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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイは世界を救う

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352話

「ぐは…」


当たり前のように吹き飛ぶクロ。

俺は拳を振りぬいた状態で止まっていた。

それを見たクロは、笑いながら言う。


「はは!俺のことを殴ったな!そのまま憎悪の闇に包まれろ!」


クロのその言葉とともに、視界すべてが黒い何かに包まれる。

当たり前だけれど逃げられない。

俺自身も別に逃げようとも思っていなかった。

ヘンタイスキルが発動して、一番感じるエネルギーはそう生命によるものだ。

いろんなエッチな姿を見ることで、増えるそれは、確かに性欲によるものだ。

ただ、俺は思っていた。

この状況。

黒い何かは、憎悪が具現化した何かなのだろう。

触れることで怒りや憎む気持ちが溢れてくることを考えても、そういうものだということがわかる。

憎悪の塊に触れられている今であれば、そのまま飲み込まれるというのが普通の人だろう。

俺だって、そうやって敵になるというシーンをアニメなんかで見たことがある。

じゃあ、どうすれば憎悪にのまれないって?

単純なことだった。

憎悪以外のエネルギーで体を支配する。

そう、ヘンタイスキルによる生命エネルギーによって…

俺は憎悪の塊を体から放つ気によって弾き返した。


「はあ?どうしてだ?俺から出るものは簡単に破られるものなんかじゃないはずだろうが!」

「破られないもの?そう思うのか?」

「当たり前だ、俺は俺は…」


そう言葉にしながらもクロは、憎悪の塊に飲み込まれていく。

クロは、普通の生活というものとは無縁だった。

愛情をもらって生活をするということは全くなく、怒られるのが当たり前、何をしても間違っていると言われる人生を送っていた。

そうか、自分は間違っていたのだろう、クロ自身にそう言い聞かせて納得していた。

そんなときに出会ったのが、漫画だった。

漫画の世界では主人公がいろいろなことを自分で解決していた。

それはまるでクロ自身が望んでいたことだった。

漫画のように今の状況を変えることができるのならとクロは考えた。

だからこそ、クロは漫画を読み漁った。

買うお金や家で時間がなくても、学校にあったことがわかったクロは少しの時間で読むようにしていた。

漫画を読むことで、いくつもの戦い方を知った。

そして、クロは自分が置かれている状況が間違っているものだということを知る。

変えてやろう。

変えるためには物語にでてくるような主人公になるしかない。

今できるやり方で戦い方を考えるしかない。

クロはそう考えて、いくつもの戦い方を身に着ける。

家では理不尽なことをされたところで、それは未来で起こす自分のやるべきことでなんとかできると思った。

そして、クロは武器を戦い方を身に着ける。

理不尽なことをしていた両親を倒すことに成功したクロは、そのまま主人公として、理不尽なことに苦しんでいる仲間を探すべくたびに出かけるはずだった。

あのとき、目の前にいるただしという男に出会わなければ…

クロは叫ぶ。


「ただしだけは、俺のことをわかる唯一の人物だと思っていたんだよ!」

「わからねえよ」

「どうしてだ!だったらどうして俺をあのとき止めた!」

「わからねえよ」

「わからないはずないだろ!俺は違うんだからな!」


クロはそう言って向かってくる。

俺は無防備に向かってくるクロに向かって再度拳を振るう。

気を纏わせた拳は、そのまま憎悪の塊を貫くようにしてクロを殴る。

ドンという音がして、クロが吹き飛んでいく。

それを見ながらも、俺は気を纏う。

憎悪の塊は、それに触れるたびに消えてしまう。

予想通りのそれは、俺が作り出した生命エネルギーによって消えてしまった。

良くも悪くも、俺のスキルは肉体的に健康的な状態じゃなければ発動しないものでもあるし、さらに強くしようと思えば、周りも健康な状態じゃなければいけない。

怒りに包まれている状態では、俺がヘンタイだということがわからない。

もし憎悪にのまれていれば、俺はスキルが使えない。

でも、逆に俺のスキルがクロよりも強く発動できているのなら、憎悪の塊ですらも今のように簡単に弾き返すことができるということだ。


「す、すごいのじゃ」


そのためにも、驚いているヤミには今のまま、合法露出ロリにずっとなってもらわないと困るということだ。

見えていないとはいえ、隠れている部分が少なすぎて、本当に大丈夫なのかと心配はするが、そこが余計にエロさというべきかヘンタイスキルを強くしている。

特に、ロリな見た目のヤミがやっていることでさらにそれを刺激されるということもあるのだろうが…

しっかりとヘンタイスキルを強化している俺とは違って、ヤミは飛んで行ったクロを見ている。


「起きたのじゃ!」

「俺は、俺はこんなことじゃ倒れるわけないんだよ!」

「じゃあ?どうすればいいんだ?」

「魔法だ!俺のゾウオスキルですべてを強化した魔法で吹き飛ばす!」

「怒りと憎しみしかない攻撃に俺が負けるとでも?」

「さっきまで絶望的だったくせに!黒炎よ、ただ相手を焼き尽くせ、ブラックフレイム」


黒い炎はこっちに向かってくる。

先ほどまでだと、どうすれば防げるのかと悩んでいた攻撃だ。

でも、今は違う。

俺は、いつものように拳を握りしめると、気を込めて技を放つ。


「カイセイ流、一の拳、トルネードスター」


炎は、拳に当たって消え去る。


「なんだと…」

「終わりか?」

「うるせえ!黒炎よ、槍となって跡形もなく相手を燃やし尽くせ、ブラックジャベリンフレイム」

「カイセイ流、一の拳、トルネードスター!」


先ほどよりも大きな黒い槍をクロは飛ばしてくるが、俺は先ほどと同じように拳を振るう。

一瞬ヤミのことを視界に捉えると、少し心配そうに俺を見ているのがわかる。


「ふ、ヘンタイな恰好をしているというのに、ちゃんと心配をされてしまうというのも、素晴らしいものなんだよ!」

「はは!何をわけのわからないことを!」


ドンという音が鳴りそうな勢いで槍を殴り飛ばした。

二度続けて完全に攻撃を防がれたのを見たクロは、体を包んでいる憎悪の塊が揺らぎ始める。

俺はそれを見逃すはずもなくゆっくりと近づいていく。


「来るな!」

「そう言われてもな。そう思うなら俺を止めてみろ!」

「うるさい!俺の憎悪は!苦しみは!痛みは!こんなところで無くすものじゃないんだよ!」


クロはそう絶叫する。

俺はゆっくりと近づいた。

これで決着はつくと俺は思っていた。

ただ、クロの雰囲気が変わる。


「足りないですねえ…」


その瞬間、クロから放たれていた憎悪の塊がクロに吸い込まれていく。

それを見て、背筋がぞわっとする。

俺はゆっくり近づくのをやめて、気を込めた拳を叩き込む。


「カイセイ流、一の拳、トルネードスター」

「シンカイ流、一の拳、トルネードゴッド」


クロの形をした黒い何かは似た名前を言いながら、俺と同じように拳を向けてくる。

そして、お互いの拳がぶつかり合ったのだった。


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