目次 次へ 1/5 懐古 これはいつの日の記憶だろうか。現実か夢か分からない、それくらい昔のこと。 「ねぇ、うちにもピアノ教えてよ。」 僕は言う。姉の弾くピアノが好きだった。自分もこうなりたいと思った。その気持ちは憧れの純粋なものだった。 華音(かのん)は僕の姉で2歳年上。 「別いいけど、何弾きたいの?」 「なんでも!ひければいい!」 他愛もない会話だった。でもそれ以上に、あの憧れのピアノを弾けることというのが凄く嬉しかった。 「じゃあまず簡単なのかやろっか、」 「うん!」 これが、僕とピアノの出会いだった。