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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは勇者と戦うってね

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87話

「朝か…」


この世界にきてがっつり眠ったことが久しぶりすぎて、眠りすぎて腰が痛くなる。

たまにある休日のそれを思い出しながらも、俺はベッドから起き上がる。

本当に、ベッドってここまで快適だったのか…

そんなことに俺は感心しながらも、着替えたり朝の用意を終える。

そして部屋を出たときだった。


「あ!」

「お!」


どうやら一つ空けて、アイラの部屋だったらしく、部屋から出てきたアイラと鉢合わせる。

朝に強いということは本当のようだ。


「おはよう」

「おはよ、ただし」

「他のみんなは?」

「まだ、寝ているわよ」

「そうなのか?」

「そうよ、いろいろあったし仕方ないんじゃない?」

「それはそうかもな…アイラはもう少し寝ていなくていいのか?」

「もう朝は決まった時間に起きることが癖になっちゃったからね、別にいいのよ」

「そういうものか…」

「ただしこそ、寝ていなくていいの?」

「いや、俺も悲しいかな、長年の習慣で起きちゃうからな…」

「だったら、私と同じってことね」

「そうなるな」

「別に悪いことじゃないんだから、いいじゃない」

「考え方によってはそうなんだけどな」


俺としては、未だに社畜時代の癖が抜けていないみたいで嫌なんだ。

そんなことを言いたいが、一応はまだ記憶喪失設定だ。

いろいろと怪しいけどな。

それでも、設定というものは大事にしないといけないと思う、たぶん。


「それで、アイラはこれからどうするんだ?」

「どうしよっかな…」

「それなら、朝市に出かけるのはどうでしょうか?」

「「うわ(ひゃ)」」

「どうも、おはようございます」

「「おはようございます」」


どこからともなく声をかけてきたのは、メイド服に身を包んだ、メイさんだ。

今日も朝からメイド服なんだな。

どことなく、昨日部屋に来た女性に似ているが…

髪の色が全く違うしな、人違いだろう。

それに、背恰好も昨日の人のほうが高いしな。

そんなことを考えながらも、何も言えないでいると、アイラが質問する。


「朝市ですか?」

「はい、王都と呼ばれるほどですから、朝からにぎわいを見せている地域がありまして…」

「どこなの?」

「ここです…」

「なるほどね」

「どこだ?」

「ここよ!」

「なるほどな」


昨日簡単にこの王都についての街並みを教えてもらった際に、書いてあった内容だ。

王都は俺たちが昨日行った王城から近いところから順番に値段が高い。

それは、当たり前だろう。

そして、そんな王城に近いところは高級なお店が多いということだ。

逆にいえば、王城から離れれば離れるほど値段は安くなる。

といっても、俺たちのような冒険者は、街から外に出て依頼をこなす必要が多いため、ギルドもかなり立派なものがあるが、それは中間よりも外よりだ。

まあ、結局何が言いたいのかというと…

高い店が、こんな朝早くからやってはいないが、逆に外に近いほど朝早くから、冒険者に向けてお店をやっているということだろう。

なるほどな。

このタイミングで行かないという選択肢は…

まあ、ないよな。

朝市という初めての響きに、ルンルンの様子のアイラと俺は朝市にと向かった。

屋敷から出ると、朝ということと、王城からほど近いこの屋敷周辺に人はほとんどいない。

これなら歩いていくときも、昨日のようなことにはならないだろう。


「昨日みたいな人の多さに比べると、今日は楽勝ね」

「そうだな」


だからこそ、俺たちはゆっくりと街並みを見ながら歩いていた。

人もまばらな時間帯で、さらには二人きり…

どことなく気まずい雰囲気が流れながらも、アイラが俺のほうを真っ直ぐに見ると口を開く。


「ねえ、ただし…」

「どうした?」

「何か私たちに隠し事ない?」

「どうしてだ?」

「だって、昨日文字を教えたときには覚えるのに苦労していたのに、数字と計算を教えるとすぐに内容を理解してたでしょ」

「そうだったか?」

「そうよ。ねえ?ただしは何者なの?」

「そうだなあ…」


なんだかんだとありながらも、異世界に転生をして、そしてアイラたちと出会った。

かなりいろいろなことがありながらも、これまでの楽しい時間は早く過ぎていた。

ここで、俺の秘密である転生者ということについて言ってもいいものだろうか?

俺はふと考える。

そんなときに頭に声が響く。


【別にいいんじゃない?】

「…」

【別に決めるのはあなたであって、あたしじゃないんだから。この世界に転生させたのはあたしだけど、転生してどう過ごすのかを考えるのは、あなただからね】

「そうだな」

「きゅ、急にどうしたの?」

「いや、話をそろそろしないといけないなって思ってな」

「そう、ようやく聞かせてくれるのね」

「ああ…簡単に言うと、転生者ってやつだな」

「転生者?」

「ああ、神に遣わされたってやつだ」

「そうなの?」

「そうだ!」

「だったら、何か証拠を見せないさいよ」

「へいへい…」


俺は右手を上に向ける。

そこには…

石が握られていた。


「えっと…手品?」

「ちげーよ…」


というかなんだよ、これ…


【それは、何かのうんちよ】

「いや、うんちじゃねえかよ」


俺はすぐにそれを投げ飛ばしたのだった。


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