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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと旅立つ人たち

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349話

風の勇者である、金色風魔(こんじきふうま)は少し前まで戦闘を楽しんでいた。

それは、強い人たちと戦えるからということもあったが、自分の強さというものを見せられるからということもあった。

だというのに、よくわからず連れてこられたこの場所で、他の男に簡単に負けてしまった。

それも、ふざけた恰好をしている男にだ。

屈辱以外の何物でもなかったが、風の勇者は強さについて考えることになった。

強さとは何か?

戦うことで、力を比べることでそれがわかるものだと思っていた。

でも、それは間違っていたというのだろうか?

わからないままさまよっていた風魔はそこで小さな女の子と出会う。


「何をしてるんだ、こんなところでよ」

「兄ちゃんには関係ないことだよ」


彼女はそんなことを言う。

修行できる場所でも探すかと思ってついた場所は、今の森の中だった。

リベルタスという国にある森で、その中でもかなり奥にある。

こんな場所で何をしているのかと疑問に思っただけなのだが、そう言われてしまった風魔は少し気おされながらも返事を返す。


「そうか…」

「うん、じゃあ行くから」


彼女はさっさとどこかに行ってしまう。

どこに行ったのか、気になった風魔は後を追う。

風の魔法で、うまく自分の気配を隠しながらもついて行った先で見たものは、大きな木に水をあげている彼女だった。

わけがわからなかったが、風魔はその行為に見入ってしまった。

だから彼女が気づいているということに気づかなかった。


「兄ちゃん、ついてきたの?」

「!」


彼女に気づかれると思わなかった風魔は、驚いた。

そこで聞かされたのは、彼女がもっていたスキルだった。

彼女が持っているスキルは、木や草などいったものと会話ができるというものだった。

そのため、彼女は会話をして弱っている木に水をやっていたということだった。

でも、一回で運べる水の量は当たり前だが少ない。

どうしてかわからないが、風魔はこのとき言ったのだ。


「手伝うか…」

「どうして?」

「暇だからだ!」


暇だから、風魔はそう言ったが、心の中ではどこかわかっていた。

彼女と一緒にいることで強さというものがわかるのではないのかということを…

その後は、彼女の助けになるために風魔法によって、川に流れている水を木に飛ばすことをしたりすることで、最初のツンケンとした態度だった彼女も普通の態度になっていた。

普段は、森の中にある家といえばいいのか、ツリーハウスのような場所で寝泊まりをしていたのだが、何日かを過ごすときに彼女に言われたことがあった。


「兄ちゃんは、気持ち悪いって思わないの?」

「何がだよ」

「うちが木と喋れることについて…」

「考えたこともないな。それを言うと、オレが怖くないのか?」

「質問に質問を返しちゃいけないんだよ…」

「そ、それはすまない」

「いいけどね。でも、うちは怖くないよ」

「そうか!まあ、オレも気持ち悪いとは思ったことすらないな、だってよくないか?普通と違うことは当たり前のことじゃないからな」

「そうだよね」


彼女はそう言って嬉しそうに笑う。

だから、その次の日に風を感じた風魔は起きる。

それはこの森を燃やしに来た奴らだった。

風魔は風による結界で森の外から入ってくる者たちを感じ取っていた。

すぐに風魔は、森を守るために戦う。

そのときに倒すことで忘れていた、彼女の存在を…

気づいたときには遅かった、彼女はそこにはいなかった。


「くそ、どこにいやがるんだ!」


風の結界を張っていたといっても、森に入ってきたかどうかを判別するためだけのものだった。

だからこそ、森の中にいるはずだったが、彼女の場所がわからないでいた。

今からでも風を飛ばすことでそれを感じ取ることも可能ではあったが、時間がかかった場合、彼女にたどり着くまでに彼女が傷ついているとなれば気が気ではなかった。

そんなときだった、木が動いたと思うと枝が落ちる。

そして、それは次の木へとつながる。


「これは…場所を教えてくれるっていうのか?」


相手は木だ。

風魔自身は声など聞こえるはずもない。

だというのに、風魔は感じ取った。

彼女を守りたいという気持ちを…

だからこそ、風魔は急いだ。

助けるために…

結果、風魔は助けることができた。

ただ、そのときに感じたのだった。

相手を傷つけることよりも助けることの方が難しいということに…

そして、助けるのも一人ではできないことの方が多い。

だから、誰かと協力することできるのだということを…

そのことを風魔は思い出す。


「おい、ヘンタイ野郎」

「なんだよ…」

「オレの風をうまく使いやがれ!」

「それが人にものを頼む態度かよ…」

「うるせえ、やるんだよ。オレたちで守るためにな」

「そんなことは、最初から当たり前のことだろ?」


もう風魔に迷いはなかった。

風は激しさを増すということはない。

ただ、包み込むようにして優しい風がただしたちに吹く。


「オレは、金色風魔…いい加減邪魔者扱いっていうのもやめてもうぞ!」


そう風の勇者、風魔は宣言するのだった。


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