79話
ギルドに入ると絡まれる。
なんてことはなく。
それに、俺が美少女パーティーの中で一人だけ男だということで、注目を浴びることもなかった。
というのもだ…
美女を連れているやつが、俺の他にもいたからだ。
しかも、その美女が俺たちのパーティーより、かなり露出が高いとなれば、俺なんかより注目を浴びるのは仕方ないことだ、
というか、あんなにいっぱい女の人をちやほやしやがって、うらやまけしからんな。
美人具合では、あきらかに負けていないはずの俺たちパーティーメンバーといえ、露出の面では完全に負けているので、普通に素通りだ。
そして、すぐにギルドの受付に辿り着く。
というか、受付も五つくらい窓口があるのかよ…
最初の街にあった商会くらいには大きいな。
にぎわっているのかがよくわかるからな。
「あの、受付いいかしら」
「はい、大丈夫ですよ」
「簡単に、この街の地図なんかはもらえたりするかしら?」
「はい、冒険者プレートを確認させてもらいますね」
「へえ、これは飛び級ですか、なかなか驚きですね」
「最初に少しだけ運がよかっただけよ」
「そうですか?それでも、飛び級というのは、すごいことですよ」
「あ、ありがとう」
アイラが早速受付に話しかけて、受付の人に褒められている。
といっても、最初の街であったような、かなり大騒ぎされるなんてことはない。
まあ、これだけ大きな街というか、国のど真ん中の街なのだ。
こういうことは初めてではないのかもしれない。
俺の他に転生者がいたら、チートスキルを使って簡単に飛び級できそうだよな。
俺みたいに、スキルを使えば、社会的地位が落ちるようなものじゃない場合は余計にな。
元いた世界でしようものなら、秒で捕まるというやつだ。
一応顔が見えないから捕まるまでは、ただの変質者でいられるだろうけれど、捕まってしまえば犯罪者だ。
うん?
捕まれなければ、ただの変質者でいられるって?
俺の考えが、もう毒されてきている気がするな。
そんなことを考えていると、袖を引っ張られる。
こ、こんな可愛いことをしてくるのは…
意外にもシバルだ。
しっかりと騎士の恰好をしているし、頭もいいしで頼れるところが多いシバルだからこそ、こういう女性的な可愛さに俺は簡単にやられてしまいそうだ。
「どうかしたのか?」
「ええ、少し気になる話がありまして…」
「どんなのだ?」
「こういうものなんですが…」
俺は依頼書とは別の書類を渡される。
いや、わからん。
やっぱり読めるようにならないといけない。
「すまん。読んでくれるか?」
「あ、はい。簡単に言うとですね、何かアイテムがある遺跡を捜索しないかってことですね」
「なるほどな…」
遺跡にあるというものの捜索か…
急にまた冒険って感じだな。
今は正直なところ、ゆっくりしたいんだけどな。
ただ、こういうときにこれまでいつもシバルに助けてもらっているお返しをしないとな。
それに、こういうポイント稼ぎをするのも大事だ。
女性のお願いを叶えるのも、非モテからモテるためには必要だ。
よし!
やるしかないか。
本当は新アイテムをゲットするために、いろいろと見て回りたかったけどな。
「よし、やるか」
「ありがとうございます」
「おう」
そして、その依頼を受けたときに少し嬉しそうにしていた顔がどことなく赤くなっていたのに、俺は気づいていなかった。
そんなことがあった後に、地図をもらったアイラとバーバルは買い物に出かけるということで、俺は計画通りというか予定通りに街から依頼場所であるスラム街を抜けた先にある遺跡に向かうところだったのだが…
「な、なんだと…」
「どうかしたのですか、ただし?」
「いや、これは…」
「こ、こんな布面積が小さいもの、使えるんですか?」
「ああ…」
いろんな意味でな!
そう口にしそうになるところをグッとこらえる。
ここにあるものは布面積が極端に小さい下着、それも上下だ。
これを俺は知っている、マイクロビキニだ。
もしくはマイクロ下着なんてものだろう。
それを見つけてしまったのだ。
正直に言うと、店頭でそんなものを販売していいのかという疑問が頭に浮かぶ。
だって、男が通るんだぞ、そんなところで布面積が極端に小さな女性が身に着ける大事なものを発見してみろ、一度見、二度見、凝視と続くだろう?
違うのか?
違うか…
そもそも女性の前で、こんなものは買えないな。
凝視はヘンタイスキルというか、ヘンタイ眼に目覚めたせいで気づいたらしてしまうけどな。
だって、仕方ないだろ…
そこにマイクロなものがあるのだから!
見えそうで見えない。
それが下着だろうと、素肌だろうと、いいものはいいものだ。
くそ、買いたいが…
このタイミングで買うというのはさすがに難しいだろう。
シ、シバルのあの目に耐えながら購入するということはできないな。
よし、覚えておこう。
いや、覚えるんだ。
ヘンタイスキルをこれに使えばできる。
ヘンタイ眼よ、完璧な道筋をしっかりと覚えておくんだ。
ギンギンに目よ、覚醒せよ。
よし、いいぞ…
道筋は覚えた。
【ヘンタイスキルを最初は嫌悪してたくせに、ちょっと使いこなしてるのね】
「(仕方ないだろ、俺だってな、使いたくはない…)」
【本当に?】
「(ああ、使いたくはない、でも使わないと今後もこの世界でやっていける気がしないんだ…だからこうやって必要なことをしてるだけだろう?)」
【ヘンタイに染まってることを気づいてほしいわね】
「(仕方ないだろ、スキルがそうなんだからな)」
【そういって、楽しんでるんじゃない?】
「(な、なんだと…)」
【なんで驚いているのよ。というか、ヘンタイスキルを使うときに、人の下着をクンカクンカしないでよね】
「(そんなこと…)」
【していないって?】
してるな。
ただ、してるなんてことを言ってしまえば、俺がヘンタイであるということを認めてしまうことになる。
いや、大丈夫だ。
俺はヘンタイスキルを使うためにやっているだけ。
そう、考えないようにしていなかったが、俺がやっていた匂いを嗅ぐという行為は、神聖なことだ。
そうだ。
【ちょっと、顔がイラっとするわね】
「(バカな…)」
【だって、顔を訴えてるもの、ヘンタイスキルが全て悪いってね】
「(なんで、俺が思っていることがそんなに簡単にわかるんだよ!)」
【ふ…当たり前でしょ、これでも神様だからね、あなたの過去は見たって言ったでしょ】
「(それで、わかったと…)」
【ええ、それでもここまでヘンタイだとは思わなかったけどね】
「(体が若くなったから、性欲も若くなったってことだよ)」
【へえ、お猿さんみたいってことね】
「(猿っていうな)」
【でも、お猿でしょ…というか、いい加減騎士の少女を相手してあげなさいよ】
「(いや、話しかけてきたのはお前だろ?)」
【イラっとする顔をしてたんだから仕方ないでしょ…それに、騎士の少女もそれに夢中だからいいでしょ】
「(そうだけどな…)」
そうなのだ。
最初は少し引いていたものの、今ではマイクロシリーズに目を奪われている。
やっぱり女性でも気になるんだな。
ああいうものって…
でも、これだけ綺麗な女性騎士が、真剣に布面積が極端に小さな下着を見ているとなると、周りからもかなりチラ見される。
さすがに離れるか…
「シバル、そろそろ行くぞ」
「そ、そうですね」
「気になるのか?」
「そんなことは!」
そう言いながら、シバルはさっさと行こうとするが…
「道が間違ってるぞ」
「え、あれ?」
「いいけどな」
さっきのことで感覚がおかしくなってしまったのだろう。
それでも完全に逆方向に歩き出すとは、さすがに見たことがありすぎる状況を目の前で見てしまうことになるとはな。
とりあえずは、気を取り直して依頼に出発することになった俺たちは、遺跡に入る前に戻るということだ。
それにしても、遺跡ってこんな感じなんだな。
ピラミッド…