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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと旅立つ人たち

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345話

「よ!」

「遅いのじゃあああああ!」

「そう言われてもな、仕方ないだろ?」


なるべく急いできたというのに、ヤミにタックル抱き着きをくらう俺は苦笑いを浮かべる。

これでもかなり急いだほうだったが、ヤミがそう思うのも無理はなかった。

それは、一緒にいたやつの存在が大きいだろう。

あんなやつと一緒にいたら、それだけで確かにおかしくなってしまうかもしれない。

ただ、ここに来るまでにもいろいろあった。


「おいおい、大丈夫なのかよ」

「大丈夫だ。巻き込んですまない」

「何を言ってる?オレはきたくてここにいるだけだ。この世界を壊させるわけにはいかないからな」

「確かにそうだな」


俺は一緒についてきていた風の勇者の言葉に同意する。

それくらいあのクロという男は危険だからだった。

一応ここに出てくるタイミングでクロのことは殴り飛ばしたが、それでもあの程度のことではクロは立ち上がってくるだろう。

ここに来るまでのことも含めて用意周到だったから、余計にそう思ってしまう。


「それで、どういうことなのじゃ?」

「どういうことって俺に言われてもな。どうしてこうなったのかは、そこに倒れたフリをしているやつに聞いてくれ」

「いやー、さすがは俺のただしだな」

「いつからお前のものになったんだよ俺は…」

「そんなのは、俺と初めて出会ったときからに決まっているだろ?」

「決まってるわけあるか…」


クロの戯言に付き合わされる。

そんな俺たちの会話を聞いて、エルは言う。


「なんだ?通じ合っているのかお前らは…」

「通じ合ってますとも!」

「通じ合ってるわけあるか!」


否定する俺と嬉しそうに肯定するクロ。

さすがに一緒にするのはやめてほしいのだが、エルは止まらない。


「本当か?ここに来るときのことだって、わかってたみたいだろ?」

「そうなのか?その話しは是非とも聞きたいな!」

「ほら、言われてるぞ?」

「俺が説明しないといけないのか?」

「あたいたちは詳しいことがわかるわけじゃないからな」


エルにそんな無責任なことを言われた俺は、少し前のことを思い出す。

ここに来る前のこと。

俺たちは、アイラたちがどこにいるのかというのがわからないでいた。

そもそも、エメの話しでは、エメたちがここにいるというのも俺とエルがなかなか来なかったせいで、魔法で占いでもしようかとなったらしい。

その理由というのが、風の勇者と一緒にいた女の子の存在だった。

女の子は、風の勇者が変わったきっかけを与えた人物ということらしい。

これを聞いて、なるほどなと思っていたが、それがエメたちがアイラと一緒に連れていかれなかった理由らしかった。

というのも、魔法によって未来を少し視たエメは次にどうなるのかというのがわかった。

そしてすぐにその未来が来ることがわかったエメはみんなに声をかけた。

逃げてと…

ただ、言うのが遅かったせいで視たエメと、風を纏うことによって速くなった勇者とその勇者が助けた少女だけがあの場所に残っていたというのが状況だった。

俺たちがエメたちに合流したのは、ちょうどそのタイミングの少し後だったというわけだ。

すぐに俺たちはアイラたちに合流するべく、エルに魔力をたどってもらった。

ただ、見つかることはない。


「ちっ、どういうことだ?」

「なんとなくはわかる。エルのスキルも結局は魔力を使っているものだからな」

「まあな。あたいは知っている場所か、知っている人間の魔力をたどってゲートを出すことができるだけだからな」

「そうなんだよな。だから、魔力をどうにかしてわからなくすれば、俺たちはそこにたどり着けなくなるってところだろうな」

「はあ?そんなことされたら、あたいたちはどこに向かえばいいかわからないじゃないのかよ」

「わからないな」

「そんな呑気でいいのかよ…」

「大丈夫だ。アイラたちのことは信じているからな」

「本当に、無駄に自信満々なのはイラっとするな」

「エル、そういうことを言ったらダメですよ」

「あたいは別にいいんだよ。こいつにはいろいろなことをやられたしな」


エルにそう言われて、確かにと思ってしまった。

それくらいには、エルのことを突き落としたり突きとばしたり、足に使ったりしているしな。

言われても仕方ないくらいにはいろいろしているのは確かだ。


「じゃあ、そのよくわからないタイミングというのを待ってればいいのか?」

「ああ、ただゲートを繋いでほしい場所はアイラたちの場所じゃないけどな」

「じゃあ、どこなんだよ」


そして、俺はある場所を言う。

そこが、ここだったというわけだ。

魔力を感知させないというアーティファクトがあるだろうというのはわかっていた。

ただ、アーティファクトというものは、魔力がないと使えないという欠点もある。

まあ、魔力がないのは俺くらいしかいないとしても、魔力がないと使えないというのは便利でもあり、不便でもある。

それは、前のように魔力を無効化できるアーティファクトがあっても、それを使うために魔力がいるということだった。

魔力を感知させないアーティファクトを使っていたところで、違うアーティファクトを使うときには魔力は感知される。

それがわかっていれば、アーティファクトは使わないというのがセオリーなのだろうが、クロはそれをしなかった。

だから、クロの居場所がわかったということだ。

そのことを俺は説明する。

聞いたクロは拍手をしている。


「さすがは、俺のことを一番わかっているだけはあるな」

「嬉しくない褒め言葉だな」

「何を言ってる?俺は楽しくて仕方ない。ゲームはこうでなくちゃな」


クロはそんなことを口にする。

ゲームだと?

こいつは何を言ってるんだ?

俺は思わずその言葉に、疑問しか浮かばなかった。

ただ、クロはそうではなかったようで、楽しそうだ。


「わかると思うけどな。俺とただしならさ」

「わからないな」


一緒にされたくない俺はそう言葉にするが、クロは意に介していない様子で言う。


「はは!ほら、俺とエンカウントしたぞ!」


そして、体から黒い何かを噴出させるのだった。


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