2人きりの世界
あぁ、人間ってなんて醜い生き物なんだろう。
今僕達の目の前で行われているのは、僕達の両親が事故死したから、その遺産を引き継いだ僕達を誰が引き取るかでもめている。
「うちで引き取る!!これは決まってることだからな!!」
「いいやうちよ!!あなた達だって私のところで生活する方がいいわよね!!」
うるさいうるさいうるさい!!黙ってくれ!!
誰も僕達を見てない。見ているのは僕達が持っているお金だけだ。
もう誰も信じられない。信じたくない。僕達にだって意思がある。なのにこの大人達はそれを全部無視する。
誰がこんな奴らのとこに行くか。僕達は僕達2人だけで生きていく。誰にも頼らない。
生活に不自由しないくらいにお金はある。僕達が大学を卒業するとしても余るくらいにある。
家事は昔からしてきたからなんてことない。
勉強だってできるから問題ない。
もうこんな大人達なんて知らない。僕には姉さんさえいればいい。
そういえば姉さんはどうしてる?........さっきから俯いているけど、もしかして体調悪いの!?だったら早くここから出て行こうよ!!
ん?あれ?顔を上げた。良かった。なんともなさそう。でもあの顔と雰囲気から相当怒ってるね。みんな姉さんに怒られればいいんだ。
「いい加減にして!!どうせあんた達は母さんと父さんのお金が目的なんでしょ!!」
「い、いやそんなことないぞ」
「そ、そうよ。私達はあなた達のことを思って」
「だったらほっといてくれない!!!私と玲はあんた達の助けなんかいらない!!」
「それは無理だろ。お前達はまだ中学生で子供だ。だったら保護者が必要だろ。だから俺がなってやるって言ってるんだ」
「そうね。あなた達2人だと不便だから私が保護者になってあげる。安心しなさい。そこの人のところに行くよりかは私のところに来たら幸せになれるわ」
「ふざけないでよ!!!私達をなめないでくれる!!私達はお父さん達からいろんなこと教えてもらってるんだからね!!!経営論から家事。書類の書き方だって知ってるんだから!!だからあんた達なんて必要ない!!」
「な!?」
「嘘っ!?」
「これで分かった!?私達にはあんた達なんていらないから早く出て行ってよ!!」
「い、いいやまだ玲の意見を聞いてないぞ」
「そ、そうよ玲君はどう思ってるのかしら?舞ちゃんが勝手に言ってるだけでしょ?」
僕の意見?姉さんがそれでいいなら僕はついていくだけ。それが僕の意見。
「姉さんと同じだよ。あなた達なんていらない。だから出て行け。」
今まで出したことのないような威圧感の篭った声が出た。
こいつらなんていらない。僕には姉さんがいればいい。
この日はこれで終わった。当分は口を出してこないだろう。姉さんこれでいいんだよね?僕達一緒に居られるよね?
この日は2人で一緒に寝た。お父さんとお母さんがいなくなったって、夜寝る前に実感してしまった。僕も姉さんも泣いてしまった。
これで僕達はもう引き返せないところにいる。お互いがお互いに依存している。
僕はもう姉さんなしでは生きていけない。多分姉さんも同じ。僕なしでは生きていけない。
他人なんてどうでもいい。姉さんが笑って過ごせるならそれでいい。
翌日僕達は登校する。その時にはもうお互い離れられなくなっていた。お互いが愛し合っていると確認しないと、気持ち悪くなってくる。
僕と姉さんは手を繋いで歩いていく。学校に着くと僕と姉さんの友達だった人から何か言われるけど、関係ない。
「私は玲さえいればそれでいい。もうあなた達なんてどうでもいい」
「僕も姉さんさえいればそれでいい。姉さん以外は全員敵だ」
これが僕達が出した結果だ。
後悔はない。2人だけの世界。それが僕達が目指す世界となる。
姉さん僕達狂ってる?でも狂わせたのは誰だろうね?
醜い大人のせいで僕達は変わってしまった。
他人のせいで変わってしまった。
でも変わって良かったと思う。だってもうこれ以上裏切られないから。姉さんは絶対に僕を裏切らない。もちろん僕だって絶対に裏切らない。
「姉さんこれからも愛し合っていこうね?」
「そうね。私達には愛がある。だからどこまでも愛し合える。でも愛がない人はどうでもいいよね」
あぁ人間ってなんて醜いんだろう。もうこれ以上そんな姿は見たくない。
「「これからもずっと一緒だよ玲/姉さん」」






