74話
「くそがあ」
「ぷはあ」
「どうなってんだよ」
「わかりません」
「わかってるよ。俺様がわからないことがお前らにわかるわけがないだろうがあ」
俺様たちはあいつらを追っていた。
そして、前に立ち寄った町で、有益な情報を得た。
それはアクアという町に向かったということだ。
だから俺様たちはアクアという町に向かっていたというのに…
なんでこんなことばかりが起こっているだ!
俺様たちはあいつを殺すために、向かっていたはずだったのにどうしてこんなことに…
後少しで、アクアの町につくというタイミングで、何故か水が上からふってきた。
よくわからないが、大量の水だ。
溺れる感覚になるとは思わなかった。
もう少しすれば湖が見えてくるということだったので、そこで何かが起きていて飛んできたのだろうということくらいはわかるが、なんでこんなピンポイントに水が飛んでくるんだ?
わけがわからない。
そして次に、何故か牛の大群に吹き飛ばされた。
急にやってきたから、よけられるはずもなく吹き飛ばされた。
すぐに起き上がったが、あんなこともあったから夜に進むことになれば危険ということになり、俺様たちはアクアの町手前だというのに、野宿を余儀なくされた。
まあ、あいつらがこの国から出るとは思わないがな。
手配書はそろそろアクアの町にも回っているだろうしな。
そうなれば、誰かが捕まえたあの男を俺様が裁くことができれば勇者として、俺様がさらなる高みに立てるのだから…
そう思っていたときだった。
「返してもらうぞ」
「あ?」
そんな言葉が聞こえたと思うと、もっていたはずの鎖が軽くなった。
どういうことだ?
ずっともっていた、あの奴隷の盾を繋いでいたはずの鎖が軽くなっているのを感じたのだ。
俺様は慌てて暗くなっているそっちを見ると、そこには俺様たちがこき使うはずの奴隷がゆっくりと立っていた。
それに、剣が反射している。
「おい、何してやがる!」
「わたしを知りませんか?まあ、仕方ありませんね。わたしはあなたを知っていても、あなたはわたしを知らない、当たり前のことです」
「はあ?何をわけのわからないことを言ってやがんだ?」
「わかりませんか?」
「わからないなあ。俺様は最強だからな」
そう言いながらも、俺様たちは、その男を包囲した。
人数でもこちらが勝っている。
卑怯?
そんな言葉は負けたやつの言い訳に過ぎないんだからな。
「おら、後悔して死ねや」
「ふむ、わたしの正義を示してもいいのですが、やりすぎるなとも言われていますし、一度だけ加減をした技を使います。これを受けきれば、また出会うこともあるでしょうが、そうなればわたしの正義の前に鉄槌をくだします」
「何を、バカなことを、魔法をくらえ、雷よ、相手を倒す稲妻となせ、サンダー」
「ふう、ではいきますよ。聖騎士剣術、奥義、ホーリーソード」
「なんだ、それ!」
俺様の雷魔法は、光の剣によって斬られる。
くそ、この光の剣はまだ!
「おい」
「はい」
「「我の前に壁を、バリア」」
修道女の女二人にバリアを張ってもらうが、すぐにそれも割れる。
くそが、俺様はこんなところでやられない。
やられるわけがないんだ、俺様は勇者なんだからな!
ほら、頭に雷鳴のように魔法が思いついた。
「雷よ、我の武器にその力を宿せ、サンダーウエポン」
剣を引き抜いた俺様は、その光の剣を切り裂いた。
「ほら、みろ、やっぱりやれるじゃないか」
「さすがです、勇者様」
「だろう?」
やっぱり俺様は勇者なんだ。
そうだ、あんな奴隷がいなくてもやっていける。
新しい力も得たことだしな。
俺様は荒らされた野営場所を直させると、いつものように勇者としてこの世界を満喫する。
そう、まだまだ俺様はやれる。
勇者なのだから…
それを男を殺すことで証明する。
そうだ、そうだ!
追いつめてやるぞ。
俺様は決意を新たにしたのだった。