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黒の冥王  作者: 紅梅
31/49

居場所

分割したのに、長くなってしまいました(汗)

ごめんなさい<m(__)m>

「いいですか? 女の子の顔に傷を付けることは、どんな理由があったとしてもダメなことです。今の時代、中身も大事だろうけれど第一印象は顔で決まるんですよ!!

 それなのに、女の子の顔に傷を作ってどうするんですか!! もしも、跡が残ったら皆さんは責任を取ってくれるんですか!? 取ってくれないでしょう? 顔に傷が残ったままだと、お嫁にも行けないじゃないですか!!」

 ニコニコ笑って言うアオイだが、目は全く笑っていなかった。少し後ろで何があっても大丈夫なように警戒をしているグレースでさえも、ぶるっと身震いをしてしまうほどだった。

 しかし、アオイは完全に忘れている。なぜ、自分がこの世界に来たのかを。花嫁として召還されたのだから、嫁に行けないことは絶対にない。

「いや、あのな?姫さん。一回、落ち着けって、な?」

「これが落ち着いてられるか-!! 人生で三番目に大切な物を傷つけられたんだから!! もちろん、一番は命でしょ。二番目が、金ね。三番目が、顔!! あんまり可愛くない、私の顔がさらに不細工になったらどうするの。そんなの嫌だからね。だから、グレースは黙ってて」

「そ、そうか。わわ、悪かったな」

 やや引きつったような顔で、グレースは謝った。アオイの怒りが凄まじくて「姫さんは、十分可愛いよ。それにオレが、嫁にもらうから安心しろ」と言う予定が言えなかった。



「だいたい、私が憎いとかなんとか言ってましたけど私何かしましたか? 私自身には、身に覚えがないんですが。だいたいにおいて、この世界に来てからまだ一,二回しか皇宮外にでてないんですよ? それなのに、憎いっておかしいですよね? そこら辺もおしえていただきましょうか?

 ほら、とっとと言えよ。テメェらの口は、飾りもんか? え? 違うだろ? だったら、早く言えよ。それともあれか?

 痛めつけられるのが好きとかいう趣味でもあんのか? だったら、腕の一本や二本、足の一本や二本切り落としてやろうか?

 それとこれ以上、私を怒らせると何するか分からないよ?」

 途中で少し口調が変わったことから、アオイがどれほど本気なのかが伺える。

 やられたら、やり返す。しかも、倍以上で。これが、アオイの信念だ。

 まさに、「目には目を歯には歯を」という某法典に載っている言葉がぴったり当てはまるとアオイは思っているが、地球にいる友人達が聞けば「いやいや。倍以上の仕返しをしてる時点で全然違うでしょ!?」と鋭い突っ込みを入れながら、「なんかずれてるアオイも、可愛いわー」とアオイの頭を優しく撫でるだろうが、残念ながらここは地球ではない世界なのだから突っ込む人は誰もいない。


「お嬢さんが持つ、漆黒が憎い。闇が憎い。だから、貴方が憎い。我々を育てたところの理念は、この世からの闇を持つ者の排除。

 だったら、闇を持つお嬢さんを殺さなければならないでしょう?

 闇自身を排除できないのならば、闇を持つ者を排除しなければならない。そのため我々は、光のためにも闇を憎むべきものとして教えられてきましたから」

 話を聞きながら、自分の頬がぴくぴくと痙攣していくのがアオイには分かった。

「馬鹿じゃないないんですか? なーにが、“光のため”ですか。良いですか?

 光と闇は真逆の存在ですけど、光は闇がないと存在できませんし、闇も光がないと存在できないんです。どちらも欠けてはいけない。光と闇は二つで一つ。表と裏の関係。

 だいたい、闇がなかったら影がないって事なんですよ? どんなに暑くても、木の下とかにできる木陰がないから休憩もできません。夜だって来ないから、暑い太陽がある中で寝なくちゃいいけないんです。そんなの苦痛以外になんて表したらいいか分かりませんよ。

 それに影がないと、雨も降らない。曇り空もない。天気は、ずーっと晴れのまま。そんな世界で、ありとあらゆる生命体は生きていくことはできないんですよ。

 そんな色々と根本的に、間違っていることを教えるような人達のところにいちゃダメでしょ。こんな簡単なことさえ、分からない人はただの馬鹿です。阿呆です。役に立ちません。即座に、見捨てるべきです」

 先ほどまでの怒りは、どこに行ったのやら。アオイは、呆れたような目で集団を見る。


「しかし、我々は闇を憎む以外の生き方を知らない。ならば、闇を憎んで生きていくしかないでしょう?」

「まったく。本当に、馬鹿な人達ですね!! どうして知らないなら、これから知っていこうっていう考え方にはならないんですか。結局、逃げてるだけなんじゃないんですか? 知らない方が楽だから。闇を憎んで生きていくのが、自分達にとって楽な道だから」

 最後の言葉に、集団の体がピクっと反応したのが分かった。だから、アオイには分かった。彼らが、そのことをよく分かっているということを。

「そうだとしても、我々にはそれ以外にないんですよ。そこ以外に、生きていく場所もない。そこ以外に、我々の居場所はないんです。だから、選択肢は一つ以外にない」

(だったら――――――――――)




「私が、あげるよ」

「え?」

「姫さん?」

 戸惑ったような声を発した、集団とグレース。それを気にせず、アオイは続ける。

「だから、私が選択肢をあげる。もう一つの選択肢は、私と共にいること。っていうか生きることかな。あなた方の別の選択肢ができるまで」

 そう言うと、アオイは拘束を解いた。集団は、立ち上がりアオイをまっすぐに見つめる。

「お嬢さんこそ、お馬鹿じゃなんじゃないですか? 頭大丈夫ですか? 我々は、お嬢さんを殺そうとしたんですよ? 

 それなのに、お嬢さんと共に生きるって。我々に、殺されるとは考えないんですか??」

「分かってるよ。でも、私はあんまり優しくないから、機会は今回のただ一度きり」

 そう。これは、ただのアオイの気まぐれに過ぎない。アオイの気まぐれに、二度目はないのだ。

「次に、殺されそうになったら私は情け容赦なくあなた方を殺す。でも、死にたいからといってわざと私を殺そうとするのはなしだから。あと、勝手に死のうとするのもダメだよ。勝手に死なれたら、あなた方を拾った意味がない。

 それで、どう? 私と生きてみない? 闇が憎い気持ちが消えなくても良いよ。ただ、私が居場所になってあげるから。見つけよう? あなた方が求める生き場所を。心の拠り所を。

 だからさ、見つかるまであなた方の人生を私にちょうだい?」

 柔らかくアオイは微笑み、すごい口説き文句を言葉にした。

 その言葉を聞いた途端、白の集団達は心の中にある闇への憎しみが馬鹿らしくなった。

 ただ、あぁ、この方なら自分達が求める行き場所、心の拠り所になってくれると確信した。

 アオイになら自分達の人生を、本気であげても良いと思えたから。“私が居場所になってあげる”と言ってくれたのは、今まで生きてきた中でアオイだけだったから。

 その言葉が胸に響き、とても嬉しかったから。

 もう、あんなところに我慢を重ねながら、苦しい思いをしながらもいなくても良いんだと喜べたから。

 だから、跪いて頭を下げた。それは、一人だけじゃなかった。白の集団の全員が、アオイに跪き頭を下げたのだ。


「我々の負けですよ。我々の人生を、お嬢さんにさしあげましょう。お嬢さんとなら、見つけられる気がします。どうぞ、よろしくお願いしますね。我が君」


 そう言うと、集団はフードを取った。

(これは、また全員がカラフルな色だなー。白に緑に青にか。あれ? 女の人も一人いた。かわいいなー。ってか、男の人達は、イケメンだよ。あ、忘れてた)


「ねぇ、グレース? 勝手に色々やっちゃったけど、大丈夫かな!? グレース自身は、私のやったことに納得いかないとかある??」

「大丈夫だろ。殿下達は、姫さんに甘いからな。オレ自身は、別に良いよ。自分が、やりたいことをやれ。もし、やっちゃいけないことをやろうとした場合は止めてやるから安心しろ。それにもしも、こいつらが姫さんをまた殺そうとしたら、姫さんじゃなくオレが殺す」

「それなら、良いわ」

 アオイは、アンジェ達が自分に甘いと言うことについて否定をしなかった。


「そうだ。名前は?」

「ありません。ですから、我が君がつけてください」

「えー!? 分かった。うーん。えーっと」

 しばらく悩んでいたアオイだが、何かを思いついたように手をポンと叩いた。


「白の髪の貴方が、シュネ。緑の髪の貴方が、ヴァルト。青の髪の貴方が、レーゲン。で、どう? 一応意味は、雪と森と雨ね。ダメなら、ポンタン一世とかレースカス五世とかバッフラン九世とかどう?」

「いや。最後の方の、ポンタン一世とかはダメだろ!!」

「そう?」

 アオイは結構良いと思っているが、グレースにしたら奇抜的な名前だ。

「で? どう??」

「ありがたく、ちょうだいいたします。素敵な名前をありがとうございます」

 恍惚こうこつしたような表情で、三人はアオイを見ている。

「それはよかった」

 青の髪の男は、

「これより私は、レーゲンと名乗ります。年は、二十五歳です」

 と言った。

 白の髪の女は、

「あたしは、シュネと名乗ります。年は、二十三歳です」

 と言った。

 緑の髪の男は

「オレは、ヴァルトと名乗ります。年は、二十七歳です」

 と言った。

「「「これから、末永くよろしくお願いします。我が君」」」


「こちらこそよろしくね。私は、アオイ・ヒノ。一八歳だよ。で、隣にいるのがグレース・アンバーチェ。二十歳で、私の護衛」

「よろしく頼む」

 ほどなくして、和やかな雰囲気になったところで、

「アオイ!!」

 と切羽詰まった声と共に、コニーデとセシル、ヒューズがすごい勢いで走ってきた。

「どーしたの? って、ヒューとセル?? 帰ってきたのって、コニだけじゃなかったんだ」

 なぜ、コニーデがヒューズ達のところに行ったのかをアオイは忘れている。

「アオイ、怪我は??」

「敵は??」

「へ? ないけど。敵? いないけど?? あ、そうだ。紹介するね。えーっとなんて言えば良いんだろう」

「私達がしますよ。初めまして。我が君の配下に下った、レーゲンと申します。そして、こちらはシュネ。あちらは、ヴァルトです。これから、私達は我が君のお傍にいますので。一応、よろしくお願いします」

「どういうことだ? グレース、説明しろ」

 ヒューズとセシルは、理解できなくなりグレースに説明を求めた。


「元は、レーゲン達は姫さんを狙ってたんですけど、姫さんがキレた後に口説き落として配下に下ったというわけです。ですから、心配は何もいりません。こいつら、本気で姫さんに人生を捧げるつもりらしいですし。まぁ、そんなこと言ったらオレの人生も姫さんのものですけど。

 あと、姫さんを怒らせちゃいけません。本当に、怖いですから」

 とグレースは説明をした。ただし、最後の言葉は余計が。



「アオイ!! 何、危険なことをやってるんだ。アオイが、襲撃されたと聞いて生きた心地がしなかったんだぞ」

「そうだよ。今回は無事だったけど、次はこんな偶然起こらないと思うから気をつけてね?」

 結局、ヒューズ達はアオイに甘いのでレーゲン達のことを何も言わない。ただ、注意を促すだけだった。

「分かったよ」

 アオイは、きちんと頷いた。

(ちゃんと、分かってるし。今回が、特別だって事。でも、この世に偶然はなくて必然しかない。だからきっと私が、レーゲンやシュネ、ヴァルトと出会ったのも必然なんだよね。

 ・・・・・・ん? ッてことは、私がアンジェ達と出会ったのも必然??)



「それと、夕食の時他の奴らが絶対に心配してくることを忘れるな」

「うん。このこと、報告が行ってるからね。きっと忙しくて抜け出せないから、夕食の時にどっと来るよ」

「はーい」

 がっくりとしながら、アオイは頷いたのだった。

「あ!! 頬に怪我してる。治してあげるね」

 セシルは、そう言いながらアオイの頬に手をかざし怪我を治した。

「どうやって治したの?」

「んー? ただ、手をかざして意識を集中させて『治れ-!!』って念じただけだよ。傷が軽いと、大概は魔力をそんなに消費しないで使えるよ。傷が大きければ大きいほど、消費する魔力は膨大になってくんだ。あ、首が取れたりとか、確実に死んでる場合は使えないよ」

「へー」

 感心して、アオイは頷いた。そして、顔にできた傷が治ってルンルン気分だったのであった。



 本当に、その日の夜は大変だった。アンジェ達が、アオイにぺたぺた触って怪我がないかを確認して安心したかと思うと、

「もう、危ないことをするんじゃないぞ!!」

 と説教までされた。一応、シュネ達を紹介したらすごく驚いていたのであった。

 危うく、アオイはその表情に吹き出すところだったとか。




アオイちゃんは、配下を三人ゲットしました。

キレたアオイちゃんには、注意が必要です。

こわいですからw


6/26に加筆修正をしました。

最後の部分を書き足したのと本当にちょっとした書き足し程度です。

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