襲撃
長いくなったので、分割しました。
ある天気の良い日。
アオイはコニーデに、薦められて皇宮内にある中庭で色とりどりの花を眺めながらグレースらとともにお茶をしていた。
「今日は、いい天気だし花だって綺麗だし。なんか、もったいないね。わたし達しかいないって。クリスとか、呼べば良かったかな?」
「それはダメね。あの方達がいると、わたしがアオイと話す機会があまりないもの。今だって、余分なのがいるしね」
「へぇ。余分なのってそれは、自分の事じゃないのか? 少なくても、オレのことではないと思うけどな」
「余分なのは、貴方様ですよ? グレース様!! 私が、自分の事を邪魔だと言うはずがないじゃないですか。私は、自分の事をアオイに必要な人間だと思ってますから」
また始まってしまった、コニーデとグレースの言い争い。何で、毎回起こるのかがアオイには不思議だった。しかも毎回争いの原因が、自分自身というところにアオイはげっそりしてきた。
しかし、止めても無駄なので止めないが。
「コニーデよりも、オレの方がアオイには必要な人間だな。絶対に、オレの方がアオイの役に立つし」
「それはないと思いますよ? グレース様に、アオイの身の周りの世話ができまして? 私のような、侍女がする仕事ができるんですか!?」
「じゃあ、こちらも聞くがコニーデにアオイを守れる自信があるのか?」
「あー、はいはいはい。止めだよ、止め!! 」
何か、怪しい空気が流れてきたのでアオイは止めることにした。
(まったく。できることなら、止めたくないのに。止めた後、怖いもん。「アオイは黙ってろ」って言われるし。でも、さすがにこれは止めなきゃダメだよね)
「安心して。二人とも、私にとって必要な人間だから。人には、適材適所ってものがあるの。コニーデには、コニーデにしかできないことがある。グレースには、グレースにしかできないことがあるの。だから、二人とも私に必要な人間だよ」
アオイの口説き文句ともいえる台詞に、二人は顔を綻ばせた。
「嬉しいこと、言ってくれるじゃねぇーか。さすが、姫さん。ってことで、コニーデ。ちょっと、お使いに行ってこい。団長達に知らせてこい。」
「はぁ? 意味分からないわ。ヒューズ様達に、何を伝えてこいと?」
「もうすぐ、敵に囲まれる。だから、早く行ってくれ!! 姫さんを連れて、逃げたいところだがどうせ追いかけてくるだろうからここで始末する」
「わかったわ!!!」
コニーデが、騎士団・魔法師団の詰め所に向かって走り出したのと同時に、フードを深く被った白ずくめの人間、三人にに囲まれグレースは剣を抜きアオイを庇うように前へ一歩進む。
「ねぇ、ちょっと。普通はさ、こういう場合に出てくる人達が着てる服の色って黒でしょ!? 相場で、黒って決まってるじゃん!! なのになんで、白なの??」
ちょいちょいとアオイが、グレースの服の袖を引っ張る。
「わぉ。さすがだな、暇さんは。緊張感がまったくねぇーな。まぁ、白なのにはそれなりに理由があるんだろ」
「えー!? やっぱり、黒でしょ-」
「話はそこまでにしてもらおうか。」
白い集団の一人が、声を発した。
「我々が用事があるのは、キミの後ろにいるお嬢さんだ。さぁ、我々に渡してもらえるかな??」
「断る。姫さんは、オレの唯一無二の主だ。どうしても姫さんを渡せて言うのなら、まずはオレを殺してからじゃないとな」
グレースの言葉を聞き、声を発した者はやれやれと首を振った。
「お嬢さんをもらえれば、貴方は死ななくても済むというのに」
「それでも、だ。姫さんを絶対に、オレの命を懸けて守る。そう決めてるんだよ。それにオレは、そう簡単には死なないぜ?」
「そうですか。少々の手荒なことは、致し方ありませんね。我々が、憎いのは闇のお嬢さんただ一人だけだというのに」
(・・・・・・え?私が憎い? 何で!?)
アオイには、自分があの集団に対して何かをしたという記憶は一切無い。
だったらなぜ?
と、グルグル考えていたから反応が遅れた。何か、鎌鼬のような鋭い風がアオイに向かって放たれたのだ。
間一髪で、グレースがアオイの腰を抱いて避けてくれた。しかし、左の頬に違和感がある。そっと、触ってみるとぬるっとした感覚があった。手を見ると、赤く染まっていた。
(つまり、顔にかすったって事? ・・・・・・よくも。よくも女の子の大切な顔に傷を付けてくれたわね!!)
グレースには、何かがプツっとキレる音が聞こえた。音がした方を、そーっと伺いすぐに視線をずらした。
あまりにも恐ろしかったのだ。アオイの形相が。例えるのなら、鬼、悪魔、般若などなど。幼い子供が、アオイを見たら一発で泣き出すこと間違いない顔だ。
「アハハハハ、ハハハハ。よくも、女の子である私の顔に傷つけてくれたじゃない!! 傷つけたからにはそれなりの、覚悟できてるんでしょうね??」
アオイが問題としているのは、自分を殺そうとしたことではなく、自分の顔に傷を付けられたということだけであった。キレたアオイは、無意識に闇の力を操り白の集団を正座させ動くことも立ち上がることでさえも不可能にした。
キレたアオイちゃん。
笑い出しちゃって、なんともまぁ、怖いですよー。