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月光 第二楽章

月光 第二楽章 「Allegretto」 4分の3拍子 変ニ長調。

複合三部形式でスケルツォやメヌエット、ワルツのような曲。フランツ・リストは言う。「2つの深淵の間の1輪の花」と。第一楽章と第三楽章では嬰ハ短調と非常に暗い響きであるが、第二楽章では変ニ長調と主音が同じC♯(D♭)であるが故にそこはかとなく儚さと、どこか後ろめたさを感じるような気がした。花のように可憐で、美しく、いつかは散ってしまうのか。どこか寂しさを感じさせる曲だ。



「かーーなーーーとーーーー!!!!」

ドタドタと走ってきてわざとぶつかってきたのは、けっけだった。わざとなのは見て取れるのだが、許せてしまう。それくらい心を許してしまった相手なのだ。

「いってぇな、、。なにすんだよ、朝っぱらから。」

「許せよーー!朝から奏斗みつけてテンションあがっちゃったんだよ!てかどう!?伴奏は!」


そうだ。俺はあの日、伴奏を任されてしまった。合唱コンクールが中学校であることを忘れてしまっていた。


「伴奏なぁ、、。やりたくないよ。本当に。思い出しちゃうから。あの時のことを。」

「奏斗はまだそれを引きずってるの?俺が言うのもなんだけどさ、前に進むきっかけ、掴んだ方がいいんじゃねえのか?」

ごもっともだ。今のままじゃ何も変わらない。心を閉ざしたまま終わる。

「そんなのわかってるけど、。怖いんだ。あの時と同じことが起きてしまいそうで。」

「それはやってみなきゃわかんねえじゃん。とりあえず行動あるのみ!ま、俺と一緒にがんばろーぜ!」


けっけはやさしいな。そう言いたいが気恥ずくなってしまい辞めた。少し、前向きになれたような気がした。やってみようかな?なんて淡い期待も抱いてしまった。


早速譜読みをしてみた。小さい頃からやってるから、別になんとも難しくはなかった。けれども、クラスで合わせるとなると、どうしても不安がよぎる。それさえ無ければいいのに。また、自分の音で、人を傷つけたら。

今度こそ立ち直れない気がしてくる。


「奏斗、?もしかして今の曲、伴奏するの?」

「華音……。押し付けられちゃってさ。いやいや、参ったよほんとに。」

「大丈夫?嫌なら嫌って、言わなきゃ。」

「大丈夫だよ。俺がやんなかったら、みんなの迷惑になっちゃうし。」

「そう?それならいいんだけど、無理はしないでね。」


華音は優しい。そしていつも気を使ってくれる。だからこそ、虚しくなるし罪悪感が悶々と湧いて出てくる。それは体を蝕み、心を閉ざしていく。華音が悪いわけじゃない。俺が悪いんだということも分かっている。


ああ、どうしよう。やるしかないのか。ここで成功させられたなら、もう1回ちゃんと向き合えるのかな。

そんな淡い期待を胸に、少し前に踏み出してみることにした。

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