表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/13

004,読み合いは得意です、か……

「逃げなきゃいい――真正面から叩き潰す!」


踏み込む。

あえて相手の間合いへ。

ステップじゃない、回避じゃない、“前進”だ。


ウルフキングの眼光が鋭く光った瞬間、

こちらの“選択”を見誤ったとでも言うかのように、

奴の体勢が一瞬、揺らいだ。


《敵AI:状況読み違え発生 → 対応遅延フレーム発生中》


来た――スキが生まれた!


「迅雷拳ッ!!」


《→ ↓ ↘ + P》

拳が奴の顎を打ち上げる。


バシュンッ!!

空中に浮いたウルフキング。


「浮いたな……なら、繋げるぞ」


→ → + P(前ステ)

↓ + K(足払いフェイント)

↘ + P(追撃)

↗ + K(ジャンプ追撃)


《コンボ成功率:84% → スキル連携ボーナス発動》

《HYPEゲージ上昇中》


背後で、観戦AIギルドの歓声が走る。

《実況AI:「おおっと! 雷牙選手、ここで魂の空中拾いィィ!!」》


「まだだ、落とすな――」


《→ ↓ → + K》

「“雷脚穿破らいきゃくせんは”!!」


一撃。

まるで雷が落ちたようなエフェクトが空中に走る。


ゴゴゴゴゴ……!!


ウルフキングの身体に亀裂が走る。

空中で硬直したまま、奴が呻く。


《敵HP:残り6%》

《リーサル可能圏内突入》

《ソウルバースト条件満たす》


雷牙は一瞬、静かに目を閉じた。


(あのときの……あの読み合いの感覚)


「思い出せ、“仕込み”のタイミングを……」


静かに、構える。


《↘ ↓ ↙ ← + P》

《↘ ↓ ↙ ← + K》

《→ + P》

《同時押し入力:L+R》


コンマ秒単位の正確な動作。

それは格ゲー全国大会の頂点で磨き上げた、“魂に刻んだ”流れ。


拳に、“気”が集まる。


《ソウルスキル《崩天覇断拳ほうてんはだんけん》発動条件達成》

《演出:演武モード移行中》


「これで……リーサルだッ!!」


拳が突き出された瞬間、視界が白く染まる。


空が割れたような演出。

大地が拳を中心に爆ぜるようなエフェクト。


直撃したウルフキングが、真上に打ち上げられ、

そして、雷光に貫かれながら地に叩きつけられた。


《ボスHP:0%》

《BATTLE CLEAR》

《プレイヤー“R・K”:初撃破ボーナス獲得》


静寂。


ウルフキングの巨体が、蒸気のように崩れていく。

残るのは、拳を前に出したまま、荒く息を吐く自分だけ。


「……通った、か」


手が震えていた。

汗もVRの外でびっしょりだった。

でも、この感覚こそが格ゲーだ。


“読み勝って”“通して”“倒す”。


魔法もスキルボタンもない。

だがそれでも、勝てる世界がここにはある。


《観戦AI実況:「これは……やばい、やばいぞ!! 開始30分の初心者プレイヤー、ソロでウルフキングを初撃破!!」》

《観戦AI解説:「しかもこの手数、格闘コマンド完全成功率94%……“入力の鬼”だ……!!」》


ログイン直後の俺に向けられる、観戦席からのスタンディングオベーション。


だが――雷牙はひとつ、静かに呟いた。


「……まだだ。まだ全然、動きが鈍い」


その瞳は、すでに次の“読み合い”を見ていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
面白い
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ