落雪の下敷きになって亡くなった公務員
こんにちは、アカネです。私は子供の頃、北海道に住んでいました。冬になると、道路が無くなるほどの雪が積もり、長靴を履いて学校に向かっていました。
自転車が使えず、いつも行っていた飲食店やカラオケにも行く機会が減って、暖房をつけた部屋でゴロゴロとするのが日常でした。
異世界にも、そんな世界が広がっています。
積雪地域。死亡人が行きたがらない限り、私はその地域に転生させることはありません。
私は物心ついたころから、雪が降るデメリットを肌で感じているのです。
「何をボーッとしてる」
「ほっとけ」
「お前なぁ…私は神だぞ」
「神のくせに転生先考えるのめんどくさいなんて、情けない」
そうこう言い合っていると、来客のお出ましだ。
「お、今日一人目!おめでとう」
「あれ…なんだここ」
見慣れた反応を見て、実家のような安心感を覚える。
「ささ、とりあえずここ座って」
「分かりました…」
「あなたは屋根から落ちてきた雪の下敷きになって、そのまま低体温症と窒息死をした市役所員ですね」
「そうか…助からなかったのか俺は…」
気の毒に。公務員であるということは、これまで澱みのない努力を積み重ねていたに違いない。これぞ本当に「積み上げたものぶっ壊して」という状態だろう。
「何飲みます?」
「あ、お酒は控えています。妻に叱られますので」
「もう妻とは…いえ、分かりました」
そっとグラスをしまい、口を開く。
「これからあなたは、転生してもらいます」
「なっ、いいんですか、私のようなものが…」
「冷静ですね」
「今更慌てても、何もないですからね」
その聡明さに、アカネは国王の器を見出した。神様が裏から持ってきた王族図鑑をパラっと見る。
「少し良いですか?」
「はい?」
「できれば、雪国でお願いします」
……。
「では、レントン家の国王候補として転生させます。良いですか?慎ましく生きていれば、あなたは王位継承争いに参加せずとも国王に選ばれます。あまりでしゃばらないように。まあ、あなたなら大丈夫だと思います」
「はい」
「モーラック•レントン。行ってらっしゃい!」
と、その前に。
「神様、待って。なんで雪国へ?」
「私のような犠牲者を一人でも減らすため、雪の人的被害を抑える活動に参加したいと思います。一度もらった機会は、逃したくありません」
この人は、心の真髄まで公務員だ。そして、この男が世界を変えていくことを、アカネはまだ知らない。




