ほどほどにね
ま、間に合った!!!
「コニさ、私に属性の話ってしてくれたじゃん?」
「したわね」
「それで、夜にグレースと会った時に教えてもらったんだ」
「へぇ。よかったじゃない。それで? なんだったの??」
「…………闇」
「え?」
コニーデは、アオイの言葉を聞いて固まった。
(言っちゃったけど、コニはまだ傍にいてくれるかな?? なんか、グレースが“属性を言ったら何されるか分からない”的なこと言ってたから結構不安なんだよね)
「そうだったんだ! すごっ!! 人生初だよ。闇属性の人見たの!!」
見事にコニーデの反応は、アオイのこの予想を良い意味で裏切ってくれた。
「私の属性が闇でも、傍にいてくれるの??」
「何言ってるの。わたしは、アオイと契約を結んだんだから。それに、アオイの属性がどんなのでも傍にいるんだから!!」
「ありがと~!! コニ、大好き~!!」
そう言って、アオイはコニーデに飛びついた。
「わたしも、アオイの事が大好きよ!!!」
熱い抱擁を終えたら、コニーデが鋭い目つきでアオイを見た。
(え? まさかのコニ、怒ってる!? なんで? 私、何かした!?)
内心パニックに陥ってるアオイに、
「さて、アオイ? 何で、わたしが契約解除うんぬんの話に行き着いたのか教えてくれるかしら?」
と思わず逃げ出したくなるような、声で問い詰める。
「ひぃっ!! グ、グ、グレース!! 助けて!!」
グレースの方へ、手を伸ばしながらアオイは助けを求めた。その様子に、苦笑しながらもグレースは自分に伸ばされた手を掴み、グイッと引っ張り腕の中に閉じ込めた。そうやって、助け出されるとは考えていなかったアオイは驚いたようだが、おとなしく腕の中にいた。
「悪いな。姫さんが、そんな話に辿り着いたのは多分オレの原因だろうな」
「まぁ、グレース様。それは、どういうことですか? それと、アオイに回している手を放してはいただけませんか?」
さも、グレースの存在に今気づいたというようにコニーデは言った。しかし、グレースはそれを気にした様子もない。
「まー、それはまだ言えないな。おいおいと、話せたら話すさ。無理な相談だな」
「そうですか。では、おいおいと伺いますわ。いいえ。即刻、放していただきます」
「無理だな」
永遠と続く様なやり取りを、グレースの腕の中で聞いていたアオイは二人に気づかれないようにため息をついた。
「はいはい。二人とも止まって止まって。コニは、落ち着いて。グレースは、放して。もう、大丈夫だから」
しぶしぶとといった感じで、二人は言い合いをやめた。グレースの、腕から解放されたアオイは、
「まずは、騎士団と魔法師団の詰め所に行かなきゃ。グレースが、復帰するってみんなに伝えないとね?」
「そうだな。行くか」
「うん。いってらっしゃい」
「は?」
「ん?」
なぜか、会話がかみ合ってなかったアオイとグレースはお互い首をかしげた。
「グレース、1人で行くんじゃないの?」
「姫さんも一緒に、言ってくれるんじゃねーの?」
「ううん。私、これからハンス先生の授業あるもん」
「なら、それが終わってからでいいぜ」
「ダメでしょ。早く行っておいた方が良いと思うけどな」
「そうですよ。アオイの傍には、私がいますから行ってくればいいじゃないですか」
「なんだと? それじゃぁ、もっと行けないな。姫さんの傍にいるのはオレだからな」
「あー!! もう。やめなさいって」
また、言い合いが始まりそうな勢いだったのを止めたのはやはりアオイだった。
「詰め所に行って、報告とかしてきてくれたら良いから。それで、さっさと帰ってきて? そしたら、何してても良いから」
「分かった。すぐ、帰ってくるから今言った言葉、忘れるなよ?」
そう言い残すと、部屋から飛び出していった。
「まったく。アオイには、私がいるっていうのに。なんなのかしら、あの男!」
コニーデの憤慨に、アオイは乾いた笑みを浮かべていただけだった。
そこから部屋を移動し、ハンスの授業と言う名の談笑をしていた。
「そうですか。アオイ様の国では、誰もが必ず学校に通っていたのですか。しかも、段階が小学校から大学まであるとは」
「はい。中学までが、義務教育なのですが今では大学まで義務教育と同じと言われてるんです。それに、義務教育の九年間は国がお金を支払ってくれてました。私は、高校生だったのでお金は自分の家で払ってましたけど」
「この世界では、字の読み書きと計算の仕方を教えるということで小さな学校はありますが、専門的なことを教えるとなると貴族の人間が行く学院くらいですかのぅ。その学院は、貴族の位を持たない者でも優秀な者は、特待生として通っておりますがな」
「そうですか。やっぱり、全員が高等教育を受けるのって難しいんですね、ハンス先生」
「ですのぅ」
頭を悩ませる2人の耳に、扉が勢いよく開く音が聞こえた。
なんだ? と思ってみると素早く近づいてきた黒い物体に抱きつかれた。
「ただいま、姫さん」
声が、黒い物体はグレースだと物語っていた。
アオイから、離れたグレースを見ると、日射病になるんじゃないか? この人と思ってしまうほど黒しか身につけていなかった。
「おかえり。ところで、なんで黒なの?」
「ん? これか? 護衛の格好で、どの色が良いか聞かれたから『黒がいいです』って答えたらこれくれた。黒の理由は、姫さんの髪と瞳と同じ色だから」
「そっか。うん。よく似合ってる」
グレースの灰色の髪と黒に近い藍色の瞳に、黒の制服はよく似合ってた。それから、グレースはアオイの隣に座りべったりとくっついて離れなかった。
「え? グレース? 何してんの? 離れてくれない?」
「見れば分かるだろ? いやだ。帰ってきたら何しても言いって姫さん言ったし」
(あれ? グレースって、こんな性格だったっけ!? いや、会って全然経ってない人間がなに言ってるんだと思うけど、最初に会った時と印象違くない!?)
内心、頭を抱えそうになったアオイの疑問を察知したのかハンスが、
「こやつは、アオイ様を溺愛しているんですよ。なんせ、自分のことをよく分かってくれる人間ですからのぅ」
「なるほど。たしかに、伝説の花嫁とアンバーチェ家の人間は相性が良いらしいですからねぇ」
「そういうことです」
「分かりました。それなら、納得です」
あっさり納得したアオイは、気を取り直して中断された話の続きをすることにした。
余談だが、お茶を運んできたコニーデはアオイにべったりくっついているグレースを見て、目を吊り上げて怒り狂った。
曰く、「自分ができないことを、あんたは何でやってるのよ!! 仕事は、どうしたのよ!!」
グレースはしれっと、「できないお前が悪い。ちゃんと、仕事はしてる。姫さんの傍にいて、守るのがオレの仕事だ」と答えた。
その言葉に、余計にコニーデが怒り狂ったのは言うまでもない。
そして、夕食の時間にもアオイの傍にはグレースがいた。その姿を見た瞬間、アンジェとクリスがグレースを殺そうとしてラシュ達が必死に止めていたことも言うまでもない。カイン達も、腹が立ったが自分達よりもアンジェとクリスの方が遙かに危険でそれを止めているうちに冷静になっていったのであった。
いやー、なんかグレースくんの性格が変わってるし。
でも、私的に彼は3番目くらいに好きかな!?
なぜ、25日に拘ったかの理由は活動報告にてですw