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99話

一応これで終わったということか…

いや、聞きたいことがあるからな。

まずは勇者を起こすかな。

俺は思いっきりパンと勇者の頬を叩いた。


「これは…」


なるほど、起きるまでにスパンキングの練習でもしてればいいということかな?

そんなアホなことを考えながらも、俺は何度か勇者の顔をたたく。

それによって、ようやく勇者は目を覚ます。


「うん…」

「よ、目が覚めたか?」

「お前は!」

「ま、動くことはできないぜ」

「そうか…俺様は…」


俺は現在ヘンタイの恰好をやめて、普通になっている。

まあ、上半身が裸なので、少し怪しいが…

勇者のことは俺がいつものようにストッキングで縛っておいたので、身動きはとれない。


「ちくしょう…」

「そんなに項垂れるなよ」

「でも、お前は俺様を殺すんだろ…」

「いや、別に俺は殺す気は全くねえよ」

「なんだと…」


確かに殺すのは簡単だろう。

でも、そうなると聞きたいことも聞けないし、あのスタイルがいい女性たちを泣かすことになってしまう。

それは、童貞だからこそ、したくはない。

とりあえずは、聞きたいことを聞いておくか…

俺は、驚いている勇者にむかって言葉を投げかける。


「そういえば、聞きたいことがあるんだが、いいか?」

「ああ…」


ここまで覇気がなくなると、別人のように思ってしまうが、まあいいだろう。

先に話しだ。


「えっと、お前は勇者って言われてるけど、どういうことなんだ?」

「信じてもらえるかわからないが、俺様は違う世界から召喚されたんだ」

「なるほどな、その召喚っていうのは?」

「勇者の神殿というものが、各地にあって、そこから勇者を召喚できると聞いた。俺様はその一つから来たんだ」

「そういうことか…」

「ああ、召喚された後は普通に何人かの聖女や騎士を紹介されて、そこからは普通に冒険を始めた」

「それで、ここまで来たってことか」

「ああ…」

「それじゃ、もう一ついいか?」

「なんだ?」

「どうして、この世界ではあんなに好き勝手にしていたんだ?」

「それは…」

「うん?」

「いや、どうせ俺様は終わりだもんな、言ったところでいいか…俺様…いや、俺は現実世界でも普通に幸せだった。普通に大学生を楽しんでいたはずだった。それなのに、車で事故を起こした。そっからだよ、俺の人生は転落していった、何もかもな…そんなときに気づけば異世界に召喚されていた。だからそれまでを取り戻すために、俺は好き勝手やったんだよな。本当に、それすらも間違っているってことにまったく気づいてなかったが」

「そうか」

「どうだ?理由が聞けて満足か?」

「そうだな。それで、車で轢いた相手のことは覚えているのか?」

「そりゃ、覚えているに決まってるだろ、それは…あれ?名前が思い出せない?」


なるほどな、名前を思い出せないということは顔なんかも覚えていないということか…

って、なんとなく納得する状況を自分で作ってみたはいいが、よくわからないな。

どういう意味なんだ?

さっきのやつが言っていたことには、俺を殺したのはこいつになっていることから、俺はたぶん交通事故で亡くなったということだろう。

うーん、死んだ瞬間の記憶が曖昧なせいで今一つわからないな。

まさか、そこまでも含めてが何かを暗示していたということか!

いや、ないな。

だって、さっきのやつも言っていた。

誰が一番早く魔王を倒すことができるのかを競うということを…

だから、召喚したこいつも雷スキルがあるからと言っていたな。

あれ?

そうなると、勇者というのはどのあたりからその枠組みになるんだ?

また疑問ができたな。

今はこれ以上考えても仕方ないな。

後で、自称神に詰めるか。

それに、そろそろタイムリミットが近いしな。

遠くから、俺を探す声と、勇者を探す声が聞こえる。

俺はゆっくりとその場から離れようとする。


「おい!」

「なんだ?」

「本当に俺を殺さないのか?」

「は?」

「え?」


何を言ってるんだこいつは…

離れようとしたところで、急に声をかけてくるから、何か重要なことを言ってくれるもんだと期待をしたのに、どうやらそうではなかったらしい。

なんだ、こいつは死にたいのか?


「なんだ、殺してほしかったのか?」

「いや、だってお前…俺はお前を罠にもはめたし、殺そうとしたんだぞ」

「ま、そんなこともあるよな」

「そんな、言葉で済ましていいことじゃねえだろ!」

「何を怒ってるんだよ」

「何をって、お前…」

「そんなことよりも早く俺はここから離れないといけないんだよ」


そうなのだ。

今の服装は、ヘンタイの恰好をしていないとはいえ、服装は上半身が裸だ。

パンツやガーターストッキングがないとはいえ、一瞬でヘンタイの中身だということを気づかれる。

そんなことになってしまえば…

シバルはなんとか大丈夫だとしても、あとの全員はアウトだ。

特に勇者パーティーの女性たちに見られればフルボッコ待ったなしだ。

アイラは加わるだろうし、シバルはそれを見てはあはあと興奮するだろう。

バーバルは…

ドSだと、どういう反応になるのだろうか?

無言でわたくしならこうするって考えるのか?

とりあえず、考えるだけで恐ろしいことが待っているんだ、俺はそんな未来を待ち構えたくない。

だから、ここから離れたいんだ。

それなのに勇者程度の命を絶つために、時間を取られるとか…

意味ないだろう。

よし、さっさと適当な言葉で納得してもらうかな。


「そうだな。お前を殺したところで誰も幸せにはならないだろ?」

「…」

「それに、俺は女性の涙は見たくないんだ。この世界に来てから、女性にはしっかりと向き合ったんじゃないのか?」

「それは…俺はただ、権力を振りかざして…」

「それでも、あれだけ彼女たちから慕われているんだろ、だったら、今度こそ裏切らないように頑張るっていうのはどうなんだ?」

「なんでそんなにお前は優しんだよ」

「優しい?違うな…俺はただお前よりも少し大人で、少し紳士なだけだ」

「そうか…」


決まったな…

俺は最後の言葉で、勇者が納得して項垂れるのを感じた。

これでなんとかここから離れることができるだろう。

後は、吹き飛ばされた場所にさっさと戻って、汚い服を着直せばいける。

確信に近いそれを感じながらも、アイラたちが助けに来るまでの間にどう過ごすのを考えながらも、俺はやっと勇者との一連の騒動に決着がついたかもと安堵したのだった。


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