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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
パーティーにヘンタイが増えた

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46話

わたくしは本当に、ついていない。

というよりも何もない人生だった。

母親も父親も顔やどんな人なのかさえも、知らない。

気づけば魔法学園の近くに捨てられていたらしく、魔法の才能があったからそのままどこかの家に引き取られたそうだ。

そこから、魔法使いになれという育ての両親のもとで魔法を学び卒業した。

卒業してからは魔法大学や、魔法を生かして就職をするという大勢の同級生を知りながらも、わたくしは少しなりたいものがあった。

それが冒険者だった。

何者でもない、わたくし自身になるためには一番いいもの、そう思ってわたくしはその道に進むことを考えた。

それを育てた両親に伝えると、気づけば魔法の国にいることが難しくなっていた。

それでも新しい場所に行くと、魔法使いということもあって、ギルドへと依頼を受けに行ったりしても、パーティーを即席で組んでもらったりして、うまくやってきた。

そうやって、その後もうまく続いていくものだと思っていた。


「あー…わたくしは…結局自分自身が可愛いだけなのね」


そう口にするには理由があった。

その日もわたくしたちは依頼をこなしていた。

依頼自体は本当に順調に終わった。

後は談笑しながら帰路につくものだと思っていた。

でも、おかしかった。

外に出られない。

なかなか外に出られないことに気づいた一人が、おかしいと声をあげて、状況を整理しようということになって集まろうとしたときだった。

パーティーの一人が何かで斬られていた。

そう気づいたときには、体が真っ二つだった。

そこからは早かった。

臨戦態勢をとったが、敵がどこにいるのかもわからない。

そんなときだった、クスクスと女性の声で笑い声が聞こえてきた。


「いい獲物が釣れたね」

「私たちが気に入るものでよかった」

「さっきはルビがやってくれたから、次はアビかな」

「そうだね」


姿形が見えないのに言葉だけが聞こえる。

敵が何かわからないこの状況に、わけがわからなくなっていると、修道女魔法を使っている少女が叫んだ。

その少女は元々教会で修道女として学び、その後冒険者になった、わたくしと同じような境遇の少女だった。


「サ、サキュバス!」

「サキュバス?」

「逃げないと、逃げないと」

「ちょっと!」


そしてわたくしたちの言葉を無視するように修道女は逃げようとする。

でも、相手は姿が見えない。

だから慌てて逃げた修道女は、捕まる。


「え、ちょっと…」

「捕まえたー」

「やめて、やめて!」


捕まった修道女は、体が浮いている。

手に何かがついてるのが見える。

ということはそっちに向かって魔法を撃てば…


「火よ、相手を焼き尽くす炎となせ、ファイアー」


火の魔法を放った。

でも、すぐに嫌な声が聞こえる。


「いいのかな、そんな魔法を放って」

「いいじゃない。必死なのよ」

「な…う、上へ!」


そう、姿が見えない女たちは、修道女を盾にしようとしてきたのだ。

だから慌てて魔法を上にそらす。

それによってなんとか魔法を仲間に当てることだけは避けられたが、それでもこれでわたくしには打つ手がない。

どうしようかと思っていたときには、もう一人の男が斬られていた。


「いや、いやー!」


その瞬間に弓使いである少女の悲鳴が聞こえる。

パーティーはわたくしを含めて五人いたはずだったが、騎士の男が最初に真っ二つにされて、次は戦士の男がやられた…

残ったのは、修道女と弓使い、魔法使いのわたくしだけ…

この残されたメンバーは普通は前で戦わない人ばかりよね。

それに、残されたのは女性ばかり…

ってもしかして!?

その嫌な予感を感じて、背筋にこれまで感じたことのない冷や汗を感じながらも、なんとかここから逃げれないかと考える。

仲間になったといっても、わたくしは今日だけのパーティーだったから…

でも、そこで信じられない光景を見る。


「もういいかな、もういいかな」

「殺しましょう、殺しましょう」


そんな言葉とともに、恐怖で動けないわたくしたちの目の前で、修道女は何か縄でさらに縛られる。

鈍い声が聞こえながらもそのまま修道女は殺された。

あまりな出来事にその後のことはあまり覚えていなかった。

気づけば鞭のようなもので体を拘束されていた。

弓使いの少女も殺されていて、残ったのはわたくしだけ…

といってもすぐに殺されるだろう、そう思っていた。

でも違った。


「ねえ、アビ、いいこと考えた」

「ルビ本当?」


目の前でずっとクスクスと楽しそうに笑う、二体のサキュバスと呼ばれた存在は何かを耳打ちしあう。

布面積は小さい服を身にまとっていて、気づけば修道女と弓使いを食べ、二人の姿になったサキュバスはそれまでの醜いような姿ではなく、その貼り付けた笑顔以外は綺麗だった。

そんな異様な光景を眺めながらも、死にたくないと願ってしまった。

それを楽しむように二体のサキュバスは言う。


「それじゃ、魅了をかけるね」

「そうね、そうね」


その言葉とともに、サキュバスと目を合わせた瞬間に意識は遠のいていく。

その後、気づいたのは何かが頭の中に入ってきた感触があったその後で、何かがわからないまま磔にされていた。

もうすぐわたくしも殺されるんだ、そう思っていた。

だから、修道女と弓使いの顔が合体した何かがこちらに向かってくるときに、違和感を覚えながらもこれで死ぬのだろうと確信した。

それなのに、なぜだろう。

わたくしとサキュバスの間に木が飛んできた。

呆気に取られていると、サキュバスは、わたくしたちと戦ったときとは違い、かなり焦っている様子だった。

どういうこと?

それに、わたくしたちが戦ったときよりも禍々しいと感じる見た目をしているのに、そんなサキュバスが焦る相手って?

訳がわからないままも、わたくしは木が飛んできた方向を見る。

そこにはわたくしが見たこともない恰好した…

ヘンタイがいた。

何が起こっているのか理解できなかったが、そのヘンタイが追いつめているのだということだけはわかった。

だけど、サキュバスはそんなこと関係なく、幻影の中に消えようとする。


「gnい…」


幻影に入ったから逃げて、そう叫ぼうとしたのに、それは叶わなかった。

どうしてか体が自由に動かせないからだ。

幻影に入ってしまえば、サキュバスの姿は誰にも見えない。

だから、あの変な人もやれられてしまう、そう思っていたのに…

男は声を荒げる。

そして拳を振り上げる。


「だから、俺には無駄だってな!」

『ちぃいいい』


その拳は何もないところを殴ったように見えたが、何かの声と衝突音。

そして、サキュバスがそこから現れる。

どういうこと…

見えてるってこと?

わけがわからないでいる、わたくしの前にその男は立った。


「ふ…俺に任せな」


セリフは確かに格好いい。

でもその見た目は、ただのヘンタイというおかしなギャップに呆気にとられながらも、目の前でヘンタイと勝ち目がないと思っていたサキュバスとの戦闘は始まった。


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