357話
憎しみを込めた攻撃、最大のものだった。
クロ自身はそう思って攻撃した。
ただ、ただしという男はどうだ、ゆっくりと炎に飲み込まれていったではないか…
そして、クロが出した憎悪の塊を纏った炎は消えていく、何もなかったかのように…
「どうしてなんだ?」
「そんなことを俺に言われてもわからないけどな」
「そんなことはないだろ!俺の攻撃を簡単に消せるお前はなんなんだ!」
「ちょっと前にお前が言ってただろ?ライバルとかそんな感じじゃなかったか?」
「違う、お前は俺のライバルなんかじゃない」
「どうしてだ?」
「ライバルにこんなに恐怖は感じない」
「どうして恐怖を感じるんだ?」
「わかるわけないだろ、俺は俺は、変わるためにこの世界に来たんだ。この世界で、俺が願っていた主人公になるために!」
「だったら、恐怖だって乗り越えて向かってくればいいだけの話じゃないのか?」
「は…確かにその通りだ」
「だろう?」
俺はそう言ってクロを見る。
ただ、クロはゆっくりと後ずさりする。
「どうして下がるんだ?」
「うるさい、俺は下がってなどいない」
「本当にそうなのか?」
「そうだ。下がってなどいない」
「だったら、自分の足元を見てみろよ」
「なんだと…」
クロは俺の言葉によって、足元を見る。
そこで見ることになっただろう、自分が後ずさってできた足跡。
それに気づいたクロは声を荒げる。
「そんなこと俺があるはずがない」
「本当にそうなのか?」
「どういうことだ?」
「後ずさっていないっていうのか?」
「ああ、当たり前だ!」
「だったら、もう一回くらい俺に魔法でも撃ってこいよ」
「当たり前だ!」
クロはその言葉とともに、魔力をためる。
どんな魔法を使ってくるのか?
考えたところで仕方はないが、俺はその攻撃もすべて跳ね返せるはずだからだ。
「こいよ」
「うるさい!黒炎よ…燃えて燃えて、憎しみの炎となれ、煉獄、パーガトーリィ」
「さっきと同じ攻撃か?」
「そんなわけあるか!今度はもっともっと火力を増してやる!」
「なるほどな…」
クロが言う通り、先ほどよりもさらに炎は黒い激しく燃えている。
ただ、その炎を見ても俺は恐怖を特に感じなかった。
一度破った攻撃だからなのかと言われると、別にそういうわけでもなく、自分の中にあるヘンタイエネルギーが相手を、クロの攻撃を超えれると確信しているからだった。
「今度こそは、その体をすべて、憎しみの炎で焼いてやる!」
「やれるかな?」
「できるさ!俺の炎は、全部を焼くからな」
「だったら焼けるか試してみるか…」
俺は再度黒い炎へと入っていく。
しっかりと気を纏うことによって、黒い何かは体に触れるが消える。
俺は黒い炎を消し去るようにして、体から気をゆっくりと周りに広げる。
それによって黒い炎は消えていく。
「なんでだよ!なんで消せるんだ!」
「俺にそんなことを言われても、できるんだから仕方ないだろ?」
「できるからだと?だったら、俺の炎で全部を焼き尽くすことだってできるはずだろ!」
「確かにな」
「だったら、どうして俺はできないんだよ…」
「それは、お前のやる気がないからだな」
「やる気だと…」
「ああ…簡単なことだろ?クロ、お前の憎しみよりも俺がヘンタイと感じてでる生命力の方が強いってだけだ」
「はは…なるほどな。そういうことかよ…俺の憎しみなんかよりも強いってことかよ」
「そうだな」
「まじか、そうか…」
クロはそう言いながらも、その場にゆっくりと倒れる。
敵わないと気づいたからだろう、体に入っていた力というものが無くなったというのがヘンタイ眼で視てとれた。
そのクロは言葉にする。
「俺が憎しみを持つのは無意味だったということだな」
「それは俺に言われてもわからないな」
「どうしてだ?俺の憎しみを無意味にしたのは、ただしだろ?」
「だって、俺にはクロの憎しみが何かわからないからな」
「どういうことだ?」
「あれだ。クロの憎しみがどんな人に対してなのか、誰に対してのものなのかなんてことを知らないからな」
「言われてみれば、確かにそうだな」
「だったら、俺のことを聞いてもらっていいのか?」
「それくらいなら、俺も簡単にできるからな」
そしてクロは語りだす。
これまであったことというものを…




