選べない
アオイは、話を聞いていて一つ疑問に思ったことがあった。
「ねぇ、皇族が多夫多妻制なんでしょ? だったら、さっきの話だと何人とも結婚できるのって皇帝だけじゃないの??」
そう。皇族だけが、何人とも結婚できるのに皇族ではないその女の人は何人とも結婚しても良いのか?という疑問が思い浮かんだのだ。
「ボクも、よくは知らないんだけど女神ユリエルが認めたらしいんだ。彼女が召還した人間は全員は、この帝国でもっと偉い皇帝よりも高い位に位置しこの世界で女神ユリエルの次くらいに偉い位置にいる。それだったら、皇族と同じように多夫多妻制で良いかって事になったらしい」
「てきとーだね」
「だねぇ。もちろん、アオイも女神ユリエルに召還された人間だからこの世界で二番目に偉いから多夫多妻制ね」
(今、コイツ気軽に“多夫多妻制”って言った・・・・。こっちは、一夫一婦制で育ってんだからいきなり言われても正直無理だわぁ)
一瞬だけ、かなり気軽に言ったクリスに対して殺意が目覚めた。
が、すぐに消えた。それはアオイの常識が、この世界で通じないことを理解し始めたからだ。
(ユリエルが言うには、この世界には魔法あるらしいし、電気通ってなさそうだし、城なんてなかったし。私の常識が、どんどん音を立てて崩れてく――――――)
「結婚については、ゆっくり考えてくれればいいよ。最初の花嫁は皇帝達を選んだけど、必ずしも恋に落ちる訳じゃない。
ボク達はこの中から選んでほしいけど、アオイが自分の意思を持ってアオイ自身が決めればいいよ」
「ありがと。正直、今選べって言われても無理だから助かった。会って全然時間が経ってないし、アンジェ達がどんな人達なのか分からない限り選べない」
「分かってるよ」
クリスの言葉に、アオイは本当に安堵した。今のままでは誰も選べない。アンジェ達に事を、名前と役職くらいしか知らないから。そんな人達と結婚なんてアオイには絶対にできない。
「じゃあ、次はこの世界の時間とかの――――――」
「お食事を運んで参りました」
またもやクリスの説明は、リサーナによって遮られた。リサーナは、そんなことを気にせずに料理を運んできた。色とりどりの料理が出てきた。
「あのね、リサーナ。今、ボクがアオイに世界の説明をしていたんだけど?」
「まぁ! まだ、説明をしていなかったんですか!? ですが、早くお召し上がりになられませんと皆様すでに仕事を始めてますよ?」
「それは本当か!?」
「はい」
リサーナの言葉に、アオイを除いた全員が顔をしかめた。
「アオイ、悪い。時間がないから、説明がこれ以上できそうにない」
申し訳なさそうに、クリスは言うがそれほどアオイは気にしていなかった。
「気にしないで。食事を優先させた方が良い。話に聞いたところ、みんな重役に就いてるみたいだからみんながいなかったら、他の人達が困るでしょ」
アオイはにこやかに笑う。そんなアオイを見て、アンジェ達はほっとした。
「そう言ってくれると助かる。リサーナ、アオイの部屋は?」
「一応、客間に用意させていただきました」
「・・・・客間か。まぁ、良いか。アオイを連れて行ってやってくれ。それで、着替えさせたりして俺たちの代わりに世界の説明と皇宮の案内を頼んだ」
「お任せくださいませ。アオイ様、こちらへどうぞ」
「はい。じゃーね!!」
リサーナが、アオイを連れて行った後アンジェがカイン達にねちねちと部屋のことで嫌みを言われ続けたのは言うまでもないことだった。
「どうぞ。こちらでございます」
「えぇー!!!! ここですか!?」
「何か問題でもございましたか? もしかしてもっと大きな部屋がよろしいのでしょうか? でしたら他の大きな部屋を用意いたしますけれども」
「いえ!! いいです。ここで良いですから、本当にもっと大きな部屋を用意するなんて言わないでください!!」
案内された部屋は、高校などの教室よりも遙かに大きくて広かった。純庶民のアオイは、リサーナの言葉に泣きかけた。
(これより大きい部屋なんて絶対に無理!!)
「かしこまりました。それからアオイ様に専属の侍女を一名付けさせていただきます。普段は、その者がお傍におりますのでなんなりとお申し付けください。他の侍女は、交代になりますので」
「分かりました」
その時、扉が勢いよくドンドンと叩かれた。
「まだですか!? わたし、早く姫様にお会いたいです!! ですから、早く紹介してください!!」
元気よく聞こえた声にアオイは驚く。リサーナは、はぁ。と額に手を当てながらため息をついた。
「申し訳ございません。専属侍女に選んだ者が扉の前で待っているんです。コニーデ、入ってきなさい」
「はい!!」
返事と共に入ってきたのは、笑顔が眩しいほどに輝くアオイとさほど変わらないような少女だった。
なんかアオイちゃんとクリスくんの会話が主で他の人が全員出てないよ!?
やっぱりみんな勝手に動き回るのが好きなんだね(泣)