神官長と侍女の言い争い
なんの捻りもないタイトルです(汗)
「最初に、神殿に行きたいんだけど良いかな??」
「うん、良いよ」
「ありがと!!じゃ、出発」
アオイと、コニーデは神殿を目指して歩き出した。高いヒールの靴だからか、最初は何回かこけそうになったが今は慣れたように歩けるようになった。
神殿は、どうやら皇宮の一番端にあるらしくいろんな場所を通り過ぎていった。
頻繁に人とすれ違い、そのたびに頭を下げられたのでアオイもペコリと頭を下げといた。そのたびに、コニーデから「頭を下げなくてもいいの!!」って叱られた。頭を下げられた本人達は、顔を赤くし足早に去っていった。
(そう言われても、しょーがないでしょ。日本人の習性として、もう身についちゃってるんだもん。頭を下げられたら、下げ返さないと失礼じゃん。こっちじゃ、違うのかなぁ??
あーでも、なんとなく違うっぽいよね。ちゃんとした上下関係あるみたいだし。なんか、アンジェの伝説の花嫁? として召還されちゃったから立場は、私のが上って事だよね・・・・。はぁ、めんどくさそうだわ)
あれこれ、考えても結局最終的に結論は“めんどくさそう”にいくアオイだった。
「着きましたよ」
コニーデととりとめのないことを話しながら歩き、その合間合間に周囲を見ていたりしていたのでアオイは気づかなかった。前方に、大きな神殿があることを。
「うわ、デカっ!!」
(まさに、神殿って感じ。なんか、よくファンタジー漫画とかに出てくる神殿と一緒だよ!!)
「大げさだよ。さぁ、入ろっか」
ちょっと、コニーデに笑われアオイは恥ずかしかった。
案内されたのは、全体的に白で統一されている広い部屋で前に女神の像が建っていた。
「こっち」
手を引かれ、女神の像の前までやってきた。
「神殿は、当たり前だけど基本的に神官しかいないわ。今の神官長は、アオイも知ってるはずだけど、クリス・ブルーバル様。そしてこの部屋は、この神殿で唯一女神ユリエルの像が置かれてる部屋なの。
だから、儀式とかでよく使われるわ。例えば、結婚式とか。たぶん、アオイの召還もこの部屋で行われたはずよ。とても神聖な場所らしいから。」
「へぇー。そーなんだ」
口では感心したように言っているが内心は、
(こんなに、デカイのにユリエルの像が置いてあるのがこの部屋だけって・・・。ケチケチしてるんだなー!!もっと生産すればいいのに。あ、でもそれだとありがたみがなくなるのか? うーん、それだと大量生産はまずいよねぇ)
なんてことを思っていた。
その時、コニーデがアオイの目の前で跪いた。
「わたくしは、貴方様が困っている時、悩み苦しんでいる時それを全力で解決できるように努めます
わたしくは、貴方様がどこへ行こうとそれに着いていきます
わたくし、コニーデ・マーレルの唯一無二の主を貴方様としこの命が尽きるその時まで絶対の忠誠を誓います
この誓いを貴方様に立てることをお許し願いますでしょうか?」
「へ?」
「どうか、許していただけるのなら“許す”と。許さないのでしたら“許さない”とはっきり仰ってくださいませ」
「えーっと。許す。許します!! だから、子犬が縋るよ-な目で私を見ないでぇぇぇぇ!!」
「ありがとうございます!! これからは、ずっとお傍にいますから!!」
捨て犬が「ボクを拾って!!」とでも言うかのように縋ってくる目と同じ目をしたコニーデにアオイは敗北した。
ニコニコ笑顔でアオイの両手をギュッとコニーデは握ってくる。
(あぁ、可愛いからもうなんでもいいや)
「なにか、楽しそうだね」
(・・・・ん? 何か、声が聞こえた?? でもこの声って――――――)
「ボクを、無視するなんて良い度胸だね、アオイ?」
すぐ後ろにクリスがいた。しかし、アオイはコニーデの笑顔をぼけーと見ていたので気づかなかったのだ。
「ひぃぃー。く、クリス!? む、無視だなんてめめめめ滅相もない!! あは、あははははは」
アオイは、引きつり笑いになったが笑っておいた。なんといっても、今クリスが醸し出している雰囲気が怖いのだ。
「ふーん。それならいいけど」
どこか拗ねたようなクリスは、怖い雰囲気を醸し出していたとは思えないほどかわいい。口には、決して出せないが。
「クリス様は、どうしてこちらにいらっしゃるんですか? お仕事の方は大丈夫なんでしょうか?」
訳「クリス様、こんなとこでなにしてんだよ。はやく仕事に戻れや」
「なんか、アオイの悲鳴みたいなものが聞こえてきたから来てみたんだよ。アオイに何かあったら大変だろ?」
訳「アオイの悲鳴が聞こえてきたからね。ボクのアオイに何かしたんじゃないよね?」
「まぁ、アオイ様になにかあるなんてありえませんわ。アオイ様に、専属侍女の誓いを申し上げて許しをいただいていたんです」
訳「アオイに何かあるわけないでしょ!! それにアオイは、貴方のじゃないわ!! わたしのよ!! なんたってわたしは、アオイの専属侍女なんだから」
普通の会話のはずなのに、どうしてもアオイには裏の言葉のような声が聞こえてきてしまう。
(うへぇー、こえーな)
「そうだったんだ。ところでアオイ?」
「は、はい?」
ぼんやりと会話を聞いていてたので反応が少し遅れた。
「なんで、神殿に来てるのにボクのところへ最初に来てくれなかったの? 神官達が、『かわいい女性達がいらしてるんですよ』って嬉しそうにボクのとこに言いに来るからもしやと思って来てみればアオイの悲鳴はするしで驚いたんだからね?」
「えっと、あのーごめんなさい?」
「本当に悪いと思ってる??」
「も、もちろんデストモ!!」
まだ疑っているかのようにクリスはアオイをじーっと見つめる。その視線に居心地が悪そうに自分の視線を明後日の方向へやる。
「さぁ、アオイ様。次の場所に参りましょう。神殿は、ここ以外案内するところもございませんし」
「コニーデは、ボクとアオイの逢瀬を邪魔する気かな??」
「滅相もございません。ですが、アオイ様には案内しなくてはならない場所とまだ、この世界のことを何もお教えしてませんので時間がないんです」
「そう。それは、とても残念だ。だけど、アオイのためを思うなら引き留めちゃダメだね。じゃ、ボクは仕事に戻るとするよ」
「仕事、頑張ってね」
「ありがとう、アオイ。あと、アオイは可愛いから男には十分注意すること。浮気とかしたらボク、その男を殺さないっていう自信ないから。神官長に人殺しさせないでね?」
クリスは、アオイに近づくと軽くアオイの頬に口付けさっさとどこかへ消えた。
「なっ! クリスのばかぁ!!」
あとには顔を赤くしたアオイと、イラっとしたような表情をしたコニーデが残された。
「あの男、わたしのアオイに何してくれちゃってるのよ!! ダメよ? そんなに無防備な姿を男に見せちゃ!!・・・・・・・・・・・・それに独占欲丸出しじゃない。でも、アオイは気づいてないみたい。いい気味だわ」
「ん? 最後の方なんて言ったの? よく、聞こえなかった」
「ううん。なんでもない」
コニーデは、ハンカチを取り出しごしごしと痛いほどクリスが口付けた頬をこすった。
「い、痛いよ?」
「あら、ごめんなさい。まぁ、これでいいわ。さぁ、次に行きましょう」
「はーい。次は、どこ?」
「うーん・・・・・・あ、騎士団と魔法士団の詰め所に行きましょうか」
「そこって、ヒューズとセシルがいるところ?」
「そうだよ」
「行ってみたい!!」
次の目的地は、騎士団と魔法士団の詰め所とし歩き始めた。神殿を出る時、多くの神官達に見送られたのがアオイには謎だった。
アオイちゃん、専属侍女をゲットしました(笑)
子犬みたいな目で縋られたら、拒否なんてできません!!
しかも、公私の区別をはっきりつけてるコニーデちゃん。
えらい!!←当たり前か(笑)