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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは追われる運命ってね!
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58話

「ごめんなさい、巻き込んでしまって」

「護衛の依頼を受けたのは私たちなんだから心配いらないわよ」

「そう言ってもらえると助かるわね」

「それで?結局何を落としたのよ」

「そうね、もう隠すことができるとは思わないし、話すわ」


そう言いながらも、ヒメはすっと立ち上がる。

そんな俺たちは、現在あんなことがあったということで、アクアの町中に戻るということをできるはずもなく、俺たちは町からそれなりに近い丘にてキャンプを行っていた。

新しい町につけば宿屋に泊まれると少しは期待していたというのに…

現実はそんなに甘くないものだということなのか?

それにしても、自称神が言っていた厄介なことに巻き込まれるというのはこんなに続くものなのかと思ってしまう…

そんな俺の考えはよそに、ヒメは話しを始める。


「ヒメが探しているものは、さっきの領主からの通信でわかったと思うけど、石よ」

「どういうものなのですか?」

「そうね、簡単に言えるのはそれなりに小さくて赤いということくらいかしら」

「どうして最初からボクたちに石だということを教えてくれなかったんですか?」

「そうね…信用していなかったというところかしらね」

「信用していなかったから話をしなかったと?」

「ええ、その石にはかなり強力な効果があるから、悪用されたらどうしようもないのよ」

「そうなのですか…ちなみに、どうしてあの公園で探したんですか?」

「それはぶつかったときに落としたかなって…」

「なるほど、誰かにぶつかったのですか?」

「ええ、顔は見ていないから誰なのかはわからないけどね」

「かといって、今更公園には戻れないんじゃない?」

「ええ…でも石は見つかっていないみたいだから、相手より先に見つけることができればなんとかできると思うのよね」

「そうね…」


俺とバーバルは話を聞くだけとなっていたが、そんなときにバーバルに腕の裾を引っ張られる。

どうしたのかと思いそちらを向くと、小さな声で話を始める。


「(先ほどから何かの石を探しているということですよね)」

「(ああ、そういうことだけど、どうかしたのか?)」

「(そ、そのちょっとわたくし気になることがありまして…)」

「(何がだ?)」

「(そ、その失礼します)」


どうやら魔法使いのバーバルには気になる何かがあったらしく、それは何かとちゃんと聞こうと思っていたけれど、急に失礼しますと言われ、何事かと思っていたらポケットの中に手を突っ込まれていた。

服の上からでもバーバルの長くほっそりとした指が太ももにふれ、思わず変な声を出しそうになってしまいそうだ。

真剣な話中だというのに、傍から見れば急にイチャイチャを展開し始めた俺と、バーバルにアイラから殺せるんではないのかと思うほどの視線を浴びせられる。

あ、俺死んだかも…

そんなことを真剣に考え始めたときに、バーバルの手が引き抜かれる。


「な、なにやってるのよ!」


終わったことで、怒りをあらわにするアイラに、俺は助けてくれとシバルを見たが、目をそらされた。

そのままの勢いで俺はアイラに胸倉をつかまれそうになっていたときだった。


「ま、待ってください」

「バーバル?」

「あ、あの…わたくしはおかしな魔力の反応がそこにあることを知って探しただけですから」

「そ、そうなの?てっきりただしに強制的に入れさせられたのかと…」

「さすがに、そんなことをさせるかよ!な?」


そう言うが、誰もそうですねとは言ってくれなかった。

おいおい…

アイラも、俺がパーティーメンバーから外されそうになったときに庇ってくれたのに、なんでこういうときに酷いんだよ。

この状況をなんとかしないとと思いながらも、何もできないでいると俺から興味を失ったヒメが、バーバルが俺のポケットから抜き取った石を見て声をあげる。


「それは!」

「どうしたの?」

「えっと、探していたものってこれなのよ」

「ええ…」


俺はまさかの展開に驚きながらも、先ほどまでの空気が変わったことに安堵していた。

一応、俺の命は助かったな。

そう思って安心したときだった。

アイラの全てを話しなさいという目を見てしまい、俺はそのときのことを話した。


「あの公園にいたときに、そんなことがあったなんてね」

「はい、驚きました。ヒメがぶつかったのがただしだったなんて…」

「まあ、ただしはなんでかわからないけど以外と運がいいからね。」

「あははは、ありがとう。ってそれは俺のことをほめているのか?」

「もちろんよ!」

「そ、そうかい…」


かなりいい笑顔でアイラにそう言われてしまえば何も言えなくなる。

決してさっきのことがあってさらに心象を悪くしたくないというわけじゃないぞ!

決してな!

俺は気を取り直して、気になったことを聞いた。


「でも、あのときとかなり印象が違ってて、わからなかったんだが…」

「それはですね、変装ですよ」

「変装?」

「ええ、ヒメはそういうスキルをもっていますから」

「まじかよ」

「はい。やってみましょうか?」

「ああ」


すると、ヒメは少し離れると、手を前に構える。

構えが必要なのか?

俺は疑問に思っていたけれど、すぐにその疑問はいろいろな意味で大丈夫かと思う出来事に変わる。

ぐっと力を込めたかと思うと手を動かす。

それはまさしく…


「〝変装〟」


仮面ラ〇ダーじゃねえかよ。

変身した姿は、確かに俺とぶつかったそれだったけれど、変装の仕方というべきか、それをする前動作といえばいいのか…

俺が知っている、変身ヒーローたちのものだったからだ。

まじめに、ツッコミを入れてしまいそうになるのをなんとか我慢した。


「どうですか?」

「普通にすごいな…」

「ええ、本当に」

「ヒメなの?」

「はい、そうですよ」

「み、見た目が変わるスキル。わたくしも欲しい」

「えっと、解除っと」


全員がスキルを確認したことで、ヒメはそう口にして見た目を元に戻した。

何がすごいかというと、変装を行えば、体格もある程度変わるということだろう。

普通に考えて、大きく見せる変装は、服などを着こめばできることはできるが、先ほどのように本来よりも小さくなるというのは、スキルというものがなせる技なのだろう。

それでもすごいことだ。

俺たちのパーティーみたいな、スキルの使い方にかなりの制限がかかっているメンバーとは大違いだ。

そんなことをしみじみと思っていると、変装のために立っていたヒメが座る。


「これでわかってくれた?」

「ああ…かなり驚いたけどな」

「まあね。声も変えられるから変装というよりも別人になるっていう言葉の方がしっくりくるかもね」

「でも、そこで疑問なんだが、それならどうしてあいつらはその石のありかをヒメが知っていると思っていたんだ?」

「それは、わからないわ」

「そうなのか?」

「ええ…だからこそ、早めに石を回収してリベルタスの国に向かいたかったんだけど、このままうまくいくとも思えないわよね」

「そうだな」

「かと言って、ボクたちもリベルタスに行くくらいしか選択肢が今のところありませんからね」

「そうね。なぜか冤罪をかけられてるものね」

「冤罪ですか?」

「そうそう…そろそろアクアの町にもその話は回ってきそうよね」

「確かにな」

「ほ、本当に…わたくしを救ってくれたのは、皆さんなのにこんなことになるなんて…」

「リベルタスの国に行けることになったら、詳しい話を聞かせてもらうことになるかしらね」

「まあ、まずはそこまで行くためにも、この石についていろいろと聞かないとな」

「そうですね。それの話をしましょうか」


そうして、改めてヒメが石についての説明を始めた。


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