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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは追われる運命ってね!

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63話

「ふざけた武器を使うみたいですねえ、これは油断しない方がよさそうですね」


俺は先ほどと同じように、ストッキングを手にもっていたが、ピエロ姿の男は油断することなくこちらを見てくる。


「ただしの武器を見ても、油断しないなんて、やるようね」

「おい、アイラ。俺の評価が低くないか?」

「仕方ないでしょ。まずは普通の武器を使って戦うことを覚えれば、私だって別にこんなことを言いたくはないわよ」

「そうですよ、ただし」


仕方ないだろと言いたいところだが、俺はその言葉を飲み込んだ。

ヘンタイスキルのせいで、普通の武器を使えるのかわからないなんて裏事情を話すなんてことができないからだ。

それに、さっきのときもあったように、ナックルは強すぎるからな。

相手の強さがわからないままでは対人には使いたくないんだよな。


「どうしたんですか?仲間割れですか?」


そんなことを思っていると、その言葉とともにピエロの姿がゆっくりと消える。

これもマジックということなのだろう。

いやいや、見えなくなるとかどんなマジックだよ。

そんな俺の考えをよそに、楽しそうなピエロの声が聞こえる。


「くくく、さあさあ。タネも仕掛けもございます。わたくしめのマジックをご覧にいれましょう」

「くるぞ」


俺たちは構えた。

すぐにどこからともなく表れたのは、紙で作られた虎だ。

紙で作られたものだから、ただ地面に横たわるだけなのかと思ったが、どういう構造なのかはわからないが動いている。

それも二体。


「おいおい、これは…」

「すごい精工ですね」


アイラはそんなことをのんきに言うが、油断したのを狙うかのように、虎はこちらに向かってくる。


「「グルルルル」」

「受けます!」

「こ、こっちにも来るのかよ!」

「シバル、こっちをカバーするわ。」

「わかりました」


虎は、俺とシバルに向かってきた。

シバルは突進かみつきをしっかりと盾で防ぐ。

俺はというと、転がるようにして横に回避していた。

ただ、虎はすぐに切り返すと、こちらに再度突進かみつきをしてくるが、その前にアイラの声が響く。


「我の前に絶対に通さない聖なる壁を作りたまえ、ホーリーバリア」


バリアが俺と虎の間にでき、虎の噛みつきが到達する前に、防がれる。

それにしてもだ…


「ち、近いんだけど!」

「我慢しなさいよ」

「くそ…」


ヘンタイスキルさえ、発動すれば倒すことも可能だろうけれど、ここで使うことができない以上は、強い相手にはこうやって無様な姿を見せるしかないのか。

いや、ここで何かできるはずだ。

俺はもっていたストッキングを鞭のようにしならせる。

それによってバリアを破ろうとしていた、虎の首元に巻き付いた。

これにより、虎の動きが止まる。

よし、動きさえ止まってしまえば、俺たちには遠距離攻撃ができるやつがいる。

俺はすぐに、声をかけた。


「バーバル!」

「はい。わたくしに任せてください。火よ、相手を焼き尽くす炎となせ、ファイアー」


魔法を唱えた、バーバルから炎が飛んでくる。

慌てて離れようとする虎だったが、それは炎に包まれる。

元が紙だったからか、ボっと音がでそうなくらいに勢いよく燃える。

材質がどう見ても紙だとはいえ、あそこまで燃えるとは…

俺はその光景に驚いていると、バーバルの方から声が聞こえる。


「あー、たまらないわ。いい燃えっぷりね。もっと、もっと燃やしたいわね」

「お、おう…」

「バ、バーバル?」


さすがのアイラも、そんなバーバルの姿に驚きを隠せないでいたが、バーバルはそこでは止まらない。

紙の虎をなぶるように見つめると、嬉しそうに言う。


「もっと、燃やしてさしあげる。火よ、相手を焼き尽くす炎となせ、ファイアー」


その炎はシバルと相手していた虎に向かって飛んでいく。

ただ、虎もその炎にはさすがにまずいと思ったのか、シバルの方に突進していった。

まずい、これはシバルに当たってしまう。

そう思ったのは俺だけではなかった。


「シバル!」


慌てたような声で、アイラが叫ぶが。

炎はシバルに当たることはなく、曲がる。

それに虎も慌ててかわすが、それを炎は追いかける。


「ふふふ…ほらほらほら、逃げなさい。逃がさないけどね」


その炎を出したバーバルはというと、かなり楽しそうだ。

そこで思い出すのは、自称神が言っていた言葉だ。

確かバーバルのスキルはドS。

それが発動しているのだろうか?

魔法も、思い通りに動かせているように見えるし、かなりの力が発動しているのだろう。

そのまま虎が魔法で焼かれるまで、俺たちはそれを見届けるくらいしかできなかった。


「なるほど、なるほど。強い魔法に、かなり特殊なスキルをお持ちのようですね?」


虎たちが倒されたとみると、ピエロがまた姿を現す。

でも、そこにはかなりの余裕が見て取れた。

それは右手に持っている石でわかった。


「な、お前それ!」

「くくく、やはり見えなくなると、盗るのは簡単ですね」

「ヒメ!」

「ごめんなさい、動けなくて…」

「おやおや、どうかしましたか?」

「…」


どういうことだ?

確かに先ほどから、ヒメの動きが悪かったように思った。

だから心配していたが、どうやら杞憂ではなかったらしい。

普通であれば警戒していれば防げることも、防げていない。

そして、絞り出すように口を動かしている。


「兄さん…」


そう言っているように聞こえた。

まあ、盗られてしまったものはどうしようもない。

俺たちは、ピエロに詰めるように前に走る。

だけど、すぐにピエロは姿を消した。


「くくく、何かたくさんの、面白いスキルをお持ちのようですが、こちらも目的さえ果たせばよかったものですから、ここで引かせていただきます」

「ちっ、待て」

「待てと言われても、待てませんよ。それでは、タネも仕掛けもございます、ピエロが魔法石を奪いにこさせていただきました」


そんな言葉とともに、それまであった気配はなくなった。

そんな中で、盗まれた干渉に浸る…

暇はなかった。


「ランページタウルスがきます!」


その声で、俺たちはハッとする。

忘れていたが、ピエロが呼んだであろうランページタウルスはこちらに向かってきていた。

とっさに俺たちは避けることはできたが、俺とヒメ。

アイラとシバル、バーバルの二組に分かれることになってしまった。

ランページタウルスの数が多く、すぐには合流できそうにない。

そんなときだった。


「見つけましたよ!」

「くそ!」


俺たちは黒服の男たちに見つかる。

人数も前の十人よりもさらに多い数だった。

先ほどから、あまり動くことができていないヒメを引っ張るようにして、俺はその場から逃げた。

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