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破滅確定の中ボスに転生しましたが、死にたくないので主人公よりも強くなってやります!  作者: りんご飴ツイン


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間話 ミーシェ=フェイについて その三


 ミーシェ=フェイは中ボスとして死ぬ。

 リルに殺される。

 だけどストーリーが始まるのは十四歳から、つまり二人が出会った時にはストーリーは始まってすらいない。


 それでいて『知識』を思い出す前には二人は幼馴染みとして出会っていた。この邂逅それ自体は『知識』によるイレギュラーではなく、ストーリーに沿った既定路線なのだ。


 ストーリーでは『ある出来事』を経て二人は離れ離れになる。


 そしてリルは『四つの災厄』の一角である第一の騎士を倒したことで勇者──かつて『四つの災厄』やラスボスを封じて世界を救った『初代』から受け継がれる称号を得た。


 そこでミーシェとリルは再会する。

 勇者として有名になったから見つけることができたと、大好きな幼馴染みと再会できて嬉しいと、そんなことを言いながらミーシェは早々に裏切る。


 騙し合いでリルを殺そうとして、失敗し、逆に返り討ちにあって、そして最後には逃げ出すも一人で野垂れ死ぬ。



 ──あっはははっ! 無様ね、リル=スカイリリスっ。勇者? 今、ここで! 私に殺される奴が世界なんて救えるかっつーの!!


『FBF』、ゲーム内のミーシェがリルを裏切った動機。


 ──昔から私はアンタが大っ嫌いだった


 それは『知識』に、ある。


 ──う、ぐうっ! こ、この私がリルに負けるなんて……()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()!!


 その最後の言葉が全てだった。

 ミーシェ=フェイ。転生者としての『知識』があるからこそ本来ならリルと離れ離れになってから思い出すべき記憶を『ある出来事』よりも前に知ることができていた。



 ーーー☆ーーー



 ミーシェ=フェイは人間ではない。

 正確には人間と魔族の遺伝子を掛け合わせ、人為的につくられた生物──魔人である。


 そもそも魔族とは遥か昔に人類を滅亡寸前にまで追い込んだ超種族であり、二足歩行でありながら人間と違ってツノや鋭利な爪をもつ異形である。


 人間よりも遥かに強靭で自然治癒力も高く、膨大な魔力とそれを効率的に扱う高度な魔法技術をもっており、そして何より自身の力を武具の形で抽出して魔法を超えた超常現象を引き起こすスキルという種族固有の能力を持っていた。


 魔族自体は『遺産』──つまり自身の超常の力を武具の形で顕現させる魔族のスキルを人工的に模倣した『遺産』によって逆に滅ぼされたが、血肉は死体として残っていた。


 そこからある『遺産』を使って遺伝子情報を抜き取り、人間の受精卵に混ぜ込み、魔族の力と人間の外見を併せ持つ生物兵器を作り出そうという計画の被験者がミーシェだったのだ。


 魔族を復元するのでは魔獣のような異形を排斥する人間至上主義のスカーレット教が広く受け入れられている今の時代では都合が悪い。人間の外見であればその中身がどれだけ異形でも排斥されることはない。


 後は『気』さえも使えるのならば普通の魔族よりも強い生物が出来上がるのではないか。そんな期待もあった。



 実際はそもそも生誕する前に自壊するのが大半で、人間の形で生まれた者も生後何ヶ月かで死ぬのがほとんどだった。



 ミーシェ=フェイ、四歳。

 その時点で彼女と同じくらいの年齢の被験者が他に数人だけ。それでも奇跡という他ない結果だったのだが、実際に出来上がった魔人たちはスキルはおろな魔法や『気』も満足に扱えなかった。


 まだ幼いから、というのもあっただろうが、人間と魔族の遺伝子が混ざることで中和でもするように互いの力が弱まっているのではないか。ミーシェたちの身体を調べていた科学者はそんなことを吐き捨てた。それを裏付けるようなデータでもとれたのかもしれない。


 四歳。

 そこまで成長するのが奇跡だとわかっていながら、簡単に切り捨てられた。


 みんな殺された。

 ミーシェが最後に残ったのは単に偶然だ。そういう位置にあっただけで。


 ミーシェは生き残った。

 殺される寸前で人体実験という違法な研究をしていたその場所に正規の軍が攻め込んだのだ。


 その混乱に乗じてミーシェは逃げて、やがて力尽きて、そしてリルたちに拾われた時には記憶を失っていた。


 辛い記憶に蓋をして。


 これは『知識』だ。ミーシェが実際に思い出したのではなく、あくまで『FBF』内での話だ。それでもそのムービーを思い出すたびに胸が締めつけられる感覚がその『知識』は偽りではない証拠だった。



 特別になるはずだった。

 特別であれと望まれていた。

 特別な存在であればみんなは殺されなかった。



 そんな想いがゲームの中のミーシェを裏切りに駆り立てた。よりにもよってかつて誰よりも近くにいた幼馴染みが特別になっていくのが妬ましかったのだ。


 どうしようもなかった。

 ゲームの中のミーシェ自身どうしていいかわからなかったはずだ。


 八つ当たりだとわかっていて、それでも自分でも何を望んでいるかもわからなくなっていて、だから大切な思い出を自分の手で踏み躙った。


 今のミーシェは『知識』という反則で過去の記憶を知っている。


 つまりこの過去を乗り越えることさえできれば、リルに殺される未来は回避できる。



 なんだ、そんな簡単なことなのかと拍子抜けだった。



『知識』の中のミーシェがどうであれ、今のミーシェはリルのことを大切な友達だと思っている。


 過去の出来事は辛く、救いがなくても、その気持ちをリルに叩きつけるような真似はしない。


 これからもリルと一緒にいるために。

 そんな幸せのためであれば。


 ただし、いくらミーシェについては思い出せていても、ストーリーの全てを思い出したわけではない。


 抜け落ちている『知識』の一つ。

 そもそもリルとミーシェが離れ離れになった『ある出来事』についてはその頃の彼女は思い出せていなかったのだ。



 ーーー☆ーーー



 リル=スカイリリスは明るく元気なキャラではあるが、あまり外で駆け回るのは好きなほうではない。


 ミーシェが特訓とか何とか騒ぐことがなければ、友達と遊ぶのは家の中でのほうが好みだ。


 だけどリルにとっては外でも家でもどちらでもよかった。


 ミーシェと一緒にいられればそれだけで幸せだったから。

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