異世界から日本へ
余談だが、最近このバーに地球儀が設置された。異世界はどのような形になっているかと聞いてみると、「ずっと平面」という回答が返ってきた。おそらくまだ地球平面説レベルなのだろう。私が送る人が、天動説や地動説を唱えるかもしれない。是非とも頑張って欲しい。
「ここはどこだ」
やけに冷静な人物が入店してきた。見覚えのある服装をしている。
「あれって…?」
ワイングラスの棚を回転させて、貴族図鑑を見る。
間違いない。あの人物はララシオ家の人間だ。
「逆のパターンもあるんだ。こんなの初めて」
「なんの話をしているんだ、貴様は誰だ」
「ここは夢じゃない。え〜と、あなたは食後にお酒を飲み、寝込みを弟に襲われて殺された。次期家主の争いに敗れた残念貴族です。まぁ、ドンマイ」
「なっ!リアのやつ、裏切ったのか…」
「まあまあ、何飲む?」
「飲まなければならないのか…」
小声でそう呟いた。
「その白ワインを」
「おぉ、珍しい。どうぞ」
「くそっ。あいつ、俺を油断させるためにわざと…」
流れるようにカウンターに座って、台パンする。日本人よりも異世界人の方が、適応能力が高いのかもしれない。
「悔しがってるところ申し訳ないんだけど、あなたは今から異国の地に行ってもらいます。転生という形で」
「転生!?望むところだ!」
こいつは大物になる。そうなればやはり、政治家の息子、スポーツ選手の息子の二択だ。ここ最近、野球選手の下半身が軽いので転生スポットとして、枠が空いている。
「君は山本由伸の息子として生まれてもらいます。絶対に前世の記憶について話をしないこと。赤ちゃんの時は絶対にバブバブ言っとくこと。いいね?」
「承知した。早く送れ。俺は止まっていられない」
神様にまで傲慢な態度をとるとは。これは、大谷翔平超えも夢じゃない。グラスに注がれたシャドルネの白ワインを少し飲んで、彼は飛ばされた。
グラスには、半分以上飲みやすい白ワインが残っていた。
「あいつ、威勢が良かったのは泥酔していたからじゃないのか?」
「そうかも…」
前世で寝込みを襲われたのも、酒で酔ってそのまま寝落ちしたからなのだと気付いた。つくづく、残念貴族である。




