365話
「なるほどな…」
ようやくと言っていいのか、神たちがいる場所である神界にどうやって来られたのかがわかった。
まあ、聞いたことが本当なのかと言われたらわからない。
だって、ヘンタイの神様になったから神界に来られたなんてことを言われても正直なところ信じられないから
だ。
セイクリッドだけであれば、パンツが銅像のようにして飾られていたこともあり、ヘンタイの神として信仰されるのは理解できるが、それ以外の国では、そうはならないだろうと思っていた。
だが、そうではなかったらしい。
この世界の信仰するものが女性用の下着でいいのかという疑問は残るが、ここで余計なことを言ったところで主にアイラに怒られることがわかっているので下手なことは言えない。
そんなアイラたちも、今はパンツを脱いでいる。
ああ、さすがに勘違いがないはずだが、頭からという意味で、履いている下着を脱いだわけではなかった。
それでも、女性が頭からパンツを脱ぐというシチュエーションは、なかなか特別なものだと思ってしまったことは言うまでもない。
そんなバカみたいなことを考えながらも、俺はようやくというべきかスターと向き直る。
「よう…」
「ようじゃないんだけど。来なくてもよかったのに…」
「何言ってんだ?神様として、俺の願いを叶えてもらうまでは無理やりにでも会いに来るに決まってるだろ?」
「はあ、あんたはそういうところがあるよね」
「そういう人を、スターが選んだんだろ?」
「そうなんだけど、調子がくるうから…あなたもね」
「お姉ちゃんは、正君の役に立ちたかっただけだよ」
話しをふられたお姉ちゃんは、そう言う。
先ほどの話しで、神界に来られたのはお姉ちゃんのおかげということを聞いていたので、俺もお礼を言っておく。
「本当にありがとう」
「だから、お姉ちゃんは当たり前のことをやっただけだよ。それに、正君には迷惑ばかりをかけたんだから、これくらいするのが、本当にお姉ちゃんとしてなら当たり前じゃないのかなって」
お姉ちゃんはそう言葉にして、笑顔を見せる。
確かにお姉ちゃんとなるのであれば、当たり前のことなのかもしれないのかなと思っているとお姉ちゃんはゆっくりと近づいてくる。
どうして近づいてくるのか俺はわからないでいると、そのままギュッと抱きしめられる。
「ふぁ?」
どうして抱きしめられたのかわからないでいたが、お姉ちゃんが次に口にする言葉で理由がわかる。
「お姉ちゃんの本当の名前はね。高麗綺っていうの」
「そうなのか…」
「ええ…名前を言ったからには、お姉ちゃんがどうなるのかもわかっています」
「そうか…」
お姉ちゃんがそう言うのを聞いて、たぶんこの世界から消えてしまうことを言っているのだろうと思ってしまう。
それがわかっているからこそ、抱き着いているお姉ちゃん、高麗綺は震えている。
俺はそれがわかると少しだけ頭をなでる。
綺は、わかっていた。
この世界からいなくなるということは、これまでしてきたことを清算しないといけないということを…
元の世界に帰るということは、嫌なことがあった場所に帰るということであり、さらには綺については、俺にしたこともあって、元の世界では世間の目もある。
それも考えてのことなのだろう。
「でも、お姉ちゃんが間違ったことをしたのが悪かったんだから、受け入れないといけないことだよね」
「それでいいのか?」
「いいも何も、お姉ちゃんがしたことの責任なんだよ」
「それでも俺は救えるなら、救いたいんだ…」
「正君がそう言ってくれるだけで、お姉ちゃんは嬉しいよ。だから、戻る前に、少しだけ抱き着いていていい?」
「大丈夫だ」
「ありがとう」
綺はそう言葉にすると、少し力を強める。
俺は、たくさんの人たちに見られながらも、仕方ないと思いつつそのままでいた。
ただ、その時間も少しだけだった。
すぐにお姉ちゃん…
綺は俺から離れる。
「もう、いいのか?」
「うん、お姉ちゃんは満足できた。これで、頑張れる」
そう綺は笑う。
「それに、お姉ちゃんもこの世界に来て、正君ともちゃんと話しをして、それでようやく前に進んでいけそう」
「それはよかった」
「うん、お姉ちゃんはカウンセラーになる。お姉ちゃんができるかわからないけど、正君みたいに、少しでも誰かの助けになるなら、それがお姉ちゃんがやったことの償いになるなら、それでいいと思うから、だから…ありがとう」
綺は、そう言葉にして笑顔で、世界から消えていったのだった。




