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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは世界を救う

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366話

「お兄ちゃん、次は叶の番だよね」


綺が消えたことによって、叶がそう口にする。


「叶…」

「大丈夫。叶は、もうアイラたちに説教されちゃったから…」


叶はそう言って笑う。

叶のことは、アイラたちからある程度のことを聞かされていた。

叶のスキルがヤンデレということを聞いたときに、俺はどうしてそうなったのかがわかってしまった。

現実世界で、叶とは、普通の兄妹だった。

ただ、クロのことお姉ちゃんのことがあり、俺自身がおかしくなったせいで、叶もそんな俺をなんとかしようという考えばかりが思い浮かんだのだろう。

だからこそ、叶は気づけば俺のことを気遣う。

俺のことばかりを考えることで、ヤンデレのようなものになったのだろう。

そんな叶に俺はゆっくりと近づく。


「お兄ちゃん…」

「お疲れ様」

「あ、ありがとう」


俺は叶の頭をなでる。

このお疲れ様というのにはいくつかの意味がある。

この世界でも、俺のことを気にかけてくれてお疲れ様ということ、そして俺のことをもう意識しなくてもいいということについてのお疲れ様という意味だった。

叶がこうなってしまったのは、元をたどれば俺のせいではあったのだからだ。

俺がもう少ししっかりとしていれば、叶が悩むこともなかった可能性が高かったからだ。

だからこそ、叶には俺に執着することもなく、これからというものを過ごしてほしいと考える。

それを俺は伝えるべく口を開こうとしたところで、叶は頭をなでていた手を払いのける。


「叶?」


いきなりの行動に俺は驚くが、叶の表情はどこかいたずらが成功した子供のような感じだった。

その叶はニカっと効果音がでそうな笑顔を俺に向けると言う。


「お兄ちゃんは、何も心配しなくてもいいんだよ」

「どういうことだ?」

「だって、叶は別に最初からこうだったから…」

「最初から?」

「そうだよ。お兄ちゃんが気にすることはないってこと」

「そうなのか?」

「うん。だって、今もこれからも叶はお兄ちゃんだけが好きだから」

「そ、そうか…」


兄妹だからと言いたくはなるが、その笑顔がすがすがしいものになっていることで、俺は何も言えない。

そんな俺の表情を見て、叶は嬉しそうにする。


「大丈夫だよ。お兄ちゃんに迷惑をかける気はないからね」

「どういうことだ?」

「簡単なことだよ。お兄ちゃんが大好きな叶だよ。だったら、お兄ちゃんと結婚できるように、叶は元の世界でそういう法律でも作ってみせるから!」

「それはまた、なんとも無茶な…」


俺はそう口にするが、叶はさらに満面の笑みで言う。


「何を言ってるのお兄ちゃん。これくらいの無茶くらいはなんとかするのがお兄ちゃんでしょ?だったら、妹の叶だって、同じくらいのことをしないといけないと思わない?」

「そういうものなのか?」

「うん。だから、お兄ちゃんもたくさんの人を愛せる体になっておいてね」

「それはどういう意味だ?」

「わかってるでしょ?」


叶にそう言われて、俺は自分に向けられている視線を感じて頷く。

ここまできて、確かにわからないフリというのは違うというのもわかってはいた。

でもだ…

俺はこの先この世界からもどこからもいなくなってしまう存在だ。

だから、この視線にも叶が今言った願いですらも、叶えることができない。


「叶、俺は…」


俺は無理だと言おうとした。

でも、そんな俺の言葉に被せるようにして、叶は言う。


「お兄ちゃん。ヘンタイの神様になるなら、惚れさせた女の子の責任はちゃんととらないとね」


その言葉は俺にだけ聞こえるような音量だった。

何も言えないでいる俺に、叶は笑顔で大きな声で言う。


「じゃあ、お兄ちゃんが大好きな星界叶(せいかいかな)が、お兄ちゃんとの幸せな未来を作ってみせるよ!」


そして手を振って笑顔で消えていくのだった。

その姿は、アイラたちから聞いた、悩んでいたものではなくて、昔と同じだと思ったのは言うまでもなかった。



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