたんだ。生きては、帰すわけにはいけねーな」

 気配を殺して、近づいていたオレに二人はビビっている。よく、それで暗殺の仕事ができるよな。ばかみてーだろ。

 オレは、音もなく剣を抜き無感情に切り裂いた。錆びた鉄の匂いが、辺り一面にするが魔法で綺麗に消した。

 扉の向こう側で、姫さんは寝ている。もしかしたら今での、姫さんを起こしたかもしれないが中には入らない。どうせ、姫さんも起きても外には出てこないからな。

 コニーデやシュネの代わりに、オレが姫さんの隣で寝たい。だけど、オレの場合は理性が吹き飛ぶかもしれないから無理だ。

 それほどまでに、オレは姫さんを望んでいるんだ。





 最初は、オレ以外の人間でこの子を守る者が現れるまで守ってあげたいって思っていただけだったのに。

 今となっては、とても愛しい。オレの傍にずっといて、オレがずっと守りたいって気持ちが大きくなっている。

 この気持ちを持ったことに、オレは絶対に後悔しないな。

 それだけ、もう姫さんに溺れてるって事。




 愛してるよ、姫さん。 

 今、オレの目の前から姫さんが消えれば簡単にオレは狂える。姫さんと、関わることのできない人生なんてオレはいらない。

 きっと、ここまでオレの気持ちを揺れ動かすのは姫さん、ただ一人だな。

はい、グレース視点でした。

アオイがコニーデ達を寝台に連れ込んでいる間に、彼らはなにやってるのか?

っていう裏話的な感じかな!?

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