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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは世界を救う

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374話

夢心地の体験が…

終わってしまったことに茫然としながらも、ヤミとスターのことを見る。

二人は、先ほどの二人。

シバルとバーバルとは違い、何がとはいえないが、それは十分にはない。

そもそも、スターのことを今更ながらにちゃんと見ると、子供のころと見た目がそこまで変わっていないように思える。

それだけで、スターが神様なのだということを再認識するとともに、神様でも見た目を変更したりはしないんだなと思ってしまった。

そんなことを考えていたせいだろう、スターが俺のことを蔑んだ目で見ている。


「どうしたんだ?」

「言わなくても、わかってるでしょ?」

「確かにそうだな」


当たり前のことだけど、俺がスターのある位置を見て残念に思ったからだろう。

だって、仕方ないことだ。

俺たちが出会ったのは、俺が子供のころだ。

そのときから、スターの姿が成長していれば、俺だって別に残念なんかに思うことはなかっただろう。

ただ、スターの姿は変わっていないように見える。

だからこそ、俺は視線に残念だという想いを込めただけなのだ。

確かに、こういうときによくない視線を向けるというのは、男としてダメだとはわかってはいるが、助けにきた神様が、綺麗な女性に変身しているのではなく、全く姿が変わっていないとなれば、少しは残念に思っても仕方ないことではないのかと考えてしまう。

といっても、それは年齢だけが上なヤミと同じといえば同じなので、ヤミにも同じ目を向けておくと、すぐにヤミも俺の視線に気が付いたようで、胸の前で手を組む。


「おぬし、どうしてすぐにそういう思考になるのじゃ」

「男なんだから、仕方ないだろ?」

「確かにそうなのかもしれないのじゃが、魔王として消えるなんてことを言っておるタイミングでも、それが変わらないことに、わらわは驚いておるのじゃ」

「そう言われたら、確かにそうだな」


ヤミに言われて、納得する。

確かにそうだ。

普通に考えれば、死ぬ前になれば、取り乱したりするものだ。

でも、取り乱したりしないのはヘンタイスキルを持っているからなのか?

ここにいるアイラたちのような美少女に、倒されるのであれば、ヘンタイとしては、それは一種のご褒美だと感じているからかもしれない。

俺が変な表情をしていたせいなのだろう。

ヤミが俺のことをジト目で見てくる。


「なんだ?」

「おぬし、またよくないことを考えておるのじゃろ?」

「どうしてわかるんだ?」

「おぬしの表情を見ればわかるのじゃ…どうしてわらわも、こんなヘンタイな男を好きになってしまったのじゃ」

「ま、そういうこともあるだろ?」

「確かにそうなのじゃが、おぬしに言われると腹が立つのじゃ!」


そんなことを言いながら、ヤミは怒りだす。

ただ、俺に言われても仕方ないことだった。

どうにもできないことだってあるのだからだ。

こういうときに気の利いたことを言えるのであれば、俺は童貞なんか、簡単に卒業できていたはずだからだ。

といっても、今更なのだから、怒られてもどうしようもないというだけだった。

そして、俺が絶妙な顔をしていたからなのだろう、ヤミはため息をつく。


「はあ、こういうことを言うのも今更じゃな」

「そうだろ?だから、言われても仕方ないと思わないか?」

「確かに、そうじゃな。今更じゃ…でも、だからといって、わらわの代わりに面倒ごとを引き受けるっていうのも、おかしな話しじゃと思うのじゃ」

「なんだ、急にそのことを話すのか?」

「仕方ないじゃろ?わらわたちに相談がないことは、前からのことじゃったが、急におぬし自身のことを倒してくれとは誰も頼まれると思っていなかったのじゃからな」

「確かにそうだけどな、全員を救うためには、これしかなかったんだよ」


俺がそう言うと、ヤミは真剣な眼差しで俺を見る。


「それはわかったのじゃ。でも、わらわは言っておくのじゃ、そこにおぬしは含まれておるのじゃな?」


嘘を許さないようなヤミの瞳を向けられて、俺は一瞬息を吞むが、頷く。


「ああ、含まれている」

「なら、わらわから言うことは終わりなのじゃ」


俺の言葉を聞いたヤミは、納得したようにうなずいて、顔を緩めた。

それを見た、俺はここでいくしかないと、ヤミに言ってみる。


「そうかよ…シバルたちのように、触らせてはくれないのか?」

「調子にのるななのじゃ」


ただ、予想通りというべきか、ヤミはそっぽを向くとそう言葉にした。

そうだよなと思いながらも、俺は次にスターの方を向く。


「何?」

「何って、言われてもだな…」

「別に、あたしと話しをしなくても楽しそうなんだから、それでいいんじゃないの?」

「そういうわけにもいかないだろ?」


不機嫌なスターを見て、さすがに放っておくわけにもいかなくて、そう言葉にするけれど、不機嫌なのは変わらない。

ここでいい言葉が出てくるわけでもなかった俺は、どうするべきかを考えた結果頭をなでることにした。

どうしてなのか、それは昔のことを思い出したからだった。

かなりの昔、スターと俺が出会って一緒に修行を受けていたときに、スターと二人でいるときによくやっていたことだったからだ。

頭をなでるというもの。

スター曰く、それによって元気になるのだという。

やる人が大事だけどね、やる人が、ね…

昔にそんなことを言われたのを覚えていたからだ。

ただ、スターの頭を撫でたところで何かを言ってくれるということもなかったので、俺はやめようとしたのだが、その手を掴まれる。


「ただし?」

「は、はい」


これはやめるなということなのだろうと、理解した俺は続けるのだが、スターが何かを言ってくれることはない。

でも、どことなくなつかしさを感じながらも、俺はゆっくりと頭をなで続けるのだった。


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