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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは世界を救う

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368話

構えを取らないのに対して、彼女は不振に思いながら言う。


「構えをとらなくても、俺は戦いますから」


そして、拳を振るってくる。


「シンカイ流、一の拳、トルネードゴッド」


その言葉とともに繰り出してきた技は、クロに乗り移った際に見たことがある、俺と同じような技だった。

俺はその攻撃を受け流しながら、彼女を引き寄せる。

攻撃が来ると思って彼女は目を閉じて身構えるが、俺は受け流した方の逆の手で攻撃した拳を下ろさせる。


「なんで…」


思ってもいなかった行動に彼女は戸惑うが、俺は当たり前のように言う。


「決まっているだろ、お前が女だということをわかっているからだ」

「それは、どうして…」

「驚かれてもな、神界で出会ったときにはわかっていたからな」

「そうなんですか…」

「まあな、こう見えても俺のスキルはヘンタイだ、パンツを被っているときは、男なのか女なのかくらいはわかる」

「そ、そういうものですか…」

「ああ」


そう、俺は最初からわかっていた。

彼が彼女だということは…

だからこそ、戸惑ったというのもあった、女性がスター一人しかいないということについても嘘のようなものになるからだ。

それに、神界にいた女性全員を元勇者とやらが連れていったという話しも嘘になってしまうからだ。


「ふふ、ふははは…確かにスターが大好きな君は、女性に対してはそういう反応をするよね」

「まあな、俺は女性ってわかればこれくらいのことはするぞ」

「確かにそうかもだね」


こういうところで納得されるというのも、少し嫌ではあるが、ここで下手なことを言ったら、余計に面倒なことになると思っていた俺は、素直に気になっていたことを聞くことにした。


「いい加減、この世界のこととか、ちゃんと教えてはくれないのか?」

「この世界のことですか?」

「そうだ。俺が連れて来られた本当の理由とかも含めてな」

「それは、スターが話してくれたんじゃないんですか?」

「今までのことを考えると、スターがこれまで言ってくれたことが本当のことだとは思えなくてな」


俺がそう言うと、彼女は観念したようにその場に座る。

そして、隣の床をポンポンと叩く。

これを意味するのはあれだろう、隣に座れということなのだろう。

俺がおとなしく隣に座ったところで、彼女は話しをする。


「はあ…スターから、あなたが変わった人だということはわかっていましたが、ここまでとは思いませんでしたよ」

「そうなのか?」

「はい。スターがこの世界に戻ってきたときに、いろいろなことを聞いていましたから」

「いろいろなこと、よくないことも言ってそうだな」

「そうですね。スターは何もかも話してくれました」

「仲良ったってことだよな…」

「はい」

「だったら、どうしてスターは他の神様たちの生贄のような感じになってたんだ?」

「それについては、俺も驚きました」

「何かがあったのか?」

「はい。俺が神界にいない間にあったんだ、勇者召喚の儀がね」


彼女はそう言う。

勇者召喚の儀?

よくある物語で聞く内容ではあるそれになんの意味があるというのかわからない。

物語でよくあることといえば、この世界の人が勇者召喚の儀をして、行うものだ。

でも神が言うっていうのは、どういうことなのだろうか?


「わからないのか?」

「いや、だって勇者召喚の儀だろ?そういうのは、普通困った人たちがやるものじゃないのか?」

「困っている人たちね…」


俺はそこで、アイラたちのことを考える。

アイラたちは果たして困っていたのだろうか?

そう考えると、疑問に思ってしまう。

魔王が復活したことを考えれば、普通であれば勇者を召喚するのは当たり前のことだ。

でも、そうじゃなかった場合を考える。

ヤミたちのことも含めて、すべてを神が仕組んだことだと考えると…


「もしかして、神様が勇者召喚を行ったってことなのか?」

「はい。わかりましたか?」

「言われて、わかることはわかるが…」


本当に最初から、勇者を召喚したということか…

でも、そうなるとわからないことがあった。


「俺の存在はどうなんだ?」

「ただし、あなたの存在は希望だったのです。俺とスターの…」

「どういうことだ?」

「スターを救い、勇者を救うための存在だということです」

「確かに、勇者は俺に関係がある人たちだったな」

「はい。おかしいと思いましたよね」

「当たり前だ。一歩間違えれば、俺がおかしく…そういうことか…」

「はい…」


彼女が言いたいことがわかってしまった。

そして、神様たちが何をやらせたかったのか、それに対して、スターや彼女が俺に何をさせたかったかということも…

この世界に転生させられたことについては、偶然もあるのだろうが、それでも俺がこの世界に来るということは確定していたのだろう。

もともとは、スターが召喚する勇者というのが、俺という存在だったのかもしれない。

そんな俺は、他の勇者とは同じであり、違う役割をもっていた。

俺が他の勇者にやられてしまうのか、もしくは改心させてしまうのか…

それこそ、心を壊されるのか、治すのかということになるのだろう。


「うまくいったってことだな」

「はい。だから、仕上げということです」


そう彼女は言う。

彼女の表情で何をすればいいのかすぐに理解した俺は言うのだった。


「ま、断る。ヘンタイなんでね」


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