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短編集  作者: 夕暮れ
8/14

TS少女の苦悩

 緊張する。この二ヵ月ずっとリハビリをしてなんとか歩けるくらいには回復したけどまだ足がおぼつかないから車いすに乗って家に帰る。


 後ろにはこの二か月間つきっきりでお世話をしてくれたお母さんがボクの車いすを押してくれている。


 あの日小さい女の子を暴走した車から助けたのはいいけどボクまでは助からなくて、車に轢かれてしまった。


 病院に運ばれたボクは大変な状況だったらしい。はねられた後何mもひきずられて生きているのが不思議なくらいだったらしい。


 そんな状況だから当然助かる見込みなんてなかった。でも運ばれた病院では運の良いことに?ーこんなこと言ったら失礼だよね?-身元不明の植物状態の少女の身体があった。


 ボクが生き残る道。それは少女との脳移植だった。急いで駆け付けたお母さんがそれに同意して成功確率が決して高くなくむしろ失敗する可能性の方が高い手術を受けて奇跡的に成功した。


 そうしてボクは少女の身体を手に入れることによって生き続けることができた。


 それから戸惑うことしかなかったけど家に帰ることを目標として頑張った。一番辛かったのはやっぱり男の時には気にしなくてもいいことを気にしなくちゃいけなくなって、歩き方とか所作を直すのが一番だった。


 そして今日やっとボクは家に帰れるようになった。


 やっと自分の居場所に帰ってこれた。それだけで嬉しい。


 でも不安もある。それはボクの身体は他人のものだから家族と思ってはくれないんじゃないかってこと。


 そう思われても仕方ないって思ってる。だって外見も中身も他人。脳だけがボクのまま。こんな歪な存在のボクを受け入れてくれる?


 ガチャリとお母さんドアを開けて先に家に入る。後ろから見てるとドタバタとした音が聞こえた。


 この時間だからいるのは双子のお姉ちゃん2人かな?(ゆき)ねぇと(しずく)ねぇがお母さんといろいろ話している。


 するとお母さんがこっちを向くとボクに向けて手招きをしてこっちに来るようにいわれた。だからボクは自分の力で車いすを進めて家に入る。


「雪、雫ごめんなさい。霧斗(きりと)を助けるためにはこれしかなかったの。身体は霧斗じゃなくなちゃったけど中身は霧斗だから安心して?霧斗の身体はなくなっちゃたけどこの子はたしかに今日帰ってきたわよ」


 お母さんが申し訳なさそうにボクを見せながら言う。


 雪ねぇと雫ねぇは茫然としてただ立っている。


 それもそうだよね。弟が事故にあって死にかけて、なんとか助かったけど蓋を開けてみれば外見も性別も変わるという信じられない状況になってる。これを信じろっていう方が難しいよね?


「無事、に、帰って、これ、なくて、ごめ、んなさ、い」


 ボクが声をだすと雪ねぇも雫ねぇも悲しそうな、何が起きてるか分からず困惑している表情を浮かべる。


「........して。........返してよ」


「雪?」


「ねぇ返してよ!!霧斗はどこにいるのよ!!この子は霧斗じゃない!!!違う子よ!!この子が霧斗であっていいはずがない!!ねぇ私たちの可愛い弟を返してよ!!あんたみたいな偽物じゃなくて本物の霧斗を返してよ!!!」


「雪、落ち着いて!!」


「落ち着けるわけないじゃない!!雫は信じれるの!?この子が霧斗だって!!意味分かんない!分かりたくない!!...........ねぇ雫?お母さん?霧斗はどこにいるの?私の大切で可愛くて最愛の弟はどこにいるの?」


 雪ねぇが膝から崩れ落ちて大声で泣き始める。それを雫ねぇが抱きしめて慰めてる。


「私だって........私だって信じたくないよ!!最愛の弟なんだから悲しいに決まってるでしょ!!でもこれが本当の話なら一番辛いのは目の前にいる霧斗なんだから!!......だから私は今は何も言わないよ?.............お母さん少し二人で頭を冷やしてくるね?霧斗本当にごめんね。お姉ちゃんも頭の中がグチャグチャでよく分からないの。だから頭の中を整理して、落ち着いて、現実を見れるようになったら戻ってくるから。だからまた後で話そうね?」


 そう言って雫ねぇは雪ねぇを連れて二階に上がっていった。


 辛くないよ、傷ついてないよ、だから大丈夫だよって言えば嘘になる。正直にいえばものすごく辛い。心が張り裂けそうなくらい辛い。


 でも覚悟はしてた。


 もう俺はボクなんだから。これまで生きてきた霧斗は死んで新しく霧雨(むう)として生きるって決めたから。


「お母、さん。ボク、少しだ、け、外に、いる、ね?お姉、ちゃん、達と、ボク、が顔、を、合わせ、たら、お姉、ちゃん、達の、考え、が、まとま、らない、から」


「それならお母さんも一緒に行くわ」


「お、母さん、は、おね、えちゃ、ん、達の、そばに、いて、あげ、て?」


「あの二人なら大丈夫。それよりもお母さんは霧斗のことを、霧雨ちゃんのことを一人にさせるのが怖いの」


「そ、う」


 お母さんはそういうとドアを閉めてカギをかけて近くの公園に行くためにボクの車いすを押してくれる。


 雪ねぇと雫ねぇならちゃんと立ち直ってくれるって信じてるから。


 だから頑張って!!ボクも頑張るから!!!

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