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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

欲望の代償

作者: 義母

夏の終わりの公園で、りさという女性と健という男性が再会した。二人は互いを見つめ、しばらくの間、静かに観察し合っていた。


健は、りさの涼しげな表情と美しい髪に魅了された。「お姉さん、お久しぶりです。相変わらず美しいですね」と丁寧に言い、りさに近づこうとした。彼の心臓は興奮で早鐘を打ち、手が震えていた。


りさは冷静な態度を保ちながら、健の姿に興味を示した。「あら、健。随分と成長したわね」


健は慎重に近づきながら答えた。「はい、お姉さん。僕、頑張って立派になろうと思ったんです」彼の目は熱に浮かされたように輝き、りさの体を上から下まで見つめていた。


りさは冷たい目で見つめながら言った。「そう。でも、私はお腹が空いているの。一緒に食事したいなら私におごりなさい」


健は驚いて後ずさりしたが、同時に興奮も感じていた。「え?おごるんですか?それは今財布がカツカツで...でも、お姉さんと、その、…デートしたいんです」彼の声は震え、顔は赤く火照っていた。


りさは無表情で言った。「そう。私におごる気がないなら、じゃあ帰りなさい」


健は迷いながらも、りさの魅力に引き寄せられていた。彼の心臓は激しく鼓動し、りさに近づこうとしていた。「お姉さん、僕...僕、お姉さんと…」


りさはため息をついた。「ほんと、男って下心でものを考えるのね」


健が返事に困っている様子を見て、りさは急に怒り出した。「そんなに女におごりたくないなら、男が自分で料理すればいいのよ!あなたたち男は家事の大変さを知らないから、こんな身勝手なことが言えるのね」


健は驚いて言葉を失った。りさの怒りの爆発に、彼は自分の立場の弱さを痛感した。


りさは冷静さを取り戻し、冷たく言った。「ごめんなさい、健。でも、これが社会の現実なの」そう言いながら、りさは健の腕を素早く掴んだ。その動きは予想以上に速く、健は反応する間もなかった。


健は必死に抵抗した。「や、やめてください!お姉さん!」彼は腕を振り回し、りさの掴みを逃れようとした。しかし、りさの握力は想像以上に強く、健の抵抗も虚しかった。健は全身を震わせ、必死にりさの腕から逃れようとしたが、それは無駄な努力だった。


りさは無表情で言った。「無駄よ、健」そして、健の財布を取り出し始めた。りさの手は素早く動き、健の財布からお金を取り出していく。健は悔しさに悶え、抗議の声を上げた。


健は悔しさに悶えながら叫んだ。「やめてください!それは僕のお金です!お願いです!」しかし、りさは構わず、次にクレジットカードに取り掛かった。りさの指は容赦なく健の財布を探り、カードを取り出していく。健の抗議の声は次第に弱々しくなっていった。


財布を奪われた健は、抵抗できなくなった。りさは顔を近づけた。「最後に言いたいことはある?」とりさが尋ねた。健の顔は真っ青で、体は震えていた。


健は震える声で答えた。「お姉さん…僕は…本当にお姉さんが好きです…」彼の声は弱々しく、息も絶え絶えだった。


りさは一瞬躊躇したが、すぐに冷静さを取り戻した。「ありがとう、健」そう言って、彼女は健の顔を見つめ始めた。まず目から、次に鼻、そして頬へと順番に視線を移していった。健の表情が硬くなる様子が見え、汗が流れ落ちた。最後に唇に到達すると、りさは少し悲しげな表情を浮かべた。「これが最後のキスね」とつぶやき、健の唇にそっとキスをした。


りさがキスを終えたとき、予想外のことが起こった。キスされた健の体が、突然激しく動き出したのだ。その動きは明らかに抱擁を求めるものだった。健の体は震え、りさに向かって必死に手を伸ばそうとしていた。


りさは驚きと嘲笑を込めて言った。「まあ、見てごらんなさい。お金を取られてもキスされても抱きつこうとするなんて...男って本当に下心しかないのね」


りさは健のその無様な様子を興味深そうに観察していた。「自制心がないのね。かわいそう」とつぶやいた。そして、少し考え込んだ後、ため息をついた。「でも、これも社会の現実。最後くらい満足させてあげましょう」りさは静かに言った。「それに...私も健からお金をもらった以上、健の気持ちに応えてあげなきゃ可哀想だしね」そう言って、りさは健の体を慎重に抱きしめた。


りさは黙々と健の体を抱きしめていった。胸元、そして背中へと。健の体は少しずつリラックスしていった。筋肉の緊張が解け、りさはそれを一つずつ丁寧にマッサージしていった。それでも健は抱擁が続く限り、りさの体に寄り添い続ける。健の体は震え、最後の力を振り絞るかのように動いていた。


最後に、りさは健の顔に到達し、健の頬に優しくキスをした。しかし、驚いたことに、キスされただけの健は必死に抱きつき続けていた。それは愛情の強さを示すかのように、激しく体を寄せていた。


りさは呆れながらも、少し面白そうに笑みを浮かべた。「まあ、見てごらんなさい。お金も取られて、キスもしたのに、まだ抱きついてくるわ。」


健の残された体は、本能的に動き続けて、りさを抱きしめた。しかしその抱擁はりさの心には届かず、虚しく空中をつかんでいるようだった。りさはその無様な様子を見て、クスリと笑った。「バカね、私の心はそんな簡単には掴めないわよ(笑)」


りさの手には、健の財布がまるで戦利品かのように握られている。その戦利品をポケットにしまう前に、りさは一瞬躊躇した。財布は依然として重く、中身の存在を示していた。


「これを使えば、健との最後の繋がりも消えてしまうのね…」りさは静かにつぶやいた。彼女の目に、一瞬だけ悲しみの色が浮かんだ。


りさは深く考え込んだ。「もし男に欲がなければ、男がお金を惜しまなければ、こんな悲しい結末にはならなかったのかもしれない。でも、それは同時に、私たちが出会うこともなかったということ…」


彼女は苦笑した。「皮肉なものね。男の欲望が、私たちを引き寄せると同時に引き裂いていく。この残酷な社会の現実…本当男ってバカな性別…」


「さようなら、健。あなたの愛情、そしてお金をありがとう」そう言って、りさは健の財布をゆっくりとポケットに入れた。財布が服のポケットに収まる感触に、りさは一瞬身震いした。


りさが健の財布をポケットに入れた瞬間、それは最後の重みを感じさせるように深く沈んだ。りさは驚きの表情を浮かべ、健の残ったコインが財布の中で音を立てるのを感じた。指に冷たい金属の感触が広がり、りさは思わず目を見開いた。その瞬間、りさは自分の行為の残酷さを痛感した。健の財布は、生活の証として最後まで抵抗しているかのようだった。りさは、健の苦労と絶望を想像し、一瞬だけ躊躇した。


しかし、社会の現実に従う彼女は、その感情を押し殺した。コインの一部はりさのポケットから転がり落ち、足元まで転がり、さらには地面にも達した。りさは、自分の周りに広がる健の最後の痕跡を感じながら、複雑な表情を浮かべた。


「まあ…最後まで健気だったのね」りさは静かにつぶやいた。彼女は足元に落ちたコインを拾い上げ、ポケットに残ったお金を丁寧に財布へと戻した。「これであなたの全てを受け取ったわ、健」


りさは満足げに深呼吸をし、静かに公園を後にした。「ありがとう、健。あなたの犠牲により、私の生活が少し楽になるわ。そして、あなたの一部は永遠に私の中に生き続けるのよ」


公園には、健の落胆した姿だけが残された。これが、現代社会の過酷な人間関係の循環なのだ。しかし、その中にも深い愛情と哀愁が隠されているのかもしれない。そして、この悲しい関係性は、男性の欲望という本能によって永遠に続いていくのだろう。

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