359話
クロたちとただしたちが戦っているとき、アイラたちはお姉ちゃんに連れられて、セイクリッドへと戻ってきていた。
実は、戦っていた場所からはセイクリッドはそれなりに近い場所だった。
だからこそ、魔力を宿した魔法の布。
バーバルが使うそれに乗って、みんなでセイクリッドへと戻ることにした。
それもこれもお姉ちゃんの話を聞いて納得したからということもあった。
お姉ちゃんである彼女が言った内容というのが、これからについてだった。
ただしたちがやっている、勇者をどこかに帰すというもの…
その後、必要になることなのだという。
何に必要になるのかというのを聞いて、本気なのかどうかわからなかったけれど、神様に会いに行くために使うものだと聞いた。
だからといって、セイクリッドで多くの人を集める意味がよくわからなかった。
「どういう状況なの?」
「お姉ちゃんがさっき言ってたこと覚えてる?」
「覚えてるけど、ただしを神様の世界へ連れていくって話しだったよね」
「そうなのよ」
「でも、本当にそんなことができるの?」
「みんなの協力があれば、できるはずなんだけど。お姉ちゃんもしたことがあるわけじゃないから…正直なところはわからないんだよね」
「やってみてからってことね」
私はお姉ちゃんの言葉に納得する。
ただしとの間にいろいろあった彼女だけど、今はただ、ただしのために動こうとしている。
だからこそ、信用できると感じていた。
「それで、私たちはどうするのがいいんだっけ?」
「それぞれの国に行ってもらいます」
「それぞれの国?」
「そうです。お姉ちゃんは、オンスフルへ向かう予定です」
「私は?」
「アイラちゃんはここセイクリッドで、シバルちゃんはレックスへ、バーバルちゃんはマゴスへ向かってください」
「リベルタスへは行かなくても大丈夫なの?」
「大丈夫です。そちらには叶ちゃんに向かってもらいますから…」
「やだ!」
「叶ちゃん?」
「叶は、お姉ちゃんと一緒にいく」
「でも、そうなるとリベルタスへは誰が…」
「大丈夫です。わたしがいますから」
「メイさん…」
「少しぶりですね、皆さん」
そんな言葉とともに、現れたのはメイさんだった。
アイラも、さすがにいるとは思わなくて、びっくりしたが、ラグナロクのメンバーの誰かのスキルによってこれを先読みしていたと思うとさすがはラグナロクのリーダーは前もってそれをわかっていたのだろう。
「ラグナロクの党首としても、神様に一泡吹かせるのであれば、わたしが強力するのは当たり前のことですから」
「はいはい、それはそうよね」
自信満々に言ったメイさんに、さすがの私もちょっとぶっきらぼうに答えてしまう。
ただしに倒された人全員が、どこか吹っ切れたような人が変わったように見えるのは、気のせいなのだろうか?
私はそんなことを考えながらも、少し思ったことを口にする。
「でも、私はここにいるだけでいいけど、シバルたちとかはどうやって他の都市に行くのよ。行くだけでもかなりの時間がかかっちゃうと思うんだけど」
「それについては、こちらを使います」
そう言ってお姉ちゃんが取り出したものは、石のようなものだった。
「これは何?」
「アイラちゃんは、お姉ちゃんが急に現れてびっくりしなかった?」
「それは、びっくりしたけど…」
それと、この石のようなものに何が関係しているのだろうか?
私はわからなくて疑問に思っていたけれど、すぐにそれがなんなのかわかった人もいた。
「かなり便利なものですか…」
「えーっと、メイちゃんって呼んでいいのかな。わかるの?」
「はい、ゲートのようなものを開くことができるものではないのでしょうか?」
「さすがですね。その通りです」
「かなりすごいものよね」
「はい、わたしも言っておいてなんですが、そんなものができるのであれば、エルのスキルがいらなくなります」
そう、メイの言う通り、かなり強力な道具だった。
言っていた通り、そんなものがあればどこにでも行けるからだった。
でも、案の定というべきかお姉ちゃんは首を振る。
「そんな万能なものじゃないのよ」
「どういうこと?」
「確かに願った場所に行けるようになる代物ではあるものの、この転移石は、使えば壊れるもので、さらにはね、一つにつき一人しか移動できないものなの」
お姉ちゃんにそう言われて、確かに強力な道具ではあるものの欠点はちゃんとあることがわかった。
そして、私以外の全員に石が配られる。
「じゃあ、お願いします」
お姉ちゃんのそんな言葉とともに、私以外の全員がこの場を離れていく。
私自身も、しっかりと手を握りしめると、これからやるべきことについて考えることにした。
そう、渡された紙に書かれた、計画を実行するために…




