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短編集  作者: 夕暮れ
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めぐりめぐった幸せ

 はぁ、またか。「俺の」自我があるってことはそういうことか.........。


 今世の「俺」は女か........。さぁ今回はいつ「あいつ」に会えるか。


 ん?何言ってるか分からない?そりゃそうだろう。だって俺にだって信じられないんだから。でもなこれは現実として実在する。信じなけりゃいけないだろう。


 そうだ「俺」の名前言ってなかったな。水無瀬海斗(みなせかいと)だ。そして「私」の名前は魅雨(みう)。なぜか下の名前は固定されている。


 なになに?なんで男と女の名前があるかって?そりゃ転生してるからだよ。それも何度もな。


 じゃあその話をするか。


 1番古い記憶だと俺は水無瀬海斗で普通の高校生だ。そして彼女がいた。名前は宮園優梨(みやぞのゆうり)


 小学校の頃からの付き合いだ。いわゆる幼馴染っていうやつだな。


 いろいろ省くが、俺と優梨は仲が良く、高校1年の時に俺が告白して付き合うようになった。


 けどな高校2年の時に事件が起きた。その日は休日で2人で遊びに出ていた。


 2人で手を繋ぎながら歩道を歩いていた。たわいもない話をしながら楽しんでいた。


 すると突然クラクションの音が鳴り響いた。気づいた時にはもう遅かった。暴走した車がこっちに突っ込んでくるのが見えた。


 どうやっても間に合わない。でも隣にいるこいつだけは守りたい。だから俺はこいつを抱きしめて後ろを向く。


 そして跳ね飛ばされる。その時に俺は残った力を振り絞って俺が下になるように体をひねる。


 地面に叩きつけられた時俺は、全身が痛すぎてもはや痛くなくなっていた。


 泣きじゃくる彼女が見える。あぁ泣くな。お前は笑っていた方がいい。


 不意に背中に温もりを感じた。どうやら俺は抱きかかえられたようだ。


 体の奥底から力が抜ける。自分でも少しずつ体温が下がっていくのが分かる。


 死なないでと言われるが、すまん無理だ。俺のことはどうでもいい。お前は幸せになってくれ。


 笑えたどうかは分からないが、最後に俺は彼女に「幸せに生きろよ」と伝えたところで意識がなくなった。


 これが転生のきっかけになった。


 彼女の強い願いにより、俺は、いや俺たちは転生を2度、3度と繰り返した。時には恋人。時には姉弟。時には兄妹。さらには先輩後輩の関係だった。


 でも俺はそこでも彼女を独りにしてしまう。病気や事故、事件などにいつも巻き込まれる。


 だからこそ?と言っていいか分からないが気づいたことがある。


 まず1つ目は必ず異性になるということだ。なぜかは分からないが、ずっとそうだった。


 2つ目には、俺たちが会えなかった時間×3の時間だけ一緒にいられるということだ。この時、年が上の方に合わせられる。


 例えば俺が3歳、彼女が5歳の時に初めてあったとする。この時彼女側から見て5年会えなかったから×3をする。そうしたら15になる。よって彼女が20歳に、俺が18になるまでは一緒にいられるということだ。


 今の「俺」は15歳の女子高生だ。それも入学したてのだ。


 1年4組が俺のクラスだ。そしてここの担任の名前は水瀬海翔(みなせかいと)。ははっ、もしかしたらなのか?ここまで露骨なのは初めてだよ。


 でもなこれで俺は心置きなくあいつと会える。今までは俺が転生してることはあいつには伝えていない。だってこれを知ったらあいつは余計に自分を責める。俺が何度も死んでいることに。


 だったら伝えない方がいいだろう?.........おっともうそろそろ担任がくるな。


 淡い期待は持っておこう。もし俺の担任があいつだったら俺はちゃんと冷静でいられるだろうか。.........多分いられないだろう。なぜかって?それは会えて嬉しいからに決まっている。


 教室のドアが開く。担任の先生が入ってくる。俺は思わず「嘘......」と声を出してしまう。だって仕方ないだろう。担任があいつだったんだ。


 俺たちは片方が片方を見つけると、なぜかすぐに誰であるか分かってしまう。だからこそ俺は喜んだ。


 詳しい年齢は分からない。でも今世はずっと一緒にいられる。それだけが俺の胸を、頭を占めていく。


 人目なんか気にしてはいられない。


「お兄ちゃん!!.........会いたかったよーー!!」


 泣きながら俺は「彼女」に抱きつく。俺の精神は体に引きずられているから、今の「俺」は女子よりになっている。


 人目は気にしないって言ったけど、それでもあいつの立場を悪くするようなことは言わない。これでも頭が回るんでね!!


「え!?..............魅雨?」


 抱きついた俺を難なく受け止める彼女。むぅなんか慣れてるな。でもいいや。今は大泣きしてやる。その胸を俺の涙で濡らしてやる。


「そうだよ!!!」


「なんで.........?」


「彼女」の頬に一筋の涙が伝う。


「今度こそずっっっっと一緒にいようね!!」


「今度.........こそ?」


「そうだよ!!今度こそだよ!!!」


「ああ.........そうだね。今度こそずっと一緒だ」


「彼女」はそう言って俺を抱きしめ返してくれる。


 2人揃って号泣している。


 周りの生徒は唖然としている。でも関係ない。


 今は、今だけはそっとしておいてほしい。


 やっと巡り合えた奇跡の運命。


 今度こそ「俺」と「彼女」は幸せになれる。


 長く辛い道のりだった。


 でも俺たちはやっと最初から最後まで1つに道が重なった。


 さぁ今までのぶんもふくめて、幸せになりますか。


 覚悟しろよ優梨。


 お前を幸せでいっぱいにしてやる。

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