依存、そして叶わない願い2
「アリス!私の可愛い可愛いアリス!!」
またかよ.......。不思議の国のアリスごっこが本当に好きなんだな..........。
それにしても何があった?今日は気分転換に1人で森に来てたんだが......。そんな急ぎの用事なんて絶対存在しないはずなのにな。
まぁいいや。
「ローディス!俺はここにいるよ!」
「いた!!!探したんだからねアリス!!!」
走ってきたローディスこと我が姉。
身内贔屓なしでも恐ろしいくらいに容姿が整ってる。まぁ容姿が整っていない人間なんて存在もしてないけど、それでも姉さんは飛び抜けてる。
俺?俺は、まぁ普通だと思う。姉さんからは世界で一番カッコいいと言われてるけど身内贔屓だと思うしな。
それよりも、走ってきたローディスだったが、服装が変。
変というよりは珍しい。
だって約300年前になくなった学校の制服を着てるからな。
真っ白で穢れを知らない無垢なセーラー服。今の暖かい季節にはちょうど良い色の制服だよ。
「ねぇ見て見て!可愛いでしょ!!!今日の朝やっと完成したんだ!!!」
最近部屋に篭って何かしてると思ったらセーラー服作ってたのかよ。
まぁもう廃れたものだから、滅多に買えないものだから作るのも分かるけど、完成度が高い。
「どう!?このスカートのプリーツ結構大変だったんだからね!!!!!」
そういってその場でくるっと回転する。それに合わせてスカートも回る。
控えめに言ってめちゃくちゃ可愛い。姉さんじゃなかったら告白してるレベル。
まぁそもそも大好きな姉さんが可愛い服を着てるっていうのが刺さってるだけで、これを姉さん以外が着てるって考えると.............うん、その人なんてどうでも良いや。
姉さんが着るから価値があるだけで、姉さん以外が着ても価値を感じないな。
「もう!さっきから見てばっかりで何も言ってくれない!!!何か感想は!?この可愛いお姉ちゃんに何かないの!?!?」
「すっごい綺麗だよローディス。可愛いし綺麗。ローディスの黒髪にすっごいあってるよ」
「でしょ!?すっごい可愛いでしょ!!」
「うん。服もだけど、可愛いローディスが着るから余計に可愛く見える」
「そ、そこまで言ってとは頼んでない!!」
照れる姉さんも可愛いな。
あぁ、神様は残酷だ。俺たちは成長という変化を取り上げられたから、永遠にこの姿のまま。
俺とローディスは永遠に15歳のまま。
高校生になれなかった、まだまだ子供っぽい見た目。
近い将来着るはずだった高校の制服を着れなかった年齢のままなんだから。
「ねえアリス?アリスも制服着てみない?学ランも作ったし、今ブレザーの制服も作ってるんだ。作れたら一緒に着よ?お揃いの制服姿で色んなところに行こ。街中でも山でも海でもどこでも。制服デートってやつをやってみようよ」
いいなそれ。制服デート。
今までしたことがないからすごい新鮮だ。この感じは大体100年ぶりか.......?
すっごいワクワクしてきた。久しぶりに感情が昂ってる。
「いいねローディス。一緒に制服デートをしよう。思い出に残ることをいっぱいしよう。カメラも持って、今しか見れない光景を残そう」
「うん。アリスならそう言ってくれるって思ってた。それじゃあ一回家に帰ろっか。そして着替えてまたここに来よっか」
そう言って手を差し伸べてくれる姉さん。
いつもこうやって俺に手を差し伸べて行く先を示してくれる。
本当は俺が姉さんに手を差し伸べたい。でもできない。
可愛い弟に手を差し伸べるのはお姉ちゃんの特権なんです!って毎回言ってるけど、嘘に感じない。
手を差し伸べて欲しい時にいつもしてくれる。
隠してても姉さんにはすぐバレる。バレて叱られる。
俺だって姉さんが困ってる時には手を差し伸べてきた。でもそれは姉さんが助けてって言った時だけ。
俺から気づけたことは一回もない。
だから今度こそは、と思うけどダメ。むしろ毎回姉さんに助けられる。
今日だってそうだ。俺を元気づけるためだけにこんなことをしてくれてる。
だから姉さんが差し伸べてくれている手を拒むことはできない。
姉さんの手をゆっくり握る。
「ありがとう姉さん。大好きだよ」
「どういたしまして。私も大好きだよ」
あぁ.......。やっぱり好きだな。だからこの気持ちは隠しておかないといけない。
今のこの穏やかな日常を壊したくないから。
でも溢れてくるから仕方ないよな。
大好きだよ、姉さん。