005,掲示板と報酬と
【速報】ウルフキング撃破されたんだがwww【第1階層ボス】
1 :名無しの観戦者:2025/06/25(火) 16:12:31.02
ウルフキング倒されてるんだけど???
討伐ログ流れたぞ今!?
まだβ組でもギルド戦用のデータ集め段階じゃなかったっけ??
2 :名無しの弓術師:2025/06/25(火) 16:12:59.88
は?誰が撃破したの?
3 :名無しの盾職:2025/06/25(火) 16:13:10.91
2
さあ、わからん。名前も無所属表示だった。
4 :名無しの幻術師:2025/06/25(火) 16:13:34.27
最前線ギルド、まだ準備中だったはずじゃ……
うち、昨日やっと初挑戦だぞ?
5 :名無しの火力不足:2025/06/25(火) 16:14:01.83
もしかしたら誰か抜け駆けしたのかもな
個人勢で?
6 :名無しの火山:2025/06/25(火) 16:14:18.87
さすがにそれはないだろw
最前線ギルド、事前申告制で討伐許可とかノルマとかめっちゃ厳しいんだぞ?
ソロ突入とかルール違反だし晒されるレベル
7 :名無しのマジで誰:2025/06/25(火) 16:14:46.02
誰かリプレイ持ってない!?
観戦ギルドのAIが熱狂してたらしいんだけどwww
あれ、AI実況じゃなくてマジで人間実況みたいな叫びだったぞ!?
8 :名無しの拳未経験:2025/06/25(火) 16:15:02.21
っていうかさ、討伐者の職業表示が《拳聖》って出てたんだけど
あれ格闘家だよな……?
9 :名無しの正気:2025/06/25(火) 16:15:16.98
格闘家wwwww
ないない、あれネタ職だぞ。スキルも魔法もないとかゴミだろ
10 :名無しのフレーム厨:2025/06/25(火) 16:15:44.02
それがマジなんだよなぁ……
観戦AIが「格闘入力成功率94%」って叫んでた。
こっちは冷静に画面凍ったわ
11 :名無しのソウルランカー:2025/06/25(火) 16:16:11.24
え、ソウル開花してたってこと?
格闘家のソウルスキルってなんかあんの?
12 :名無しの魔導士:2025/06/25(火) 16:16:30.33
つーか誰だよマジで
名前「R・K」って出てたけど、聞いたことなくね?
有名プレイヤーじゃないっぽい
13 :名無しの考察班:2025/06/25(火) 16:16:47.19
→ R・K = Rising Kaiser じゃね?
格ゲー界隈でそういうタグの奴いたって聞いたぞ
まさか本職がVRに流れてきたのか……?
《SYSTEM:BOSS「ウルフキング」を撃破しました》
《あなたの入力精度・技術により「観客AI:超HYPE状態」へ移行しました》
《新たなスキルが開放されます:ソウルスキル《空間読解》取得》
《称号:「無謀なる新星」付与》
《限定アイテム:「獣王の牙」獲得》
「……おお、マジでくるのか」
俺は呟くと、そっと拳を見下ろした。
まるでその手が、何かを掴み取った証みたいに――まだ熱を帯びている気がした。
空間読解。
戦闘中の微細な間合い、敵の意識の流れ、視線の揺らぎ。
それらを“読む”補助機能らしい。言い換えれば、**格ゲーで言う「相手の次の行動を感じ取る感覚」**をシステムで後押ししてくれるようなものだ。
「まるで、今まで培ってきた“感覚”に、名前がついたみたいだな……」
嬉しい、を通り越して、少しだけくすぐったかった。
「称号、“無謀なる新星”……なんか、らしいっちゃらしい」
もらった報酬アイテムのひとつ、《獣王の牙》は装備すると通常攻撃が“重撃属性”になるという破格の性能。
それを軽く回して試しながら、俺はひと息ついた。
「――拳で、何とかなりそうだな」
ふと、そんな言葉が漏れる。
すぐに、
「いや、なんか言い方が脳筋っぽいな……」
と、独りごちて苦笑した。
でも実際、そう感じた。
剣も、魔法も、この世界では主流かもしれない。
けど、読み合いと技術があれば、“拳”でも勝てる。
それをこの手で証明できた。
それが何より、嬉しかった。
* * *
「――戻ってきたぞ、ファンタズマ拠点都市《グラント=レイヤー》」
街のゲートが開くと、にぎやかなログイン音と共に人々の声が重なる。
ギルドの勧誘、露店の売り込み、観戦者の噂話――。
賑わいと喧騒が入り混じるこの拠点都市は、さながらプレイヤーたちの“戦いの起点”だ。
街角で売っていた焼き串(※自動再現嗅覚つきVRフード)を一本買って、
軽くかじる。
「うま……やべ、これで飯テロされたら現実戻れねぇな……」
などと心の中でツッコミながら、空いてる宿を一件見つけてチェックインした。
個室は思ったより静かで、木目調の内装が妙に落ち着く。
ベッドに転がる。
ふう、と息を吐いた。
「……なんか、めちゃくちゃ疲れたな」
戦ったのはゲームの中のこと。
でも体を動かして、集中して、読み合って、ぶつかって――
現実の格ゲー大会でも味わえなかったほど、**“全身を使った駆け引き”**があった。
これまでとは違う。
でも確かに、俺が求めていた“格ゲーの延長線”があった。
「この経験、絶対今後に繋がる……」
VRだろうとなんだろうと。
“拳”で道を切り拓くことに、何の違和感もない。
そう断言できるだけの何かが、自分の中に根づき始めていた。
窓の外に広がる、幻想世界の夜景を眺めながら――
俺は、そっと目を閉じた。
明日は、どんな“読み合い”が待ってるんだろうか。