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黒の冥王  作者: 紅梅
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女の噂話は恐ろしい

 アオイの隣には、誰が座るのかなど揉めにもめたがなんとか収まり、お茶の時間が始まった。

 集まった人数は、コニーデを含めて四人。その中には、リサーナもいた。

(あれ?? リサーナさんって、侍女頭っていう役職に就いてなかったっけ!? こんなとこにいてもいいのかなぁ? でも、いるんだからいいんだろうな。うん。そう思っておこう)

 アオイは、疑問をそのまま口には出さず自分の心の中にしまっておくことにした。


「本日は、お招きありがとうございます。本当は、もっと多くの者が「行きたいです!!!!」と言っていたのですが、それではアオイ様の迷惑になるだろうと考え、公正なくじの結果、私どもになった次第でございます」

「そうだったんですか! もっと、多くの方が来てくださってもよかったのに。でも、それはまたの機会で良いか。そうだ! これから、お茶の時間は侍女さん達としよう!! 女同士でしかできないような話もあるだろうし。いいですか!?」

「もちろん、喜んで!! アオイ様にそう言っていただけて嬉しいです」

「よかった」

 そう言いながら、紅茶に似たお茶………あとから聞いたら紅茶で良いそうだ……を一口飲んだ。

 コニーデ達は、遠慮をしているところをアオイが無理矢理飲ませ、食べさせをしたのでそこからは自分から飲み食いするようになった。

「それで、私どもに何か聞きたいことでもあるんでしょうか??」

「うーん。まずは、アンジェ達の女性歴が知りたいですね。そうだなー、カイン辺りからで!!」

 誰からにしようかを、まったく考えていなかったので適当に考えついた名前から言っていくことにした。



「カイン様ですね。分かりました。あの方は、年下から年上まで範囲が広いって噂ですね」

「確か、十六歳から四十五歳くらいの方まで様々ですね」

「まぁ、一回抱いたらポイってするらしいですけど」

「それでも、相手をしてもらいたいっていう人が多くいるらしいですよ」

「それと―――――――――」

「それは、どうかと思うよ」

 結果、カインは守備範囲の広い変態らしい。

 それを聞いたコニーデ達は、絶対違うと思いながらも何も言わなかった。



「次は、アンジェ!!」

「アンジェ様ですか。上級の娼婦館のもっとも高級な人が多いって話ですね」

「なんでも、『貴族の女は、後々になって面倒だ。』と仰ってるそうですわ」

「でも、時々は同年代の方には手を出してるみたいですよ」

「あとは―――――――」

「なんて、言ったらいいかわかんない」

 結果、アンジェは完全に何を言ったらいいか分からないらしい。

 それを聞いたコニーデ達は、同意するように頷いていた。



「次は、クリス!!」

「分かりました。クリス様ですね」

「未亡人や、年上の奥方との噂が多いですね」

「年上の方々って、経験豊富って感じの方が多いんです。クリス様は、『経験豊富な方を鳴かせて、落とすのが良いんだ』と仰っていたという話もありますね」

「1回で堕ちなければ、何度でもってことですね」

「他にも―――――――――」

「うわぁー。悪趣味!!!」

 結果、クリスは熟女好きで悪趣味らしい。

 それを聞いたコニーデ達は、何か違うと思いながらも訂正はしなかった。



「じゃ、ラシュ!!」

「ラシュ様はですね、遊んでいるのか遊んでいないのかよく分からない方なんですよ」

「えぇ。女性といたという噂を聞いても、その日は下町の酒場でいろんな人達と飲んでいたとい目撃情報が入ってきますし」

「毎回、そういう事があるので色々疑惑があるんですが、一向に分からないんです」

「でも時々、女性の匂いがして帰ってくるときもあるそうですわ」

「あと他は―――――――――」

「不思議だなぁ。ラシュは」

 結果、誰にもバレたくない相手と遊んでいるらしい。

 これを聞いた侍女達は、首をひねったが詳しい事は何も分からないので反論はしなかった。



「最後は、ヒューズとセシル!!」

「ヒューズ様とセシル様は、一番遊んでいますね」

「身分は平民から貴族までと関係ないらしいですわ」

「『若いうちに、いっぱい遊んどかないと!!』って仰って外出されたという噂がありますね」

「二人で抱くこともあれば、別々で違う方を抱くということもあるらしいです」

「あとはですね―――――――――」

「えっと。色々と面倒くさそう」

 結果、ヒューズとセシルは若いって良いなと思えるくらい遊んでいるらしい。

 これを聞いたコニーデ達は、貴方も十分若いでしょ!!と思ったがあえて何も言わなかった。



「教えてくれて、ありがとうございました。後、皇宮内での人気ってどんな感じですか?」

「人気ですか。一番は、カイン様ですね。二番はグレース様で、三番目はアンジェ様で、四番目はクリス様で、五番目にヒューズ様とセシル様が入ってますね。ラシュ様は、隣国の方なので入ってません」

 アオイは、ここで引っかかりを覚えた。それは、自分が知らない名前があったからだ。


「グレース様って?」

「お名前は、グレース・アンバーチェ。アンバーチェ伯爵家の嫡男です。珍しい、騎士団と魔法師団の両方に属しているお方です。今は、なんでも幽閉されているらしいです」

「幽閉!? なんで?? なんか、悪いことでもしたの??」

「それが、まったく分からないんです。なぜ、幽閉されているのか。そして、幽閉されている場所も分かっていないんです」

「皇宮内でも見目麗しく、とても人気があったので皆残念がってますよ」

「そうなんですか」

 アオイは、これ以上の情報はないだろうと思いあとは何も聞かなかった。

 その後は、華やかにお茶の時間を過ごしたのであった。

 そして夕食の時間に、現れたアンジェ達をアオイが白い目で見て、「自分たちは何かをしたのか!?」とアンジェ達が狼狽えていたのは別の話だ。





 アオイは、その日の夜に夢を見た。

 何もない黒一色の景色の中に、アオイは一人で立っていた。辺りを見回しても誰もしない。そして、

『――――イ。アオイ。はやくおいで。待ってるから』

 という声が、どこからか聞こえてきた。ただでさえ、黒一色で平衡感覚も掴めなくて恐怖心が出てきているというのに、この声がさらにアオイの恐怖心を煽った。

「誰!?」

『アオイ。さぁ姫君、はやくおいで。ずっと、来てくれるまで待ち続けているから』

 声にならない悲鳴をあながら、アオイは飛び起きた。




本当、女の人の噂話はバカにできませんよww

今日の話題の生け贄はアンジェ達でした。

さて、次回は誰になるかな?←ニヤッ


これで、ようやく長い1日が終わりました(汗)

物語も、動き始めますよ。      多分

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