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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと旅立つ人たち

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346話

「なんだ?」


その光景に驚きしかなかった。

今の俺はまだヘンタイスキルを発動していない。

それなのに、何かが見えるというのは、それが異常なことだということがわかる。


「どうなってるんだ?」

「あたいには、わかんないに決まってるだろ」

「オレにはわかるぞ」

「そうなのか?」

「ああ、あれは魔力だ。それも体から溢れるな」

「どういうことだ?」

「オレたちが何故勇者なのか?それをお前はわかるか?」

「え?神様に選ばれたからじゃないのか?」

「確かにな、それもあるだろう。ただ、それだけじゃない」

「どういうことだ?」

「オレも風を纏えるようになったときにわかったことだが、魔力というものを違う意味で使える人が選ばれる存在だ」

「そう言われても、意味があまりわからないのだが…」


風の勇者に、魔力を使える?

その意味が理解できない。

魔力がないから理解できないということもあるが、もう一つの意味である魔力を違う意味で使うというのはどういうことなのだろう。

魔力が溢れるというのは、アイラたちでもあるのは知っている。

ただ、魔力が認識できる何かに変わるというのは、俺も予想はしていなかった。

風の勇者も、確かに魔力は感じてはいたが、それで風を纏えるようになるとは、どういう原理なのだろうか?

わからないでいると、風の勇者は言う。


「どういう原理なのか?そんなことは、オレたちにも詳しくはわからないからな。わかることは、これがあることによって強さを手に入れることができたってことだな」

「強さ?」

「ああ…オレは守る強さだ」


守る強さ。

それによって風の勇者は強くなって、さらには風を纏えるようになったというのだろうか?

でも、そうなると前に見えているクロはどうなったのだろう。

黒いもやのような何かが体の後ろから出ている。

それはまるで、すべてを飲み込んでしまうようなものであり、肝心のクロは黒い何かに包まれて、小さな声で何かをしゃべっている。

本当のところをいえば、今のタイミングでクロに対して何かをすればと思うが、もしうまくいかなかった場合を考えるとそれも難しい。

それに、俺がクロを倒してしまうことがあれば、それは神様の思い通りにならないのか?

クロも他の勇者と同じように話しをしてこの世界から去ってもらうのがいいのではないのかと考えると、余計に手は出せない。

そう思っているときだった、クロが笑いだす。


「くくくく…」

「なんじゃ、気味の悪い笑い方なのじゃ」


あっさりとした感想を言うヤミに大丈夫なのかと思ったが、クロはさらに笑う。


「いいねえ。本当に楽しくなるようなことを言うな」

「楽しいことじゃと思うのかの、ただし?」

「俺に話しを聞くなよ。ヤミがいらないことを言わなかったら、こんな反応が返ってきてなかっただろ?」

「確かにそうなのじゃが、気になったのは仕方ないのじゃ」

「そうなのかもしれないが、スルーしたりしてくれよ…」


今更かもしれないことを言いながらも、俺とクロの視線が合う。

クロは当たり前のように楽しそうに笑う。


「ようやく本番。俺のスキルも使うときがきたってことだな」

「どういうことだ?」

「これまで使っていたのは、俺のスキルの一部だったんだよな」

「それで、あれだけの強さだったのかよ…」

「仕方ないだろ?俺は、本気になれる相手がいなかったってだけだからな」

「じゃあ、本気になれる相手がいるっていうのか?」

「わかっているだろ?」


クロは意味ありげにそう言う。

それだけで、本気になれる相手というのが誰なのか理解した。

俺なのだろう。

どうして、パンツを被るようなヘンタイな相手のことを本気になれる相手だと思えるのか、それは不思議でしかないのだが、そんな俺のことをクロは見ている。

戦わないという選択肢がないのだろうか?

そう思ったが、クロはそんなことはお見通しとばかりに言う。


「戦わないと、俺はそこにいる魔王を倒してしまうだけだな」

「そうなるよな」


当然のことではあるが、クロはヤミという魔王を倒すことができれば、この世界に召喚した神様とやらに願い事を叶えてもらうことができる。

どんな願い事も叶えることができるというのであれば、ここにゲートを開いたときに少しだけ聞こえた内容の、俺と戦うために次の願い事に俺を入れるということすらも行うだろう。

そんなことをされてしまえば、結局のところクロが満足するまでは最低でも戦わないといけないということになってしまう。

今戦うか、後で戦うか…

それを考えると、戦うのは…


「まあ、今だよな」


俺はパンツを被る。

ヘンタイスキルが発動したのを感じ取ったと同時にクロに殴りかかるが、それは手でしっかりと捕まれる。


「いい、いい!さすがは俺が認めただけはある!」

「そんなに男に喜ばれるいわれはないな」

「そうなのか?でも、そんなパンチでは、俺には届くこともないな!」


クロはそう言ったところで、黒い何かが体から出てくる。

俺は慌てて離れる。

それを見ながらクロは俺に手を向ける。


「行くぞ!黒炎よ、ただ相手を焼き尽くせ、ブラックフレイム」


これまでのようなただ黒い火ではなく、何かよくないものが混ざったとしか思えない黒い炎が飛んでくる。

俺は拳を固める。


「カイセイ流、二の拳、シューティングスター」


気をこみ上げた拳を飛ばすことによって、黒い炎をなんとか相殺する。


「さすがだ、いいなあやっぱり!」


クロは本当に嬉しそうにそう言う。

そして、魔力がさらに高まり、背後にある黒い何かはさらに大きくなる。


「黒炎よ、槍となって跡形もなく相手を燃やし尽くせ、ブラックジャベリンフレイム」


黒はそうして、真っ黒の燃えているのかすらもわからない槍を作りだす。

そして、それは当たり前のように俺に向かって飛んでくる。

俺はしっかりと拳に気を込めると放つ。


「セイカイ流、シューティングスターラッシュ」


何発もの気を飛ばすことによって、向かってきた槍を消し飛ばすことには成功する。

ただ、今の攻撃でかなり多く攻撃することによって、ようやく消し飛ばすことには成功した。

まだ二発か…

最初のときに使っていた黒火とは違う威力に驚くしかない。

なんとかなってはいるが、クロ自身も様子見で攻撃しているということはわかっている。

だからこそ思う、次はどんな攻撃かくる?

あまり余裕がない俺とは違いクロは、嬉しそうにさらに魔力を高める。


「やっぱり、ライバルと戦うならこういうのがいいよな」


そう言ってさらに魔法を唱えるのだった。


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