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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは世界を救う

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376話

神様であるスターと言い合ったのは、ただしに向き合いたくなかったからだった。

それを、ただしはわかったのだろうか?

消えてしまったその場を見ながら、そう思う。

転生者だったからなのか、ただし自身を倒すと、その体は消えてしまった。

よくある、倒した相手を抱きしめたりを、少しでもできればと思ったのに、できなかったことを考えると、本当にただしも勇者たちと同じ存在だったということなのだろう。

改めて、アイラはそのことを認識した。


「終わったんだ」

「そういうこと」


私がそう言葉にすると、神様である、スターは頷く。

ただ、終わったというのに、私たちは神界にまだとどまっていることに疑問に感じた。


「えっと、私たちは、戻れないの?」


その疑問に、答えたのは、スターではなくて、もう一人の神様だった。

ただしにプレイと呼ばれていた男…

ではなく、いつの間にか女性になっていた彼女は、言う。


「アイラさん。あなたが願い事を言わない限りはここにいることになりますよ」

「そうなんだ。って、納得している場合じゃないんだけど、その姿はどういうことなの?」

「ええっと、これは…」


プレイは言いにくそうにしている。

スターは知っていたというのだろうか?

そう思ってスターの方を見たが、スターも驚いているのか何も言うことができなくなっていた。

ただ、姿が女性というのを見て、アイラはなんとなくただしがプレイと二人きりになったときにどんなことを話したのか理解できてしまった。

それに、ただしが神様にならなかった理由というのも、プレイという女性のことだと考えると、納得してしまう私がいた。


「それじゃあ、私が何か願い事をすればいいってことでいいの?」

「はい、そうなりますね」

「そっか、願い事ね」


アイラ自身、こうなるとは予想していなかった。

でも、確かに魔王になってしまったただしを倒したというのであれば、それができるということも理解はしていた。

ただしに聞いていたからだった。

魔王を倒すということが、勇者たちがやりたかったことであり、さらに勇者たちはそれをすることで願いを神様が叶えてくれるというものだった。

勇者たちは魔王を倒すことができなかったけれど、私たちができたのだから、それを行った人にその権利が変わったということなのだろう。

何を願うのが正解なのか正直なところ、アイラには何を願うのが正解なのかわからなかった。


「シバル、何にすればいいと思う?」

「ボ、ボクに聞くんですか?」

「だって、こういうのって、わからないじゃない!」

「それは、ボクだって同じですよ」


こういうときには頼りになるシバルに聞いてみたけれど、いい反応は返ってこない。

ならばと、今度はバーバルの方へと視線を向ける。

ただ、バーバルも私と目があったときには、やれやれと手を広げる。


「わたくしに言っても、ダメよ。ただしを倒したのは、アイラ…あなただもの」

「そうなんだけど」


そう言われると、自分が倒さない方がよかったのかと思えてしまう。

でも、シバルやバーバルのスキルを考えると、ただしを倒せていたのかわからない。

だから、ケッペキスキルを持つ私が倒したのだけど、願い事というものは思いつかない。

ううん、一つは確実にある。

それは…


「ただしと、また一緒に冒険をしたいっていける?」

「えーっと、プレイ、わかるかしら」

「はい。難しいですね」

「なんでも、願い事が叶うのなら、ただしと一緒に願うのはダメなの?」

「はい…」

「どうして?」

「ただしは、特殊すぎるのです。今のただしは、魔王であり神になりそこねた転生者という存在なのです。そのような存在がまた、世界にいるということになれば、世界のパワーバランスが崩壊するのもそうですが、他の神たちの標的になる可能性があるのです」

「それでも、ただしを…」

「それに、ただしは、今役割を終えた存在になっています」

「どういうこと?」

「これには、勇者たちがどうなったのかを話さないといけませんね」


そして、語られること。

それは、この世界に来た勇者たちがどうなったのかということだった。

消えてしまった勇者たちがどうなったのか、それを聞いて、私たちは驚いた。

そう、勇者たちは、消えてしまった後に元の生活に戻るのだという。

どういう意味なのだろうかと、普通ならば考える内容ではあるが、それは勇者たちが召喚された存在だからということだった。

召喚されたため、当たり前のことだけれど、役目を終えると元の世界に帰るというのが、本来の勇者ということだった。

今回の勇者は魔王を倒してはいないものの、勇者たちは自分たちがどうしたいのかを考えることができた。

それが、勇者たちが元の召喚を終えるためのもう一つの方法だったということで、ただしはそれを見つけ出し、全員を送り返すことができた。

一人を除いて…

ただしの幼馴染であり、すでに世界の中で亡くなっていた勇者は、元の世界に帰ることはないのだという。

それは、この世界で死んでしまったからだ。

肉体と精神が、生きている存在でなければ、帰ることができない。

そして、ただしも当たり前ことだけれど、転生者。

存在としては、元の世界では肉体だけが亡くなった存在なのだ。

あとは、精神が亡くなればとなるのだが、その精神を違う世界に転生させたのだ。

それが、この世界で一緒に戦った存在のただしとなる。


「言っていることがわかるようで、わからないような…」

「難しかったでしょうか?」

「大丈夫なんじゃない?アイラの頭がちょっと弱いだけだから」

「えっと、スター?喧嘩をうってるの?」

「その弱い頭で考えてみれば?」

「なんですって!」

「アイラ様!」

「ご、ごめん、シバル…」

「あなたもよ…ただしがいなくなったからって、アイラに八つ当たりはよくないわね」

「ふん…」


シバルと、バーバルに私たちは窘められる。

ただ、少し落ち着けたおかげで、内容をなんとなく理解した私は、再度願い事について考える。

何が願い事にできるのか?

結局、願いはただしと一緒にいれることしかないのだけど、それが叶わないと言われてしまえば、アイラとしても他に何かを願うということがなかった。

だったら、他のことを願うのか?

私はそう考えたところで、ありえないと思ってしまった。

ただしは、全員を救うために諦めないというべきなのか、奇想天外なことを思いついて実行した。

その仲間である、私がこんなに簡単に諦めていいのと言われれば、ありえない。

だから、考える。


「あ…」

「どうしたのですか、アイラ様」

「いい案、あったかも…」


そして、私はそれを実行できるのかを神たちに相談するのだった。


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