N歳までにやるべき事はN歳までに常にやりきれないので、使えるものを拾い集めてどうにかしていくしかない
2026年になって婚活を始めた。
女性と付き合った事がないどころか、童貞ですらあるし、自分は誰かと生きるという事に凄く不向きな性格をしていると自認していたが、それでも色々と物事が重なったりして、これから先も一人で生きて孤独死する未来は嫌だなあと思う気持ちの方が強くなって、婚活を始めた。
結婚相談所に入会し、書類を整え、写真撮影をし、それぞれに料金を払い、専用のSNSに登録して、お見合いのリハーサルをした。
条件にマッチする中で大量に女性のプロフィールを見て、お見合いを申し込み(申し込まれる事もあるが男だと相当にスペックが高くないとかなり稀になる)、受領してくれた10%未満の方々と新宿やら横浜やら渋谷やら東京やらの、かなり整った……時にコーヒー一杯に1500円くらい支払う必要のあるホテルのラウンジとか、すっごい格式の整ったカフェやらできちんとスーツを着て身なりを整えて1時間程お話しをし、代金は男が全部持ちで、要するに3000円近く……鳥貴族とかならもう腹一杯食えるくらいの金をドリンク2杯分支払い、そして大体仮お付き合いは断られる。
仮お付き合いが成立しても、その後で瑕疵があるとすぐに切られる。原因が簡単に直せる事柄だったとしても、挽回する余地はない。次回以降新しく会う人で改めていくしかない。
そういう事を繰り返して、早4ヶ月が経とうとしている。
31歳になった。
断られて自省をして改善する作業を繰り返して、時にお金を払ったりもして、心が削られていく内にとにかく痛感したのは、自分にはこれまでの人生でやるべき事を時に蔑ろにし、時に避けてきて、時に冷笑すらしまっていたという事だった。
恋愛というものを馬鹿にすらしていた気がする。高校はぼちぼちな進学校だったから、そもそもそういう事をする人自体が少なかったと思うけれど、まあ自分には無縁でもあったのは間違いない。ついでに言えば大学は男が9割だったし、自分の性格への自認もあれば、他にも理由があったり。
人との交流というものを避けてきていた。バイトも、大学の授業の手伝いだったり、裏方系の短期バイトがメインで、レジ打ちだとか接客だとかそういう、赤の他人と強く関わる必要のあるものは避けていた。仕事もITエンジニアで、特にコロナ禍以後は、本当にチャットでのやり取りがメインとなって、面と向かって人と会話する機会が激減したまま、趣味でも赤の他人と接触する機会はかなり少なくなった。他愛ない雑談をする機会など、半年に一回もないような時もあった。笑顔を作るだなんて事、必要に迫られた事も余りなく、あったとしてもどうにかやり過ごしてきてしまった。
私服でも身なりを整える必要性がほぼなかった。気付けば大学生の時と同じような服装でずっと外出してきていた。
とにかく、婚活というステージに立つ為には自分には足りないものが多過ぎて、婚活のアドバイザーに相談したり、事前にアドバイスを貰ったりをしていても、10年以上一人暮らしをしていて、そう人とリアルに交流する機会が少なかった自分には、すり抜けて女性からは無しと判断される要素が滲み出していた。
その穴埋めを、今、必死にしている。
そしてまた、東京での婚活はきっと、地方で婚活をするよりかなり男にとって難易度が高い。
自分のスペックは、まあ全国の平均よりは上だろうと思ってはいるが、東京という場所においては埋もれる程度しかない。そして、男としての魅力はまあ……平均よりは確実に下回っているだろう。穴埋めが出来たところで、きっと高が知れている。
会話した女性は例外なく全員身なりをきちんと整え、化粧をしており、笑顔が出来る。スーツを着て髭と髪の毛を軽く整える程度で済んでいる男が飲み物代を支払うのが仕方ないと思えるくらいには。
初対面の1時間で話題が尽きないくらいに話せる人もザラに居る。自分よりスペックが高い人も全く珍しくない。少なくとも今まで自分がお見合いだけで、この人とは致命的に合わないと思った事は一度もない。
言ってしまえば、東京でマッチングアプリではなく、相談所に入って婚活をする人はそんな、きちんとした人達しか居ない。
自分がマッチングアプリという選択肢を選ばなかったのは、女性経験がゼロな自分に対しての手取り足取りのサポートが欲しかったからであるからで、そこに後悔はないのだが、どっちにせよ超えるべきハードルは高かった。
この4ヶ月でメンタルをもう2度大きく崩している。より細かく言えば、事前に体調を崩してなし崩しにメンタルも崩れたという形だが、婚活がデバフになって拍車を掛けたのは間違いない。
辞めようとも思った事もあるし、辛いと独りでに口に零す事もかなりあるが、それでもどうにか持ち堪えている。
それに、結婚というステージに進む為にやる事など全く意識もして来なかった訳ではあるが、それでも自分に使える資産が何一つ無いという訳ではないとも自覚している。
部活を小学校から大学に至るまで色々続けてきた事。初対面の人と1時間どうにか会話を繋げられるくらいの社会性はある事。
趣味で色々と本を読んできたり、博物館とかに足を運んだり、またこうして文字を書いてきた事。話せる話題は色々ある事。
健康の為にフィットネスに通い始めて、デブでもヒョロガリでもなくなった事。
そして、手遅れという年齢ではない事。
結婚というステージに進む為にやるべき事をやって来なかった人生ではあるが、使えるものはある。
武器というにはやはり心許ないものばかりだが、それらをどうにか拾い集めればRPGにおける始まりの村から出る資格すらない訳ではない、はずだ。
……きっとこれからも、自分は失敗をして容赦無く捨てられるのだろう。
しかしやはり、自分は捨てられた事も糧にして前を向くしかないのだ。
ただ……それでも……そんな事を繰り返してしか進めなくなってしまった自分の事を、後悔せずには居られない。
つらい。




