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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
パーティーにヘンタイが増えた
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48話

相手のサキュバスはそれを見て、諦める…

わけでは全くなく、むしろニヤニヤとほほ笑むのだった。


『私たちが、なんでふたりで個々の魔法を使っていたのか、教えてあげる』

「何?」

「まずいわよ」


俺とアイラはすぐにそれでまずいことに気が付いた。

サキュバスの魔力が膨れ上がっている。

このままでは大きな魔法がくる。

だからといって、近づいていいものかわからない。

シバルもさすがに、近づかないとあいつらを斬ることはできないだろう。

そんなときだった。


「はあ、はあ…」


そんな息の荒さとともに、俺たちがよく知る女性が前に歩いてくる。


「わたくしがなんとかします!」


その力強い声が響いた。

その言葉でアイラはバーバルの隣に立つ。


「行けるのね?」


それは優しいながらも力強い声音だった。

バーバルは力強くうなずく。

それをアイラは見ながらも、こちらを睨む。


「ほら、行きなさい!」

「お、俺も守るとか…」

「魔法使えるの?」

「くそ、行きますよ」


といっても、考えなしに突っ込むというわけではない。

まずは地面を殴る。

土が相手に向かって飛んでいく。

目くらましにどうだ。

ただ、サキュバスもそんなことでは動じることはない。


『鬱陶しい!』


魔法ではなく、背中の羽根で風を起こすと、土を散らす。

でも、俺の目的は達成されている。

俺はヘンタイスキルが上がっていることに気づいていなかった。

顔の目の部分にはブラジャーをつけているというのに、完璧に全てが見えているその眼を、俺は信じて時間を稼ぐ。


「おらおらおら!」


次はということで石を投げる。

といっても、今は一人の攻撃で、さらには魔法を警戒することで、近くないし、最初みたいにどれくらいの勢いで飛ばすかわからないからなんとか攻撃になっていたとは思っていたが…

簡単に避けられるとは、こちらもさすがにショックだった。

まあ、それでもやるしかないという状況なので、仕方ないか。

俺は攻撃を続けた。



「動けるでしょ?」


そんな声とともに、磔にされていたわたくしは、その拘束を解かれる。


「アイラちゃん…」

「声、ガラガラじゃない。」

「でもわたくし…」

「そういうのいいから、行けそうになったら逃げたらいいわよ」

「わたくしは…」

「嘘よ、あなたがしたいと思うことをしたらいいわよ」


それだけをアイラちゃんは言うと、前に行く。

ヘンタイな男とアイラちゃんは、口では言い合っているが、しっかりと連携できている。

確かに一部分を見ると、違うのかもと思えてしまうが、それは別の言い方をすれば、安心して攻撃をできている裏返しだ。


「わたくしにはない、本当の信頼というものね」


シバルちゃんは二人の言葉の通り、魔法剣というものを作りだそうとしている。

かなりの集中力がいるようで、目を閉じている。

普通であれば戦っている二人が心配になるはずなのに、それもない。

確かにあのヘンタイな見た目をした人が、サキュバスの幻影を破っているから成り立っていることなのかもしれない。

でも、わたくしたちがこのサキュバスと初めて戦ったときにはできなかったこと。

全員で何かをする。

お互いにカバーしあう。

そんな冒険者として当たり前のことをわたくしたちはできていなかった。

三人はそれをしている。

ああ…

わたくしの望んだ、求めていた冒険者というのはこういうものなのかもしれない。

役割があって、それをするだけなのも確かに大事で、それが普通で…

それなのに、このパーティーはわたくしが知っている限りでは前で戦うことのない、修道女のアイラちゃんが前で戦闘して、それをカバーするようにヘンタイさんが動いて…

だから、このまま魔法剣が完成すれば、サキュバスを…


「本当にそれでいいの?」


わたくしは自分に問いかける。

戦闘でよそ見をする時間も、魔力もないのかサキュバスはわたくしにかけていた魅了の効果は、ほとんどない。

少しであれば自分の中にある魔力で防ぐこともできる。

だったらわたくしだって、できることがあるのかもしれない。

そして、その時は訪れた。

サキュバスから、魔力の高まりを感じる。

何かがくる。

そう感じたわたくしは前に出る。

これまで使ったことのない魔法。

そして、これまで使うことがなかった魔法。


「はあ、はあ…」


少し前に進むだけで息が上がる。

それほどまでに弱った体。

こんな体でできることがあるのか?

その魔法ができると口にしてしまっていいものなのかすら悩む。

そんなときだった。

背中を優しく押される感覚がした。

そして叫ぶ。


「わたくしがなんとかします!」


その言葉で、それまで前にいたアイラちゃんがわたくしの隣に立った。


「行けるのね?」


その言葉を聞いて一瞬迷いそうになったが、また感覚が体を襲う。

だからこそ、力強くうなずく。

それを見たアイラちゃんはヘンタイさんに何か檄を飛ばして肩を貸してくれる。


「こう見えても、修道女魔法も使えるから、守りは任せなさい」

「はい」

「まあ、もし失敗しても、あのヘンタイが悪いから心配しないで」

「はい!」


わたくしは集中した。

これまで魔法を使う上で、これほど集中したことはないのかもしれない。

どの魔法がいいのか、それは決まっている。

最後くらいは、わたくしの魔法であのサキュバスが悔しがる顔が見たい。

出し抜きたい。

だまして一緒についてきて、巻き込んでしまったアイラちゃんたちが倒せるために…


「火よ、その熱で陽炎を起こし幻惑せよ、ヒートヘイズ」


サキュバスが使うのは幻影。

わたくしが使うのは陽炎。

ふふふ…

そう、痛めつけたあのサキュバスを今度はわたくしがだましてやるのよ。

そして魔法が完成したのだった。

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