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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
パーティーにヘンタイが増えた
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49話

手元にある石がなくなってきていることに気が付く。

さすがにそろそろキツイな。

でも、俺たちのほうはすでに完璧だ。

見えないものが見える、俺のヘンタイ眼がそれを認識していた。

魔力が高まるのを後ろで感じたなと思ったときには、それができているなんて、本当に驚きだ。

俺はパンツのせいで誰にも見えることはないが、口元をにやけさせる。

一人だけはそれに気づいていたようだが…


【ヘンタイね】

「(お前がいたんだったな)」

【だって、急に笑うんだもの】

「(仕方ないだろ、いいことなんだし)」

【それは確かにさっきまでのことを見てるとわかるけどね】

「(それで、どうして俺に話かけてきたんだ?)」

【勝ち確なら、もう話しかけてもいいでかなって】

「(いや、どういう理屈なんだよ)」

【まあまあ、いいじゃない。それでいけそう?】

「(ああ、後はあのサキュバスの魔法待ちだよ)」

【そうみたいね】

「(まあ、よく頑張っただろ?)」

【そんなヘンタイな見た目をした人が頑張ったって…何かヘンタイなこと?】

「(違うだろ?というか、こういうスキルになってるのはどう考えてもお前のせいじゃないのかよ)」

【えー、神に文句を言うとかさいってー】

「(え?本当のことを言っただけなんだが)」

【失礼にもほどがあるわね】

「(なんだよ!)」

【ま、今だけは許してあげるわ】


どういうことだと疑問を神にぶつけたかったが、それも言えない状況になった。

後ろの魔法が成功するためにも、俺はこの後の魔法をやり過ごすためにもやらないといけないことがある。

まずは大きく息を吸って、確認だ。

ふ…

今更だけど濃縮された女性のにおいは最高だな。

そこで俺は気づく。

そういえば、バーバルの下着をインキュバスの男がもっていたということは、バーバルはもしかしなくても下に何も履いていないというのか?

くう…

俺はバーバルの姿を想像した。

魔法使いの見た目ということもあるので、スカートはもちろん長いものだ。

見えそうで見えないじゃなくて、絶対見えないようなスカート…

でも、そんな絶対に見えないようなスカートも、いいな。

そんなヘンタイなことを考える。

力が徐々に湧いてくる。

そんなときだった、サキュバスも魔法を行う準備ができたようだ。


『これで、ヘンタイともども消えろ、消えろ』

「それはどうかな!」

『うるさい。』

「くる!」

「火よ」

「土よ」

『火を纏った石の礫で相手を撃ち抜け、ファイアーグラベル』


炎の礫。

それは石に炎が纏ったものだ。

よくある普通であれば、炎で防御を破り、炎によって熱くなった礫で火傷と怪我を負わせるものだろう。

普通では防げない。

魔力が高いのもあるけど、二つの魔法が組み合わさったそれは、先ほどまでやっていたような土で壁を作って攻撃を防ぐだけでは守りきれないだろう。

そんなときあることを思いだしていた。



「気というものがあることは知っているか?」

「そんなおとぎ話みたいなことあるはずないだろ…」

「こらー、バカにしちゃダメー」

「へいへい」


俺は昔道場に通っていた。

まあ、通っていたというよりは通わされていたという表現のほうがあっているのかもしれないが、確かに小学生くらいのときに、仲の良かった女の子が、よかったらと家に招いてくれたのが始まりだった。

そのときに何か大きな建物があることに気が付いた俺が、道場に忍び込み、怒られたが武術を教えてもらったのだ。

使うものは肉体。

後は気というものらしい。

当時は十歳になったくらいで、こういう胡散臭いものを、何も信じなくなっているときだった。

だから、それをその人もわかっていたのだろう。


「まあ、そういうな。僕だって何も見ていなかったら、そんなものは嘘っぱちだと思うぞ」

「そうかもだけど…」

「ほらほらー」

「何をー」


俺がはやし立てると、女の子は怒りだし、顔をべしべしと叩かれる。

俺は鍛えていたこともあって、痛くはなかった。

そんな様子を見て、男性は頭をポリポリとかきながらも言う。


「気なんてものはない。確かにそう思ってしまえば簡単だな」

「何が言いたいんですか?」

「そうだね。あるものをあると認識するのと、ないものあると認識するのにはかなり違いがあるってことかな?」

「えーっと…」

「難しいことだったかな?」

「そうですね」

「わかった、それじゃあ僕が気というものが、そこにあると証明してみせよう」


そしてそこで気というものを見せてもらった。

確かに胡散臭いそれは、何かで確かにあると信じることができたはずだ。

でもその出来事については忘れていて覚えていない。

それでも気をなんとなく思い出した。

確か…


「気というのは、自分の中に確かにあるもの。ただ、普通であれば一生ないものと自分で感じている。だからあるのだと、内側からめぐるように…生気はめぐって気をとなる!」



そんな言葉を思い出した俺は、心臓から血が送られてくるのと同じように、気が体内から湧き出てくるのを感じていた。

そしてそれは手に宿る。


「魔法は砕く!」


俺は目を見開いて、飛んでくる炎の礫を確認した。

ヘンタイ眼がさらに強く効果を発揮しているおかげか、どこかどの順番で攻撃が飛んでくるのかさえもわかる。


「おらおらおら…」


普通であれば防げないはずの魔法を俺は気を纏わせた拳で砕いた。

自分のところに飛来してくるものを全て殴る。


『そ、そんなこと!』

「どうだ!」

『それで全て防いだと思った?』

「土よ」

「土よ」

『敵を貫く槍となせ、アースジャベリン』

「なに!」


全てを防ぎきったところで油断していた。

そこを新しい魔法である、石でできた槍が通りすぎる。


『さあ、これで死になさい、死になさい』


そしてその槍は不意をついて、シバルを貫く。

本来はそうなるものだった。

でも石の槍はそのままシバルの体をすり抜けた。


『?!』


驚きを隠せないサキュバスだったが、すぐにその姿が陽炎のように揺らめくのを感じて後ろを振り返る。

でもそこにはすでにシバルの魔法剣が目前に迫る。


『あああああああああああああああ…』


そんな絶叫とともに斬られたサキュバスは地面に倒れた。


『くそ、くそ、私たちが私たちが、負けるなんて…』


その言葉を最後に体が霧散して消え、魔石だけが残る。

それは俺がインキュバスを倒したときのものとは大きく形状が違っていたが、それをじっくりと見ることもなく、俺はすぐにその場を後にしていた。

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