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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは追われる運命ってね!
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64話

「「はあはあ…」」


俺たちは二人で荒い息をはいている。

現在は、なんとか巻くことができたというわけではなく、走り回って見つけた小屋に隠れている状況だった。

アクアという町の外には、なんとなく予想はしていたが、水を活用した作物を育てており、その作物を育てるための道具を収納するためにあるのだろう小屋に、疲れた俺たちは身を潜めていた。

といっても、近くにある小屋は四つしかなく、全てを探されてしまえばすぐに見つけらられ、そうなってしまえばすぐに捕まってしまうことだろう。


「どうする?」


俺は独り言のように、口に出していた。

それに対して、ヒメは隣で座っている。

俺はその姿に思わず悪態をつく。


「なんだ?こんなところで、この状況で、その態度か?」

「なによ…別にいいでしょ…」


すぐにヒメからぶっきらぼうにそう言われる。

どうでもいいだと?

俺は少しイラっとしながら言い返していた。


「いいってなんだよ。お前が依頼してきた内容だろう?それで何か予想外が起こったというだけで、そんな態度をとるのか?」

「何よ…」

「なんだ?」

「何も知らないくせに!」

「ああ、俺は何も知らないな。だってお前が何も言わないからな」

「それは、だって…」

「言えることじゃないってか?依頼が無事に終われば、言っていたってか?」

「そうよ」

「今のままだと、それすらもできるかわからないけどな」

「…」


俺の言葉に、ヒメは何も言い返せなくなる。

すぐに言い過ぎたことに後悔したが、いいや、頭を振る。

仕方ないことだからだ。

それにたぶん、アイラがこの場でさっきのような言葉を聞いていたのであれば言い返してきていたからだ。

どことなくアイラと似ているからこそ、厳しく言ったところで、言葉が返ってくると思っていたのかもしれない。

何を言うべきか、頭の中でそう考えていたとき、頭に声が響く。


【やーい、女の子泣かせた】

「(いや、泣かせてはないだろ?)」

【本当に?あたしには泣かせたように見えたんだけど】

「(お前な、さすがに泣いてるなら、俺だってもっと慌ててるからな)」

【慌てるくらいなら、そういうことを言わなかったらいいだけなのに!】

「(確かに、それは俺も言い過ぎたと思ってたけどな)」

【ほら、そういうところからすでに、モテる要素をなくしているのよ】

「(わかってるよ。というか、モテないモテない言うのやめろ…)」

【どうしたの?怒っちゃった?】

「(いや、普通に傷ついた…)」

【あ、そう…】

「(そうだよ。だから、この状況をなんとかするために助けてくれ)」

【はあ、しょうがないわね。手を出しなさい】

「(こうか?)」


自称神がようやくというべきか、手を貸してくれるらしい。

俺はどんなことかはわからないながらも、手を広げて何かをキャッチできるようにと、手のひらを上に向けた。

何をくれるのだろうか?

もしかして、また下着か何かか?

確かにそれで俺は強化されるかもしれないが、それだけだぞ…

そんなことを思っていると、手の上に落ちてきたのは石だった。


「(お前、これって?)」

【…】

「(ありがとうございます、神様。こちらは魔法石ですか?)」

【そうよ。ありがたいものでしょう?】

「(はい。そうですね)」

【まあ、神の世界にはそんなものたくさんあるから、一つくらい簡単にあげるわ】

「(はい、ありがとうございます)」

【うまく使いなさいよ】

「(はい、そうですね)」

【ねえ?少しバカにしてる?】

「(はい、そうですね)」

【…覚えていなさいよ】

「(…)」


く、流れとはいえ、やってしまった。

つい、相手をするのが面倒くさいからとてきとうな返事をしていたら、怒られてしまうなんて、予想外だ。

と、反省する風な感じをだしながらも、俺は手に入った魔法石を見て、にやりと笑う。

なんというべきか、今必要なものをなんだかんだといってわかってくれているということだ。

いや、実際のところはわからないけども…

でも、これで俺は一つのことを考えていた。


「ただし?」

「どうした?」

「その、こういうことはあんまり言いたくないけど、ニヤニヤして気持ち悪いよ」

「じゃあ、言うなよ。というか、そんなにおかしな顔なのか?」

「うん、それなりに…」

「まじかよ…」


俺が愕然とする一方で、ヒメは何かを決心したのか、立ち上がる。

そして顔をたたいた。


「よし!」

「どうしたんだ、急に…」

「どうしたって、さっきまで散々ヒメに向かって説教してきたでしょ?だから、今からやることのために気合を入れようと思ってね」

「なるほどな…」


だからといって、自分の顔をたたくのはどうかと思うとは言わなかった。

あーあ、ここにシバルがいたら、それを見て生唾を飲み込んでいた気がすると思うと、なんだかな…

俺がすっかり、ヘンタイ的思考ばかりを思っているとはいざ知らず、すぐにそんなことを考える状況じゃなくなる音が聞こえた。


「おい、後探していないのはここだけか?」

「そうです」


どうやら、俺たちの小屋までやってきたようだ。

このままでは捕まるだろう。

当たり前だ。

仕方ないこと、そう言ってしまえばそこまでのことなのかもしれないが、この程度のことをどうにかできないと、今後のためにも大切なことだ。

俺は決めていたことをやる。


「すまない」

「は?なに!」


驚いたようなヒメの言葉を無視して俺は、手刀によって昏倒させる。

初めてにしてはうまくいったな。

自分に関心しながらも、俺は次の行動に移った。

あれだ、交渉というものだ。

俺はヒメを寝かせると小屋から出た。


「ふべら…」

『…』


全員の沈黙がこの場を包む。

なんということだろう。

勢いよく開けすぎたせいで、今まさに突入しようとしてきた黒服の男を吹き飛ばしてしまった。

あー、なるほど。

こういうのを予想外の展開というのだろう。

いや、気を取り直してやるんだ。

俺は、手に持っていた魔法石を見せた。


「リーダーはいるか?」


その言葉に、全員は倒れた男を見る。

なるほどな。

倒れている男がリーダーなのか。

ちゃんと部下じゃなく、自分で最初に先陣をきるとはやるな…

いいリーダーじゃないか!


「って、いやいやいや…」


どうする?

でも、ここまでやって後戻りもできない。

やるしかないか。


「これは、お前たちが探していた魔法石というやつだ」

「それがか?」

「そうだ」

「にわかには信じられない。そんな小さな石がそうなのだとは…」

「待ってくれ、どういうものなのか聞いていないのか?」


俺のその言葉に、また視線はリーダーに集まる。

なんだろうか、この不毛な感じ。

タイミングが悪いというだけで、これだけグダグダになるのもどうかと思うのだが…

そんなことを思いながらも、どうしたものかと考えていたが、リーダーに変わり、俺と話していた男が一歩前に出る。


「それで、それが魔法石だというのなら、何か証拠があるのか?」

「証拠か…」


こういうときにどうしたらいいんだ?

俺も使ったことさえわからないから、何をどうすればいいのかわからない。

冷や汗をかきながらも、この状況をなんとかしようと考えていたとき、頭にため息が響く。


【はあーーー…、仕方ないから助けてあげるわよ】


その言葉とともに、どこか空の上からタライがふってくる。

なんという古典的なものだろうか…

そんなことを思いながらも、タライは失神して倒れていた男の頭に落ちる。

カンという高いいい音が鳴り響く。


「ぐふ…」


そして、そんな声が男からもれる。

すぐに男はがっと勢いよく顔をあげて、周りを見る。

そこでようやく自分が先ほどまで気絶していたことがわかったようだ。


「お、お前!」


すぐに俺に対してそんなことを言うが、俺が手に持っている魔法石を見て勢いを少し失う。


「どういうことだ?」

「いや、魔法石を見つけたのはいいけど、このままだと普通にお前たちに捕まるだろうから、魔法石を先に差し出して、俺は見逃してもらおうかと思ってな」

「それはいい心がけだが、最初にかみついてきたやつの言うことを信用すると思っているのか?」

「確かに、言いたいことはわかるけどな。だからほらよ」


俺は男に向かって魔法石を投げた。

男はそれを受け取ると、こちらに向かって訝しげな表情を向ける。


「まあ、それが魔法石かどうかを調べるのに、お前が必要だと聞いたからな」

「だからこちらに渡したのか?」

「そういうことだな」

「しょうがない。少し待て」


そういうと男は、受け取った魔法石を何かで見た。

そしてぶつぶつと魔法石に何か言葉を言っている。

その時間は数分くらいだろう。

男はうなずく。


「これは、魔法石で間違いないな」

「ということなんでね、俺はみんなのところに帰って大丈夫ですかね?」

「いや、それはダメだ?」

「どうしてですか?」

「それは、こうしないといけないからだ」

「なに!」


そして俺は視界を奪われて、昏倒したのだった。


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