371話
急にただしが神様といなくなったことによって、私たちは慌てていた。
「どういうことなのよ」
「あたしにだって、わからないから!」
絶対にわかるであろうスターと呼ばれた神様に聞いたのだけれど、そのスターはというとわからないというばかりであまり役に立っていない。
それでも、アイラは必死にこの状況がどうなっているのか考える。
どうしてただしは神様と一緒にいなくなったのか…
もしかして私たちと一線をこえなかった理由というのが、女性に興味がないというものであれば…
そこまで考えて、少し納得する。
ヘンタイというスキルであれば、それくらいのことがあっても不思議ではないからだった。
でも、そうなると気になることもあった。
他のみんなが落ち着いているということだった。
騒いでいるのは、私とスターだけで、シバルたちは何かを話しているようで、特に騒いでいるという感じではない。
「シバル、どう思う?」
「アイラ様、ただしのことですよ。大丈夫でしょう」
「確かにそうなのかもしれないけど。心配するのはそこじゃないと思うのよね」
「大丈夫ですよ、アイラ様。ただしです。どういうことをしているかはわかりませんが、ボクたちが悲しむようなことはしないと思いますよ」
「そうね。確かに、心配しても無駄だもんね」
「はい」
「そうよ、アイラ。心配しても、今更なのだから気にしてはダメよ」
バーバルもそう言う。
確かに私たち三人は、この中ではただしと一番長く一緒にいた。
期間としては、確かに短いものではあったものの、一番わかっているはず。
だから、二人と同じようにここはどっしりと構えておくのがいいということもわかってはいる。
だけど、不安だと思ってしまう。
ただしのことは信頼している。
でも、ただしは一人でなんでもしてしまうということを私たちは知っている。
ただしがすることについては、確かに必要なことで、大事なことが多い。
ただ、ただしがやることは、本当に一人ですべてをやってしまうため、私たちが何かを考える前に決めてしまうことが多い。
その考えていることはうまくいくことが多いとはいえ、私たちが納得する内容なのかといえば、正直なところわからない。
だから、今はただしが普通に戻ってくることを願っていた。
そんなときだった、ヤミが何かに気づく。
「おかしいのじゃ」
「どうしたの?」
「アイラ…わらわの中にあった力が、どこかなくなったように感じたのじゃ」
「力ってなんのこと?」
「わらわにも詳しいことはわからないのじゃ、でも体の中にある何かがなくなった感覚というものがあるのじゃ」
「そんなあいまいな感じだと、わからないんだけど…」
いつものことではあったが、ヤミはあいまいにそんなことを言うけれど、私たちはそれがなんなのかわからない。
でも、それに気づいた人は、この中にいる。
「あなた…」
「どうかしたのじゃ?」
「魔王としての力が体の中からなくなっているわよ」
「うん?そうなのかのじゃ?」
「なんでわからないのよ…」
「だって、わらわも力を取り戻したのは、最近じゃからな」
「自信満々にそういうことを言うんじゃないの…」
「そうはいってもじゃな、わからないものをわからないと言うのは当たり前のことじゃと、あやつは言っておったのじゃ」
「はあ、ただしがね…納得はするけど…」
「そうじゃろ?」
「ええ、そうね」
「それで、わらわの体から魔王の力がなくなったというのは、どういう意味なのじゃ」
「そんなのあたしは、わから…」
スターはわからないと言おうとしたところで、何かを考えこむ。
スターが何を考えているのか、わからないでいた。
それでもその時はやってくる。
「よ!」
「ただし!」
「ちょっとぶりだな」
いつの間にかただしが帰ってきている。
いつものように笑うただしは、何をしてきたのだろうか?
私はわからない。
でも、すぐにわかった人がここには二人いた。
「なんで」
「なんでなのじゃ」
スターとヤミはただしを見て驚いていた。
私にはすぐにその理由がわからない。
でも、それがなんなのかはわかってしまう、二人の言葉によって…
「「どうしてただしが魔王になってるのよ(なってるのじゃ)」」




