367話
すべての勇者がこの世界からいなくなった。
俺たちは神がやろうとした企みとやらを阻止できた。
「それで、これからどうすればいいんだ?」
「そういうのは、ここにいる神様に聞いたらいいんじゃないの?」
「それもそうだな」
「え?あたし?」
「ああ」
「えっと…」
どうしたらいいのかがわからなくて、スターに聞いたのだが、スターは言葉に詰まるだけだった。
その反応を見て、俺は首をかしげる。
「何かあるだろ?」
「そんなのあたしにわかるわけないでしょ」
「どうしてだよ。神様が勝手にやろうとしていたことについては、俺たちが阻止しただろ?」
「それはそうね。でも、あたしだってこんなにうまくいくと思ってないから、その後どうするかなんて考えてなかったの」
「そうなのか?」
「そうよ。それに、ただし…あんたが神様みたいなものになって、神界に来るなんてこと、あたしは想像していなかったんだからね」
「確かに、俺もそれについては否定できないけどな」
確かにスターが言うことも一理あった。
俺も完全に予想していなかったことだからだ。
それでも、できてしまったのだから、この後には何かしらをしないといけないはずだからだ。
それは、この後に何が起こるのかわからないからだ。
当たり前だけれど、ここに俺たちがいるのは、俺がヘンタイ神としてあがめられたからだ。
だから、もし俺が崇められなくなれば、この世界からいなくなるということになるのだろうか?
それについては正直なところよくわかってはいないが、何かをするというのであれば今この神界にいるうちにしないといけないということは確かだろう。
何をするのが正解なのかわからないでいると、一人だけ冷静だったメイさんが言う。
「えっと、ただしさんたちは、ここに何をされに来られたのでしょうか?」
「俺ですか?俺は気づいたら連れて来られていただけで、あえてこの場所に来た意味を言うのならそこにいるスターを救うためにですかね」
「そうなんですね。わたしは先ほどの女性。綺さんから詳しい説明を受けて、神様というものに何か言ってやるためにここに来たのですが…いざ神様に会ってもあまり言いたい言葉が浮かびませでした」
「そうなんですか?」
「はい。ですので、そろそろこの神界というものから帰ろうと思うのですが…」
「えっと、そう言って簡単に帰れるものなんですか?」
俺は思わずそう聞く。
今更ながらに、この神界にどうやって来れたのかというのは、説明を受けたが、帰りかたについては説明を受けていなかったことに気づく。
俺は知っているだろうと、アイラたちの方を見るが、全員から目を逸らされる。
この反応は知らないということなのか?
「シバル?」
俺はこういうときに頼りになるであろう仲間の名前を呼んだが、シバルは顔を逸らしたまま言う。
「すみません、ただし…ボクもそのあたりのことは聞いていなくて…」
「まじかよ。じゃあ、ここから出られないってことなのか?」
「そうなるのかもしれません…」
これはまずいことになりそうだ。
そう思っていると、頭を叩かれた。
「いてえ…」
「軽くしただけなのに、痛いはずないでしょ?」
「でも、衝撃はくるだろ?」
「それでも、わざとらしすぎるのよ」
「確かにそれは否定しないな」
スターに言われたように、確かにわざとらしかったのは否定しないが、急に頭を叩かれたのだから、こうなっても仕方ないじゃないのかと思うのは俺だけじゃないはずだ。
ただ、このタイミングで頭を叩かれたということは、何かいい案があるということなのだろう。
「それで、このタイミングで頭を叩かれたってことは、何かあるのか?」
「それについては、あたしからじゃなくてそこにいるやつからだけどね」
スターがそう言葉にする先にいたのはスターを助けていた神だった。
「ようやく会ったな」
「俺に会いたかったんですか?スターじゃなくて?」
「いろいろあった相手だからな、会いたくなるっていうのも普通じゃないのか?」
「そうかもしれませんが、戦った相手ですよ。普通なら会いたくないと思うのが普通かと思いましてね」
「そういうところは、ヘンタイの心で流してるからな」
「そういうものですか?」
「そういうものだ」
なんでだろうか、仲良くなると全員といっていいほどに会話をすると軽口を叩くようになるのは…
そんなことを考えながらも俺は、本題に入ることにした。
「それで、結局は俺に何か用だったのか?」
「それはですね。この世界からの帰り方と、世界の終わらせかたについてです」
「それは…」
なんだ?
と口にしようとしたところで、そいつはパチンと指を鳴らす。
するとどういう原理なのかはわからないが、俺とそいつだけの二人になった。
「何が起こった?」
「簡単なことです。この世界を終わらせるためには必要なことなだけですから」
そう言葉にするとそいつは構えをとる。
まるで戦いが起こるかのように…
俺は戸惑うが、彼女は言う。
「さあ、俺を倒してください」
だが、その姿を見ても、俺は構えを取ることはできなかった。




