363話
光に包まれたと思ったら、どこかに来ていた。
そして、目の前には神様だと名乗るやつらがいる。
本当なのかは、さっき俺たちに向かって飛ばしてきた魔力の塊によってなんとなくわかる。
ここは神様がいる場所だというのは、間違いないだろう。
どうしてこの場所に連れて来られたのか、というのはなんとなくわかっているが、完全に予想外のタイミングで連れて来られたのが、どうやったのかがわからない。
ただ、目の前にいるのは先ほどの攻撃を防いでくれたシバルで、さらには周りにいるのも、アイラやバーバルといういつものメンバーと、叶とお姉ちゃんという勇者の二人、そしてメイさんがいる。
理解があまり追いついていない俺にお姉ちゃんが声をかけてくれる。
「正君、久しぶりだね」
「お姉ちゃん…」
「ごめんね、お姉ちゃんのせいでいろいろ迷惑をかけたよね」
「それは、もう終わったことだろ?」
「確かに、そうなんだけど、こういうのはちゃんと言わないと伝わらないって思ってるから…」
「そ、そうか…」
お姉ちゃん自身も、あの戦いの後からどこか感じていたことではあったが、かなり変わった感じをうけるが、今はそんなことを話している時間ではなかった。
「結局、今はどういう状況なんだ?」
「お姉ちゃんたちが正君たちを神様がいる世界に連れてきたってだけかな」
「なんとなく、それはわかるんだが…どうやって、ここに来られたのかが気になってるんだよな…」
「それは簡単なことだよ、正君。正君のことを神様にしたんだよ」
「なるほど、神様にな…は?」
俺は言っている意味がわからなくて、さすがに間抜けた顔になる。
神様になるとは、何を言っているというのか、わからない。
そもそも俺が?
下着を被っているような人が神様になれるというのだろうか?
そんな俺の疑問に答えるかのように、お姉ちゃんは口を開く。
「大丈夫です。正君はすでに神様になりましたから…」
「まじかよ」
「はい。ですので、正君はここにいるんですよ」
「確かに、言われてみれば、そうじゃないとここにいられないもんな」
「はい、ですのでこの神界でやることは、一つです」
「なんだ?」
「正君を待っていた、神様を助けましょう」
お姉ちゃんはそう言ってから、たぶんスターであろう彼女の方を見る。
俺もその視線を追うようにして彼女を見る。
「何?」
「いや、ようやく会えたなと思ってな」
「はあ…そうね。いいから、相手をちゃんとみなさい」
「そうするか」
俺はシバルを撫でていた手を下ろし、ヤミを背中から降ろすと神様とやらに向き直る。
神たちは、あり得ないものでも見るかのように、俺たちを見ている。
「どうした?驚いているのか?」
「当たり前だろ?ここは神界だ。普通の人間が来れるような場所じゃない」
「その割に俺たちはここにいるぞ」
「どういう原理でここに来たのかは知らないが、すぐに追い返してやるよ」
「だったら、そうしてくれ」
「言われなくてもわかっている。魔法を使えば、簡単にただの人間など無力になる」
神はそう言って、先ほどと同じように魔力を蓄えると、今度は魔法を放つ。
「神の怒りをくらえ、ゴッドレイジ。どうだ!神だけが使える魔法だ!」
「無駄ですね」
「なんだと…」
神は自信満々に魔法を放ったのだが、それは当たり前のようにシバルが盾を構えると防いでしまう。
確かに見ていればわかる。
神様の魔法は強力だ。
普通の人であれば防ぐこともできないものだっただろう。
でも、ここにいるのは、普通じゃない人だけだ。
そう、パンツを被った男と、パンツを被ったりしている女三人…
「三人?」
「気づきましたか、ただし」
「まあな…」
そう、今気づいてしまった。
この場には、パンツを被った人が複数人いるということに…
真面目にどうしてそうなったのか理由を聞きたいところではあったが、下手なことを言ってしまえば俺自身がどうなるのかわからない以上は何も言えない。
ただ、訳が分からないのは相手もだったようだ。
「どうして、おかしな恰好をしているようなやつらに、攻撃を簡単に防げる!」
「それは、ボクの盾が、体があなたの魔法よりも硬いからです」
「神の、神の魔法なんだぞ!」
先頭にいた神はそう言って取り乱す。
だが、その前に放った魔力の塊をシバルを防いだことを考えても、防ぐことは可能であるというのはわかっていた。
それに、シバルの魔力特性といえばいいのか、それによる魔力を無効化するために、魔力すらも断ち切る魔法の盾なのだ。
そんなものを持っていれば、どんなすごい魔法だろうとも、魔力がなければ魔法は発動しない。
だから、その魔力をなんとかしてしまうシバルには神といえ、攻撃は無力になるのは仕方ないことだった。
でも、その神はそのことをわかっていないのか憤る。
「神の魔法が負けるわけがないんだ!おい、お前らも見てないで手伝え!」
先頭にいた神が、そう言って後ろの神たちに言う。
その声にこたえるようにして、神たちの魔力が高まる。
また、神たちの協力した魔法か何かがくる。
そんなときに後ろから、ゆっくりと近づいてくる女性がいる。
「ただし、お困りかしら?」
「バーバル…」
「うふふ、神様をわたくしの魔法でいじめるっていうのも面白そうね」
嬉しそうにそう言っているバーバルは、パンツのせいなのか、いつもよりさらになまめかしく感じる。
そして、それに呼応するかのように魔力が高まる。
「うふふ、じゃあ始めましょうか」
その言葉とともに、バーバルは魔法を唱えるために、俺に抱き着くのだった。




