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黒の冥王  作者: 紅梅
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歓喜に震える

 その日の夜。

 アオイは、やはりいつもと同じ夢を見た。黒一色の世界に、アオイは一人で立っていた。


『我らの姫君。はやく、はやくおいで』


 いつもは、声にならない悲鳴をあげながら飛び起きるが今日は違かった。


「ねぇ? どこに、行けばいいの?? どうやって行けばいいの?」


 グレースの言葉通り、受け入れてみようとしているのだ。

『あぁ、姫君。そのまま、まっすぐ歩いてきてください』

 声の言うとおりにアオイは、まっすぐ歩き始めた。

(黒以外何もないから、平衡感覚がおかしくなるかと思ったらそうでもないんだ。普通に、歩けるわ)

 どんどんまっすぐに歩いて行くと、光に包まれうずくまっている長い黒い髪の子がいた。直感的に、アオイはその子が自分を呼んだのだと理解をする。

 その子に、



「貴方だよね? 私を、ずっと呼んでいたのは」



 と尋ねると、その子は顔を上げた。顔から判断すると、アオイには多分男の子に見えた。悲しみに満ちたような表情をしていたその子が、アオイの顔を見た瞬間その表情は一変させ喜びに満ちた表情になった。


『姫君! あぁ、我らの愛しの君。ずっと、お待ち申し上げておりました。貴方様が我らの前から姿を消し後から、我らは我らの価値を見いだせなかった。

 しかし、貴方様が姿を現した今、我らは我らの価値を見つけられた。なぜなら、我らは貴方様の手となり、足となり、耳となり、目となる存在だから』

 とても興奮したように、その子はアオイに言う。

(この子の言い方からして、私はここに来たことがあるの?てか、この子と面識があるってこと?

 いやいやいや。そんなはずは、ないと思うんだけどなぁ)

 アオイは、頭の片隅で引っかかりを覚えたが、それが何なのかを掴む前に消えてしまった。

「えっと、もしかして貴方が闇?」

 首をかしげながら聞くが、その子は首を横に振った。


『その答えに、肯定もできるし否定もできます。我らは、個であり全である。全であり個であるから。今、姫君が見ておられるこの体とて闇が集まってできたもの。

 ここは、闇の世界。そして我らは、闇そのもの』

「へ、へぇ。そうなんだ。それで? どうやって、私はあなたたちを受け入れればいいの?」

『我らが、姫君の中に入るんですよ。今のままでも、十分闇を扱えますが闇そのものの我らが入れば、姫君はさらに自由自在に闇を扱えます。

 ねぇ、我らの愛しの姫君?我らを受け入れていただけますか?』

「もちろん。そのために、来たんだから」

 アオイが頷いた瞬間、その子は満面の笑みを浮かべアオイにさらに近づき、アオイの中に消えた。


 その瞬間、アオイの胸が歓喜に震えた。無意識のうちに、

(闇が、自分の中に帰ってきた(・・・・・)

 と喜んだ。しかし、無意識下に思ったことなのでアオイはそんな自分の心情に気づかなかった。

 闇を受け入れた今となっては、なぜ自分が夢を見るたびに飛び起きていたのかが不思議に思えてしかたがない。




「――――――――――――ん。―――――めさん!!」




 誰かが、自分を呼ぶ声でアオイは目を覚ました。正直、まだあの闇の世界にいたかったとアオイは思っている。それほどまでに、今やあの闇の世界はアオイにとって居心地の良い場所となっていたのであった。


「起こして悪い。なぁ姫さん、闇を受け入れたのか??」


 アオイを起こしたのは、グレースだった。グレースが枕元に立っている。

「うん。受け入れたよ。なんで、分かったの??」

「オレの中の闇が、歓喜に震えたんだ。そんなことは、これまで一度もなかったから姫さんが闇を受け入れたんじゃないかと思って、悪いけど起こして確認したんだ」

「そうだったんだ。あのね、私の心も闇を受け入れた時、歓喜に震えたの」

「きっと、姫さんの中にある闇が『やっと受け入れてもらえた!!!』って喜んでるんだろ」

 アオイの頭を、優しく撫でながらそう言った。

「かもしれないね」

「あぁ。起こして悪かったな。寝ろ。まだ、二の刻を過ぎたくらいだ」

「おやすみ、グレース」

「おやすみな、姫さん」

 目を閉じると、すぐに眠りは訪れた。グレースは、アオイが完全に寝たのを確認して闇の回廊を使い消えた。




 別の場所では、

「闇そのものを持つ人間が現れたか。っち。探し出すぞ」

 そう言っている人物達がいた。


 そして、そのまた別の場所では、

「この胸の歓喜の震え・・・・・・。そうか。・・・・・とうとう現れた、我らが愛しの君。はやく探し出さなければ」

 そう言って、部下に指示を出した人物がいたのはまた別の話だ。









 誰もが寝ている時間。

 皇宮内のとある一室。

 ぶっちゃけてしまうと、この帝国の皇太子であるアンジェの私室である物事が行われていた。

 もちろん、話が漏れないように結界を張ってある。


「これから、第一回どうしようか会議を始めたいと思います。司会進行は、この帝国の宰相である俺がやらせてもらうぞ」

「議長は、僕ね」

 どうやら司会進行は、カインが。議長は、セシルという組み合わせで話し合いが行われるようだ。参加しているのは、アンジェ、クリス、ヒューズ、ラシュといったいつもの面々だ。

「議案は、伝説の花嫁であるアオイについてね。何か、意見のある人」

 セシルが、辺りを見回すと「はいっ!」と元気の良い声が聞こえた。

「はい、ヒューズくん」

「グレースが、邪魔だ!!!」



「そうだね。今日の夕食だって、グレースがべったりだったしね。あれは、つい殺したくなったよ」

「あぁ、たしかに。あれは、邪魔だ。いっそうのこと本当に殺すか?」

「いいねぇ。ボクは、優しいから苦しまないように、殺してあげようかな」


 

ヒューズの言葉に頷いていた面々は、クリスとアンジェの言葉に頬を引きつらせた。

「いや、それはダメだから!! アオイに、嫌わせるよ!?」

 慌てたように、セシルが言うと二人は「っち」と舌打ちをした。やはり、二人はアオイに嫌われることだけは避けたいようだ。

「でもさ、邪魔だよ。今日だって、アオイにべったりひっついててさ」

「まぁ、それはちょっと頭にきたけど! 殺すのはダメだって!!」

「そうそう。アオイが、悲しむぞ。アオイの悲しむ顔は見たくないからな」

「分かってるけど。ボクだって、アオイにべったりしてたいんだよ!!」

 クリス、お前の真意は、そこかぁぁぁぁぁ!!!!!と誰もが思った。叫ばなかっただけ、良しと思っていただきたい。

「あいつの方が、絶対アオイの中での信頼度は高そうだよね」

「そりゃまぁな。仕方ねぇーだろ。俺達が、グレースの幽閉を黙認してたんだからな。アオイの信頼度が落ちるのは目に見えてるよ。しかも、グレースはアンバーチェ家の人間だからアオイと合わないはずがない」

「そう。そこが問題だね。どうやって、彼女の信頼を取り戻せばいいのかな?」

 自分が惚れた人間がいた経験が少ない面々は、思いっきり頭を悩ませている。


「あー、ダメだ。何にも思いつかない」

「同じく。難しいね。好きな人にどうやったら信頼してもらえるかって考えると」

「だな。アオイって、警戒心強そうだし。まだ、俺らのことをろくに信用してなさそうだしな」

「分かる。なんとなく、線を引かれてる感じがする。まずそれを取り払うところからかな」

 意外にもアンジェ達は鋭かった。それは普段、腹の中を見せないような人間達と案件などを巡って熾烈な言い争いなどをしているからだろう。だから、アオイが自分達を信用していないことをすぐに理解した。しかし、それで諦めるわけがなかった。

 それくらいで、諦められる程度ならこの二,三日で諦めていたはずだから。

「うん。それは、各自でやっていけばいいかな。それじゃ、今日の第一回どうしようか会議を終了します」

 セシルの言葉で第一回目の会議はあっさりと終了した。




真夜中に、変な会議を開いていたアンジェ達でした。

一応、国のトップ近くにいる人達なんですが(汗)

アオイちゃんのことになると、どんどん過激になっていく人が約二名ほどw

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