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三週目の人

突然だが、このバーについて話をしよう。命名したのは私で、名前は「転生しようのBar」。なんとわかりやすい。だけれどもダサい。このバーに来る客なんて、店名を気にしないが私が納得しないのだ。何か違うような気がする。

「基本的に、お前が主導しているのだから、転生させようのBarの方がしっくりこないか?」

神様はこんな戯言を抜かしてくる。論点はそこではない。


「ん?懐かしい雰囲気だ。私が良く通っていた店に似ている」

「いらっしゃい」

歴代最高峰に、冷静なお客さんの来訪だ。


「え〜と、あなたは大手大企業の企画担当者、部長の地位まで登り詰めたものの急病で入院。それから余命を全うして死亡…」

「お酒を注いでくれるかい?」

「もちろん」


歳を感じる話し方をするが、見た目はまだ30歳前後に見える。すらっとした体型にスーツを着ているせいだろう。


「何飲みます?」

「ゆず酒が飲みたい」

「おもしろい。初めて頼まれました」

酒樽の蓋を開ける。樽自体はただの収納用で、中に酒瓶がたくさん入っている。見栄えがいいから選んでいるのだ。


「これから、あなたは転生することになります」

「だと思ったよ」

「え?」

「…私は三週目なのでな」


一瞬思考が停止したが、アカネの脳が情報の整理を始める。


日本で死に、異世界で転生。

異世界で死に、日本に転生。

そして今。

日本で死に、また異世界で転生。


「この前は冒険者として生きていた。私は日本の方が好きでね、死んでも仕方ないと未開拓の地に前衛として突っ込んだのだよ。冒険者としては、年齢が重かったからね」

「なるほど、今回は高貴な生まれが良いとか、要望はありますか?」

「…人間は飽きたよ」


三週目ならではの発言が飛んできた。まあ、何百年も人間をしていれば飽きるだろう。魔物図鑑をカウンターに置く。


「好きなのを選んでいいですよ」

「いいのか?」


ここは、転生しようのバー。自分自身で次の道を決めるべきだ。

「仕事放棄では…?」

神様は呆れたようにこちらを睨むが、目を逸らす。


「あ、こちらも」

カウンターの観葉植物の下に、バイクの収納サイズの小さい溝がある。そこに埋まった動物図鑑を取り出した。


長考の末、彼が選んだのはリスだった。

「リス…またすぐ死にそう」

「だね」

げんなりしながら神様は彼を飛ばした。


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