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黒の冥王  作者: 紅梅
26/49

計算高く

今回は、ちょっといつもより長めです

 本日のアオイの格好。

 深みのある青と刺繍の対比が美しく、レースリボンも付いているドレス。丈は、膝下くらい。

 アオイが本来持っている美しさをさらに引き出していた。その事に、アオイは全く気づいていないが。

 今朝の着替えなどの時間、侍女達に

「朝食の席で絶対に許可してもらいたいことがあるから、(可愛くなんて無理だろうけど)可愛くしてください!!!」

 と頼んだ。

 それを聞いた侍女達は、俄然張り切りだしていつもよりも気合いが入った姿になった。


「これで、殿下達もアオイ様の頼みを絶対に聞いてくれますわ!!」

 などとアオイを褒めちぎった。


 そしてアオイは、

(いざ、戦場へ!!)

 という気持ちで、いつもの部屋に向かっていった。

 部屋に行くと、既にアンジェ達が座っていた。しかし、まだ配膳の途中らしい。

「おはよ、アオイ」

 アオイが、部屋に入ってきたことに1番最初に気づいたラシュが挨拶をしてきた。

「おはよう、みんな」

 もう既に定位置となりつつある場所に、アオイはいつものように座った。


(きっと、今がチャンスだよね)



「ねぇ? セルにヒュー、護衛決めたんだけど許可くれる??」

「もう、決めたのか」

「誰にしたの??」

「グレース・アンバーチェ」


「「「「「「ダメだ」」」」」」


 アオイが、許可を求めたセシルとヒューズだけではなくアンジェ達にも反対をされた。


「なんで?」

 こうなることは予想済みだったが、実際に断られるとイラっとしたアオイ。

「別に良いでしょ? 私が選んだんだし。グレースだって、頷いてくれたし」

「は? 会ったのか!? どうやって!?」

「会った。どうやってのかは、秘密ね。そんで、なんで幽閉されてるのかも聞いた」

 アンジェ達は、自分達の知らないところで起こったことに対して、驚きを隠せないようだ。


「そうか。言い訳はしない。例え、自分がやっとことではないとしても止められなかった自分と、それを今まで黙認した自分が悪いのだからな」

 アンジェのこの言葉は、アオイにとって予想外だった。


(何か、言い訳みたいなのされるかと思った)


「でも、それとこのことは別だ」

「そうだね。僕達も認められない」

「理由は? 私が、グレースのことを好きになることを懸念してっての以外ね。これ、本当に馬鹿みたいだから」

「・・・・・・」

 何となく気まずい空気がアオイとアンジェ達の間に流れた。アオイは、心底馬鹿にしたような目でアンジェ達を見た。

「え? なに、この沈黙。もしかして、本当にそう思ってたの??」

「・・・・・・・うん」

「馬鹿じゃないの!? 私が、そう簡単に誰かに惚れるわけないじゃん!! まず、一目惚れとかありえないって思ってる人間だし」

 アオイのその言葉は、刃となりアンジェ達の胸にグサグサと突き刺さっているのだがそれに気づかない。



「だけど、それは召還された後に分かったことだからね。用心に越したことはないよ」

「たしかに、そうだけど。でも、グレースを閉じ込めなきゃいけない理由ってないでしょ? 私が、グレースに一目惚れすることはないって分かった時点で幽閉を解いてもいいはずじゃない?

 伝説の花嫁のことが載ってる本を読んだけど、全員が全員、皇族と結婚したわけじゃなかったじゃん。

 それに、伝説の花嫁と恋に落ちなくても一年以内に相手は見つかるって書いてあったよ?」

 あぁ、そうだ。アオイは鈍感だった。と今更ながらにアンジェ達は思い出した。

 自分達の気持ちを全く分かっていない。

 アンジェ達が幽閉を解かなかったのはアオイが、グレースに一目惚れをするような性格をしてないと分かっていても、グレースと会わせたら好きになってしまうのではないかなどを想像すると、どうしてもできなかったのだ。

 しかし、そんな心情を鈍いアオイは思いつくこともなかった。



「そうだけど。でも、僕達にも譲れない理由があるんだ。まぁ、今は言えないけどね。それに、“あの”グレースが、アオイの護衛を簡単に承諾したなんて思えないし」

「何で、“あの”がつくの?」

「俺が話しただろ?騎士団と魔法師団の両方に所属する人間は、手懐けるのが難しいって。その最たる人間が、グレースなんだ。だから、そう簡単に承諾するとは思えない」

「そうなんだ。でも、普通に快諾してくれたよ。なんなら、全員は無理だろうけど朝食終わったらグレースのところに聞きに行こうか?」

 ここでアオイは、グレースがどこにいるか知らないということは敢えて言わなかった。言ったら、色々と質問をぶつけられることを理解していたからからだ。

 それと、グレースはアオイ以外の誰にも自分の属性のことを話していないということを言っていたので、アンジェ達にグレースとのことを話すと言うことは必然的に闇属性の話にまで繋がるので何も言わなかったのだ。

(闇の話はまだアンジェ達にはできないし。あー、コニに話さなきゃ)


「んー、その場合行くのは俺とセルは確定だな。あとは、アンジェ?・・・・・・いや、あいつは嫉妬深いから会った瞬間にグレースが殺されかねない。じゃあ、クリス?・・・・・・いや、待てよ。独占欲が強いからアンジェと同じ結果になりかねない。ラシュは、この国の人間じゃないからなぁ~。残ったのは、カインか。うん。カインなら大丈夫だ!! ってことでカイン!一緒に行こう!!!!」

「ほぉ?ヒュー、お前は良い度胸をしてるな」

「その命、惜しくないんだね?」

「・・・・・・へ? ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 ヒューズが、叫ぶがアオイやラシュ達は運び終わった朝食を食べていた。セシルでさえも、関わらないように食べている・・・・否、関わりたくてもアンジェとクリスが怖すぎて関われない。

(馬鹿だなぁ。心の中で思っておけば良いのに。でも、正直なことは良い事なのか? うーん。微妙なところだ)




「じゃあ、行ってくるな。アンジェ、ちゃんと仕事しとけよ?」

「分かってる」

 まるで、母が子供の心配をするようにカインはアンジェの心配をした。本人は、一緒に行けないことを拗ねているのかそっぽを向いている。

 こうして、アオイたちはグレースの部屋へとヒューズとセシルが前を歩き、その後ろをカインとアオイが歩くという順番で出発したのであった。

 歩いて十分くらい経ったところで、一行はある建物の前で足を止めた。そこは、石造りで一階建ての建物だった。

 ヒューズは扉を叩いて、「入るぞ」と言い鍵を開けた。

 中には、夜に会った時と同じようにグレースがいた。真っ先にアオイは、グレースに近寄り「おはよ」と挨拶をした。


「おはよ、姫さん。やっぱり、来たか」

 グレースはここに、アオイたちが来ることを予想していたかのような口ぶりだった。

(いや、知ってて当たり前か。なんか、情報収集を闇を使ってやってるって言ってたしねー。きっと、さっきの会話も聞いてたんだろうな-)

「だって、信じられないってなら直接信じさせなきゃダメでしょ」

「たしかにな」

 グレースはそう言いながら笑い、アオイの前に跪きアオイの左手を取った。



「騎士団・魔法師団所属、グレース・アンバーチェは生涯の主を貴方様ただ1人とし、この命ある限り貴方様をいかなるものからもお守りいたしましょう。



 これより、私は貴方様の剣となり盾となり貴方様を害するものや不安など全て取り除きましょう。



 私のこの誓いを、ただ貴方様―――――――我が愛しきヒノ・アオイ様だけに捧げましょう。



 この誓いを許していただけますか?」


「許すわ」

「ありがたきお言葉」

 そう言って、アオイの左手に口づけを落とした。その姿は、絵になるように美しかった。


(うわぁー。グレースが、これやると威力すごっ!! さすが、皇宮人気ランキング二位!! いや、待てよ。二位のグレースでこの威力なら、一位のカインの威力はどれだけすさまじいんだ!? いやー、想像するだけで恐ろしいわ。ってか、契約ってこれで終わり? コニの時は、これで終わりだったけど)


「終わり?」

「おう。これで、契約完了」

「ねぇ、ヒュー?セル?カイン?信じてくれるよね?もう、契約も終わっちゃったし」

 三人が止める暇なく、契約は済んでしまった。これでは、文句の付けようがないと三人が思ったことはアオイには秘密だ。なぜなら、きっと呆れられるか怒られるかするからだ。きっと、アオイの選択は前者の方だろう。

 それに、最初からヒューズ達はアオイの言うことに反対をするつもりは、ほんの少しだけしかなかった。今回、反対したのは本当にグレースが承諾したのかと疑ったからである。まぁ、そう考えるのはヒューズとセシル、カインだけだが。

 アンジェは、ただ単にアオイの傍にずっといることができる男に嫉妬して、反対をした。クリスは、自分の独占欲の強さから反対をした。ラシュはグレース・アンバーチェという男をよく知らないから用心して反対をした。

 しかしアオイに、グレースを幽閉している理由を知られ絶対に、アオイの中での自分達の信頼度などは全て地に落ちた。そう思ってるからこそ、余計に反対などできなくなるのだ。

 だが、それはアオイの作戦だということに気づいていない。アオイは、会った初日にアンジェ達から言われたことを忘れていない。自分が、どれだけアンジェ達に影響をもたらすか、自分の頼みをどこをどうしたら聞くかなどを計算して、先ほどアンジェ達を馬鹿にしたような目で見たのだ。


 それに全く気づかないから、



「分かったよ。アオイの護衛の件、認めることにする」



 ヒューズは、グレースを認めた。セシルも同意するように頷いた。



「ありがとう」

 そう言いながら花が綻ぶように笑うアオイを見て、この笑顔のためなら何でもしそうだとヒューズ達はこっそり思った。



「じゃぁ、俺は行くな。アンジェが、拗ねてないか心配だし」

「あ、僕も。昨日の仕事残ってるし」

「セルが行くなら、俺も行くぞ」

 カインを筆頭に、ヒューズとセシルは部屋を出て行った。

 今のところ、アオイとグレースの間に何もなさそうだと判断したのだろう。早々に、退出していった。先ほどまで、グレースがアオイを護衛をすること自体を疑っていたとは思えないほど、あっさりと出て行った。



「あの人達って、意外と単純なんだな」

 ボソッとグレースが呟くが、その言葉の意味をアオイは理解できず首をかしげるのであった。

「気にするな。今日から、よろしくな ?姫さん」

「こっちこそ、よろしくね。早速だけど、コニのところに行こうか。まだ、話してないから話さなきゃだし。どこにいるか分かる?」

「あぁ。姫さんを、探してるぞ。何かしたのか?」

 にやりと笑われ、アオイは頬を膨らませる。

「失礼な! 何も、してないよ。ただ、ここに来る事をコニに知らせてなかっただけだもん」

「やってるんじゃねぇーか。専属侍女だろ? 普段の侍女仕事より何よりも主人の傍に控えてるのが仕事だぜぇー?」

「そうなの? で、場所は? 急いで行かなきゃ」

「ここに、近いな。宰相殿か団長達の誰かに、教えてもらったんだろ。待ってれば着くぞ」

「じゃあ、待ってた方が良いね」

 そう言って待つこと四,五分。



 扉が、バーッンという大きな音を立てながら開いた。もちろん、開けたのはコニーデだ。中に入った後、きちんと扉を閉めることは忘れない。

「見つけたわよ、アオイ!! もう、心配させないでよ!!!」

「ハハッ。ごめん。今度からは、コニも連れてくよ」

「そうしてちょうだい」

 コニーデを手招くと夜と同じようにアオイは寝台に腰掛け、その隣にコニーデを腰掛けさせた。グレースは、手近にあった椅子に座った。


「あのね、コニに聞いて欲しいことがあるんだ」

「なに?何でも、聞くわよ」

「もしかしたら、コニが私との契約を解除したくなるような話でも良い?」

「当たり前じゃない。ほら、さっさと話しなさい」

 促されて、アオイは自分の属性の事を話し始めた。

アオイちゃん・・・・・・あなたって意外と計算高い子だったのね!!w

はい。

ということで、見事に護衛の件を認めさせました。

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