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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは追われる運命ってね!

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56話

公園につくとほんの少し前にいたはずなのに、久しぶりに感じるという、謎の心境に包まれながらも現在はそれなりに人がいて、にぎわっているようだ。

絡まれたときには人が避けてどこかに行っていたのにと思うと、今更ながらに見捨てやがってと少しは思うが、仕方ないことだと思う自分もいる。

だって、自分ならそんな面倒ごとに首を突っ込みたくないからな…

仕事なら首を突っ込むことはあっても、あのときは無給、まあしないよな。

そんなことを考えながらも、俺はここに来ることになった張本人に声をかける。


「それで、ここに来たのはどうしてなんだ?」

「それは、探し物よ」

「探し物?」

「そうよ」


どうやら、何か見つけてほしいものがあるらしい。


「特徴は?」

「わからないのよ」

「わからない?」

「ええ、急いでいたときに落としたものだから、何かわからないの!」

「そうですか…」


それで探せというのか…

なんという無茶ぶりだよ。

しかも、なんで不機嫌になってるんだ?

いや、こんなのだから周りの人に逃げられてしまったのだろうか?

俺はなんともいえない表情で少女の顔を見る。


「な、何よ、その顔は…」

「いや、別に…」

「さっさと探しなさいよ」

「それは、あなたたちもしなさい」


その言葉にへいへいと返事をして従うことにしようとしたが、アイラはそれを許さなかった。

一歩前にでると、声を荒げる。


「さっきからあなた、何様のつもりなの?」

「ヒメは…」

「やっぱりいいわ、興味ないもの」

「お、おい、アイラ…」

「だって、さっきからムカつくのよ。探し物があるのなら普通手伝うでしょ、それすらもしないのに要求ばっかりするなんて、一応年齢を聞いたときには年下だから優しくしてたけど、いい加減許さないわよ」


そう宣言する。

さすがに言い過ぎたのかと思い、少女の方を見ると、肩を震わせている。

これは怒られて泣いているのか?

そう思っていると、少女は顔をあげる。

その表情は怒りに満ちていた。


「ヒメは依頼をしてあげた側だってことをわかっているのかしら?」

「そうね。でも、依頼は護衛だったわよね。こんな宝探しみたいなことをしろとは言われてないわ」

「だったら依頼の前金を返しなさいよ」

「それならこっちだって、依頼と関係ないことをさせらそうになっているんだから、契約違反であれは迷惑料金としてもらうのが当然よ」

「何ですって」

「何よ!」

「「ガルルルル」」


k結局二人して、顔を見合わせて怒りだしてしまった。

オロオロとするバーバル。

あの前までの性格と違いすぎないかと思われるかもしれないけれど。本人いわく、あのときのことはサキュバスに操られていたからできていた性格らしい。

だから本人いわく、恥ずかしい醜態だと言っていた。

今のちょっと気弱な性格が本当の姿らしい。

本当なのかはわからないが…

今のところは気弱なバーバルはこの状況に戸惑っているが、俺とシバルは顔を見合わせると、どうしたものかとため息をはく。

ここから介入しないといけないのか…

そう思っていると、二人の争いは新たなる舞台になろうとしていた。


「別にあなたたちに護衛してもらわなくてもいいんだから仕方なくよ」

「それだったら別に護衛の依頼を解除すればいいじゃない」

「してもいいけど、困るのはあなたたちよ」

「どういうことよ…」

「ふふん、別に教えてあげてもいいけど、教えるに値するか、試させてあげるわ」

「どういう意味?」

「これよ!」


そう言って少女が取り出したのは、プレートだった。

あれは冒険者プレート。

しかも色は黄色だ、俺たちよりもランクが高い。


「ふふん、見たときから勝負して見たかったのよね」

「どういう意味?」

「他の町で話題の聖女様と騎士様ってことを言えばわかるでしょ?」

「なるほどね、目的はそれってことね」

「負けたら探し物にも付き合ってもらうわよ」

「負けたら付きあってあげるわよ」

「潔いのはいいわよ」

「はいはい」

「それじゃ、場所を移すわよ」


ヒメと自分のことを言っていた少女はそう言って前を歩きだす。

さっきまでの会話を聞いている限りだと、性格が悪かったのも、ここで探し物をさせたかったというのも、戦いがしたいがための建前なのかと思ってしまう。

こうして二人についていくことになった。

あれだ、それでも気になったことがある。


「アイラって武器をもっていたか?」

「それについてですが、前金で買ってるんですよ」

「そうなのか」


どうりで前金についても返すのが嫌なはずだった。

それにしても、そんなことで模擬戦が行われるとはさすがに思わなかったが…

場所を移して町の外にやってきた俺たちは戦いが始まるのを待った。


「それじゃ、始めるわね」

「ええ…」

「どうしたの?」

「ちゃんとした武器をもってたんだって思って」

「それはあんたも同じでしょ?」

「まあ、私は棒ならどんなものでもね」

「ふーん…」


二人の武器を紹介しておくと、少女のほうは、足のスカートの舌に隠すように装備していた二本の短刀。

二刀流というところだ。

アイラはというと、いつの間にか買っていた金属の短めの棒を取り出した。

それを見て、どことなく見覚えがある。

あれだろう、金属の収縮棒だ。

普通よりも長い警棒みたいなものだ。

あの戦いを見ていなかったことになっている俺は驚いた雰囲気を出す。


「あれは棒か?」

「はい、ただしはアイラが戦っていたところを見ていませんでしたね」

「ああ…棒で戦うのか?」

「そうですね、ああ見えてもアイラ様は棒術の達人でもありますから」

「そうなんだな」


まあ、知っていたけど…

なんてことを言ってしまえばいつものヘンタイが俺だとバレるだけなので言わないけどな。

それにしても、二刀流対棍棒か…

初めて見る組み合わせの戦いだな。

ゲームでもあんまり見ることないしな…

そんなことを思っているよ、戦いは始まった。

二刀流のヒメが先にしかける。


「ほら、どう!」

「何よ、そんな攻撃!」


ただ、それは棒によって完全に防がれる。

二刀流ということで、片方を防いだところでもう一つの刃が向かってくるが、それは体を動かすことによってかわす。


「へえ、元修道女だから動けないと思ってたんだけど」

「こう見えて、私は選ばれてるからね」

「へえ、何に?」

「それは別に教えなくてもいいでしょ?」

「確かにそうね」


そんな言葉をかわしながらも、ヒメは攻撃を繰り返すが、それをことごとくアイラは防ぐ。

いや、こんなに強いならアイラには前で戦ってくれた方がいいんじゃないのか?

そう思って戦いを同じように見ていたシバルを確認すると、嬉しそうに話す。


「さすがはアイラ様ですね。」

「いや、あんなに強いなら、俺たちって必要あるのか?」

「ありますよ。アイラ様は確かに一対一なら強いでしょうけど、ああやって戦いを始まると一対一じゃないと戦えなくなりますから」

「どういうことだ?」

「そうですね。すごく致命的で、単純な欠点なのですが、魔法が全体じゃなくて決まった場所しか守れなくなりますね」

「それは、致命的だな」


棍棒を使うと、そんなことになってしまうとは確かに致命的だった。

だって、これまでもアイラの魔法には守ってもらってきた。

それくらいにはアイラのホーリーバリアはかなり強い防御魔法なの。

それが全方位じゃなくて一部しか使えないとなると、かなり致命的な欠点になってしまう。

決まった場所にしか出せないとなると、もしかして…

アイラは戦闘にのめりこむタイプなのだろうか?

戦闘狂…

想像するだけでも、恐ろしいな。

そんなことを考えながらも、お互いの戦いを見ていたが、互角というわけではなかった。

当たり前ではあったが、アイラの方が押されていた。


「やっぱり口だけ?」

「口?そうね、そうかもしれないわね」

「なんだ、残念ね!」


その言葉とともに、ヒメは二刀流を振り上げる。

完全にもらったと思っているだろう。

でも、アイラはそれを待っていたかのように笑う。


「我の前に絶対に通さない聖なる壁を作りたまえ、ホーリーバリア」


そして、ホーリーバリアの魔法を唱えた。

急な魔法の使用に驚きながらも、ヒメは怯むことなく二刀を振り下ろしたが、それはホーリーバリアによって防がれる。

キンという音が鳴り、魔法で防がれたことがわかったヒメはすぐにバリアを蹴ることで距離をとった。


「なんていう硬いホーリーバリアなのよ」

「本当はこれだけで勝ちたかったけど、ホーリーバリアも私が使う力にはかわりないしね」

「そうね。むしろさっきまでその棒だけでヒメの攻撃を防いでいたことの方が驚いているわ」

「こう見えても強いって言われてたからね」


お互いに褒めあったところで、再度戦いが始まる。

そう思っていたときだった。

服の裾を誰かに引っ張られた。

そこにいたのはバーバルだ。


「どうした?」

「あれ!」


そう言って指さす方向には、黒服の男たちがこっちに向かっているのが見えたのだった。

どういうことだと思っていると、俺たちが戦いを見ていないことに二人は気づいたのか、俺たちが見ている方向を見ると、ヒメが口を開く。


「ちっ…面倒なことになっちゃったか」

「ねえ、あの集団こっちに向かってきてない?」

「狙ってるのはヒメでしょうね」

「どういうことって、それは勝てば教えてくれるのよね」

「別にいいわよ、ヒメは楽しめたんだから」


そう言葉にすると、ヒメは武器をしまった。

その様子を見て、アイラが声をかける。


「どこに行くのよ」

「どこに行くって、巻き込んじゃいけないんだからここから去るだけよ」

「へえ、私たちが受けた依頼ってなんだったか覚えている?」

「それは…」

「ただし!」


俺はアイラからの呼びかけに二人に近づく。

俺が知らない間に受けた依頼といっても、報酬をもらえると知って最後までしないっていうのも元社畜として、容認できないことだ。

俺たちは五人で集まると迎撃を行うことにする。


「そういうことだ。護衛依頼を受けたからにはちゃんとさせてもらうからな。」

「はい」

「わ、わたくしも頑張ります」


そして、俺たちは黒服の男たちと相対することになった。


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