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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
パーティーにヘンタイが増えた

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34話

その女性を見て、アイラが言う。


「だ、誰?」

「ボ、ボクにもさっぱり…」


お互いに知り合いがいないことに気が付くと二人が顔を見合わせて俺のことを見る。

そうだ。

この女性のことを俺は知っている、魔法使いの見た目である帽子と杖を持った女性。

そして美女という言葉がよく似合う見た目をしている。


「ふふふ、またあったね」

「え、ええ…」


し、視線が痛い。

二人から向けられる視線が痛い。

かといって、ここから人違いとするのはもっと無理があるし、キツイものがある。

俺は何を言うべきかを考えながら口を開く。


「いい天気ですね」

「そうね。天気はいいわね。」

「はい…」


いや、なんだこの会話。

童貞だということが、今の会話だけでわかっていただけだろう。

だって仕方ないじゃないか…

童貞が女性に対して、完璧な会話をするなんてことできるはずない。

これまでアイラたちと会話ができていたのは、俺が先に話題を振ったわけではなく。

アイラたちに話題を振ってもらっていたからだ。

それに大人の色気というのだろうか?

目の前の女性からはそれが感じられるから、余計に話をするのに緊張するということだ。

こういう状況ではどうすればいいのか、わからないまま、時間が過ぎるものだと思っていたが、そうではなかったらしい。

だって、俺の周りにいる人はおれだけでは ないのだからだ。


「ちょっとさっきから、どういう会話をしているのよ」

「どういうとおっしゃられても、わたくしはただ、その方にまた会えましたねと言っただけですよ」

「それはそうなんだけど…ただし」

「へ、へえ…」

「あなたから説明して」

「お、おう…」


説明をして、と言われても、俺もこの状況が理解できていないのだ。

だからこそ言えることは一つだ。


「えっと、会うのは二回目ですよね」

「そうね。でも、会えるって信じていたのよね」

「そ、そうですか…」

「そうよ。実際に会えているでしょ」

「そうですね」


本当にどうしたらいいんだ、この状況。

不機嫌になっているアイラとシバル。

逆に上機嫌な謎の女性。

ふう、落ち着くんだ、こういうときはいうことは決まっている。


「えっと、あなたの名前は?」

「ふふふ、普通相手の名前を聞くときは、自分から名乗るものだけど、最初に会ったときに、わたくしがつい含んだ言い方をしたから、気になっているのね。」


そういうと、被っていた魔法使いの帽子をとる。

すると長い黒髪が風になびく。

そして帽子を胸の前に持ってくると、目礼をしながら口を開く。


「わたくしは、バーバル。魔法使いをしております」

「俺は、ただし」

「私はアイラ」

「ボクはシバル」

「ふふふ、ただしさんにアイラさん、シバルさんね。これからよろしくお願いしますね」

「ちょっと、私はまだ、よろしくしたいとは思ってないんだけど」

「そうですか?でも、こちらで会ったのは何かの縁だと思うので仲良くしていただければいいと思いますけど」

「そんなことはないわよ。ほら、時間ももったいないし、行くわよ、ただし」

「お、おう」


俺はバーバルと名乗った魔法使いの女性にお辞儀をすると三人でその場から離れる。

だからこそ、会うことはないと思っていたのだが、そうではなかったらしい。


「あらあら…」

「あらー」

「すごい偶然なのね!」


そうなのだ。

町から出るまでの間に三回も出会うなんてことになるとは思っていなかったが、出会ってしまったのだ。

まずは一番最初の話から簡単に思い出すことで、不機嫌になっているアイラのことを少しでも無視できるようになるのではないかと考える。

最初に再開したのは、野宿をするのは仕方ないとしても、そうなった場合に特に必要となってくるものである食料の調達にきていたのだ。

よく、そういうものはその場所で見つけることができるだろう。

なんて、主人公補正でしかありえないことがあるが…

実際はそんなことはないのだ。

だって、俺がもらえているスキルはヘンタイなのだ。

森などのことをゲームではフィールドなんかと呼ばれていたが、そういう場所ではアイテムを手に持つだけでそれが何かわかるが、実際はそうはならない。

確かに、俺には自称神が、それが食べたり使えるものなのかくらいは聞けば教えてくれるかもしれないが、あまりそうやってなんでも知っているということになってしまえばいろいろとまずいのだ。

だって、俺の設定には記憶喪失というものがあるからだ。

それなのに、初めて行った場所のことをなんでも知っているなんてことになれば完全に設定無視になるからだ。

あとは、変なものを食べたくないということもある。

森なんかにあるもので、確かに美味しいものがあるかもしれない。

でもそれは、自分が許容できる見た目をしているのかわからないからだ。

いや…

本当に漫画なんかで、見た目がかなりグロテスクなものがうまいなどと言って食べている主人公なんかを見たときには普通に気持ち悪くなったものだからだ。

だから、料理は大事。

そして、料理を作るための食材も大事となるのだ。

そうとなれば、市場にということで、この町のことを一番知っているシバルに市場へと案内してもらったのだけれど、そこですぐにバーバルに出会う。


「奇遇ね」

「そ、そうっすね」


俺はそうとしか答えることができず、バーバルはこちらに向かって笑いかけてくる。

それに対して、不機嫌なのを隠さないのはアイラだ。

この間にも服の上から肌をつねられることが一度や二度ではなかった。

まあ、それくらいで落ち着いてくれるならと、俺も甘んじて受け入れたというのもあるが…

そんなことがありながらも、俺たちは食材を買って、次に野宿するために少しアイテムをと枕などを買ったりしたのだが、そこでも出会う。


「お店がこんなに被るなんて珍しいわね」

「っすね」

「つけてるんじゃなくて?」


イラっとしたのだろうアイラがそんなことをボソッと声にするが、バーバルには聞こえていなかったようで、ニコニコとした笑顔はやめない。

そこでは使うであろう、火を起こすもの…

驚いたことにライターみたいなものはしっかりあった。

といっても使い方はかなり違うが…

火というものは生活するにおいて、重要なものだ。

これが特に外で使えるということにはかなりのアドバンテージとなるだろう。

明かりがあれば、それだけで安心感もあるし、体を温めるということもできる。

あとは、温かいご飯を食べることができるということだ。

これが何よりも重要で、やはり温かいものが食べれるということは何をするにしても安心ができるということなのだから…

あとは、睡眠を少しでもよくするためにと、重要なものである快眠アイテムだ。

少しでも疲れをとるために一番必要なものがあるとするならば、それは寝るときにどれだけ疲れを残さないかというものが一番重要なことになるだろう。

美味しいご飯といい睡眠。

これが、俺たちが初めての野宿で、ある程度妥協せず取れればと思っていることだ。

ふう…

ここまで長々と現実逃避をしていたが、そろそろ現実に戻ろうと思う。

俺たちは現在検問を抜けて町を出ようとしていたのだけれど…

そこでまたもや出会ったのだ。


「本当にすごい偶然ね」


そんな声とともにいたのはバーバル。

検問はもうすぐ抜けるといったところなのだろう。

ちなみに、俺たちは顔パスのようなものだ。

あの出来事があったからといえば簡単だろう。

むしろ、かなり勢いよくお辞儀をされるものだから、焦ってしまうほどだ。

そんなことを思っていると、同じようにどうしていいかわからないのだろうシバルがこちらにやってきた。


「ただし、この状況どうするんだ?」

「いや、俺に聞くなよ」

「でもな。この状況になっている原因は少しは君にあるのだからな」

「そうなんだけどさ…俺もこんなことになるなんてことわからなかったしさ」

「そうだな。でも、なんだろうかいいことといえばいいのかもしれないな」


シバルはアイラのことを優しい表情で見ていた。

それに思わず聞く。


「どうしてだ?」

「なんだか、気を使っている感じがあんまりないって感じるからな」

「ふ…確かにボクもあんなに感情を出しているアイラ様は初めて見るな」

「だろう」


というのも、現在は二人が顔を見合わせている。

アイラは、先ほどのシバルが言った言葉からわかるように、ガンを飛ばしているような感じだ。

逆にバーバルは、しっかりとアイラの方を見ながらも楽しそうに笑っている。

俺たちは、この後どうなるのかと少し困惑しながらも見ているという状況だった。


「だから、どうしてあなたと一緒にここから行かないといけないのよ」

「それは、わたくしたちが出会ったのが運命だからです」

「そんな運命私は認めていませんから…」

「そんなことを言わないでください。わたくし、怖いです」

「あんたの方が怖いわ…」

「そんなことはありません。わたくしはただ、ここで会ったのも何かの縁ですし、行く道も途中までご一緒にと思っただけなのですが…」


そこでしくしくと泣くような仕草をする。


「そんな噓泣きなんて女の私には全く通じませんよ。とりあえず…なんで、行く先々で毎回出会うような胡散臭い相手と私たちが一緒に行かないといけないのかって、言ってるのよ」

「人が多い方が楽しいとは思いませんか?」

「思うわよ。でもあんたとは一緒に行きたくないけどね」


アイラはまさにガルガルと声が出ていそうな表情でバーバルを見ている。

それをバーバルは楽しそうに見えていた。

でもこんなときに疑問が一つあった。

あの自称神の声が聞こえてこないのだ。

こういう女性同士が争っているところを見るのは好きそうなのにだ。

と思っていたときだった。


【ごめーん、遅れた遅れた】

「(遅れたって、何をしてたんだよ)」

【うるさいわね。女性に遅れた理由を聞くとは何事よ】

「(なんだ?トイレでも行ってたのか?)」

【そういうことを聞かない!だからあんたは童貞なのよ】

「(そこに童貞は関係ないだろう)」

【とりあえず、神であるあたしもいつまでも暇じゃないってことよ】

「(そうかい…)」

【それで、この状況はどうするのよ】

「(俺が何かできると思うか?)」

【こういうときに当たって砕けなければ、あなたは成長しませんよ】

「(いや、砕けるなら行きたくないんだが…)」

【何を言っているのよ、こういうのは経験あるのみでしょ】

「(なんで、自分が損をするだけの経験をつまないといけないんだよ)」

【こういうときは、はい喜んで行きますでしょ】

「(いや、完全にそれじゃ俺が奴隷みたいだろうがよ)」

【ふふふ、神であるあたしの奴隷なのよ、忘れたの?】

「(違うから、手違いで召喚された人だろうが)」

【口だけは立派ね。でも、このままってことにはできないでしょ】

「(そうなんだけど、そうなんだけどさ)」


この今にも間に入れば、何か飛び火をしそうな感じがするのはどうすればいいのだろうか…

そんなことを思っていると、横で顔をたたく音がする。


「ただし、ボクは行くぞ」

「おい、シバル…それは自殺行為だぞ」

「ですが、ずっとこのままというわけには行けませんから…」

「だがな…」

「アイラ様の配下であるボクがそろそろ止めないと…」


ここで、配下ではないだろうといいたいが、そんなことを言えば、またややこしくなりそうなので、送り出すことにする。


「そ、それは頑張って!」

「おい、そこはボクを少しでも助けるとかあると思うんだけど」

「すまん。俺はあれをどうにかできる気がしないからな」

「ふ…でも、ボクも体質が体質だから、さすがにやばくなったら助けてくれよ」

「わ、わかった」

「それじゃ、ご褒美にあ…げふん。行ってくる」

「おう」


スキルドMがあるからだろう。

だから、ご褒美と口を滑らせたのだろうが…

シバルには頑張ってもらうしかない。


「あ、アイラ様。それにバーバル殿…」

「何?」

「何かしら?」

「そろそろ仲直りをされてはと…」

「そうよね。こんなところでいがみ合っていても意味ないわよ」

「いがみ合っているから、仲直り?私はそもそも仲良くなってはないんだけど」

「そんなことないわよね、騎士さん」

「はい。ここで時間を使うというのも、この後のことを考えると…」

「確かに、時間もだいぶ遅くなっているもんね。」

「はい」


そこでアイラも時間がそれなりに立っていることに気づいたのだろう。

俺の方を睨んでから、口を開く。


「でもね、さすがにただで一緒にというわけにはいかないわ、条件があるわ」

「ふふふ、わたくしができる範囲であれば、聞きましょう」

「だったらいいわ…」


そうして、俺たちは魔法使いで、普通は後衛を担当するであろうバーバルを先頭として戦闘を始めることを条件に一緒に行くことを了承したのだった。

理由はいけ好かないからと、魔法使いに後ろから撃たれたくないからということらしい。

そんな怒ってもおかしくもない内容のものをバーバルが引き受けるということで、一緒に冒険へと出発した。

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