95話
「起きて!」
「お、おう…○○か」
「おう、じゃないでしょ、こんなところでお父さんからの鍛錬さぼって何をしてるの?」
「いいだろう、別に気なんて感じられないんだから!」
「もう、そういうことは言わないの」
「だってさあ…」
「それなら気の使い方を簡単に教えてあげる」
「だから、それがわからないんだって」
「仕方ないわね…」
そう言われると、少女は隣に座る。
「なんだ?一緒にさぼってていいのか?」
「いいの、あたしは別に気を使えるもん」
「そういうもんかよ…」
俺は少女と二人で草むらの上に座っている。
風で草がなびくことから、それなりの田舎ということはわかる。
でも、ここはどこだったのだろうか?
今は思い出すことができない場所で、俺は自然に身を任せて少女と辺りをボーっと見ていた。
それで気を感じることはできるわけではない。
体の内側にある…
なんてことを言われたって、簡単に感じることができれば、全員が気なんてものを使えるだろう。
普通には感じることができないから気なのだ。
そんな当たり前のことをこの時考えていた気がする。
そうして、ボーっとしていたときだった。
「ねえ」
「なんだよ」
「今日ね、ちょっといい感じの下着を履いてるんだー」
「だからどうしたんだ?」
「見たくない?」
「ばっかやろう、別に見たくねえからな」
「そういうわりにはチラチラ見てるじゃない」
「ばっか、これは生理現象ってやつだ」
「男子ってすぐそういうことを言うよね。ちょっと上着を脱いだだけでもチラチラ見てくるもんね」
「そんなにわかりやすいのか?」
「当たり前でしょ」
「そうか…でもな、下着を見るならもっと年上のきれいなお姉さんがよかった」
「そんなこというなら見せてあげないもん」
「なん…だと…」
「ほら見せてほしいんじゃん」
「ませた子供と言われるかもしれないけど、そうだな」
「少しだけ準備するから、待っててね」
「おう…」
このときからヘンタイだったのかと今更ながらに思いだす。
でも、仕方ない。
当時流行ったことも、女子からは敬遠されている、スカートめくりだったしな…
そんなスカートめくりも、○○にはできなかったな。
確か、学校にはずっとズボンを履いて来ていたはずだからな。
そういえば、今もズボンだったような…
そんなことを考えていると、小さな声が…
「見ていいよ」
「お、おう…」
そうして、そちらを見たときに俺は…
「って、イテテテ…もう少し見ていたかったな…」
さっきまで見ていた夢を頭の中で思い出しながら、俺は全身の痛みで何をしていたのかを思い出した。
そうか、オーガの攻撃で吹っ飛んだったな…
体中が痛いのはそのせいだろうな。
防いでいたけど、ヘンタイスキルが完全に消えたから吹っ飛んだってことだな。
でも、夢のおかげでヘンタイスキルが発動しているな。
ふう…
なんとかいけるか。
【大丈夫なの?】
「ああ、行くしかないだろ」
【無理しないで】
「ぶは!」
【なんで、笑うのよ】
「だってな、お前が召喚して、こういう展開になってるわけだろ、だから無理するななんてかなりお門違いだろう?」
【それはそうね、じゃあ頑張ってきなさい】
「任せろい、ま、その前にしっかりと着替えないとな」
俺はまずは顔にはパンツを被り、頭には猫耳のようにブラジャーをつける。
あとは、昨日もらったこの最強のギブスをつける。
おお、力が湧いてくる。
あとは、武器だな。
ナックルはガーターストッキングのおかげで隠れているので大丈夫だ。
あとはストッキングをスカーフみたいにまく。
上半身を裸になって…
ふ…
「ヘンタイの完成だな」
【なんで、そんなに誇りをもっているのよ】
「それが、ヘンタイというものだからな」
【かっこつけないでよ】
「でも、これで全員を助けることができれば、かっこいいだろ?」
【そうかもしれないけど!】
「じゃ、行くぞ!」
聞こえてくる音の感じからして、まだ戦闘は終わっていないだろう。
だからこそ、俺は行かないといけない。
アイラたちを助けるためにも!
音のほうに向かう途中で周りにゴブリンと、それと戦っている人たちがいる。
「なんだ、あのヘンタイは!」
「なんだと」
「ギャギャ」
俺はゴブリンたちを両手を広げるとラリアットの勢いで突っ込む。
今のヘンタイ力ならすべてを吹き飛ばせるぞ!
その考えの通り、ゴブリンが振るうこん棒から何もかもを吹き飛ばしていく。
そんなやばいヘンタイの登場にゴブリンは騒ぎ、人間たちも悲鳴を上げて騒ぐ。
ふ…
「これが、ヘンタイの宿命というものか!」
何を言っているのかさえ、意味不明な感じではあるが、俺は今ヘンタイになっている。
そう、ヘンタイ完全体みたいなものなのだ。
だからこそ、その勢いのまま進む。
そうして、アイラたちを視認した俺は嫌な気配を感じる。
「なんだあれ?」
【あれは!】
「何かわかるのか?」
【あれは、あの召喚されたやつに何かが乗り移っているわね】
「なるほどな」
【どうするのよ、あれは強いと思うわよ】
「別に大丈夫だ。俺はヘンタイ、あいつは人間」
【なんで、ちょっとラップ調なのよ】
「ふ、とりあえず先頭に介入する!」
そして、俺は攻撃を完全に両手で受け止めたのだった。
この後は言うことは決まっている。
「ヘンタイを除け者にするなよ!」
「なんだ?」
「お前は!」
不機嫌になりながらも下がるオーガと、驚きながら下がる勇者。
俺は戦闘に戻ってきた。
こうして、俺は右手を地面につくと左手を顔に当てる。
今日のヘンタイポーズ。
考えるヘンタイだ
そんなアホなことをしながらも、戦闘は始まるのだった。




